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星の出ているうちに帰っておいで*統合*he said epi54

 カコと共に歩く。カコの小説の手助けができる喜び。俺は、印刷会社で営業部長を続ける傍ら、カコの小説を営業して回っていた。「ネットの普及で、若者も企業も経費削減で紙離れが加速している。受注体制だけでなく、自社から出版もしていきましょう!広告するためのネット媒体もセットで請け負える体制を構築していきませんか?」
と、経営方針を改革。そのプロジェクトマネージャーとしても奮闘している毎日だ。

元々本を読むことが好きだった俺は、ネットで新人発掘もしている。今や、カコの他に数名の著者とも契約して、まさにプロジェクトは大きな波にのり、会社の経営も持ち直してきた。

 少しずつ行動した先にある奇跡。
幾度となく、カコとの未来を諦めた。

当時は、カコから発せられる言葉は、俺を信頼していないと思い込んでいた。その言葉の数々に、カコは「自分だけ良ければいい」女だと、カコ自身をエグる言葉で黙らせていたように思う。

「お前は俺の子どもが大事じゃないのか?いつでも自分ファーストだよな。」
「俺が疲れた時でも、甘えられない。仕事と家族のことはやるけど、元気がないんだから、カコとデートなんてできないよ。」
「不倫なら、離婚を迫ってはいけないよ。こっちの都合に合わせるなんて当たり前だろ。」

1度目のサイレントも俺がカコを遠ざけたが、
2度目のサイレントの時でも、さらに別れた時のことに執拗に嫉妬して
「他の男とやるアバズレ」
なんて、酷い言葉も浴びせた。

「いずれは離婚するけど、早める気はない。今日離婚の意思を伝えなければ、何食わぬ顔で生活していて何が悪い?」
と…。自分が安定を手放す勇気がない弱いやつだってことを認められずに、カコにばかり責任をなすりつけていた。1度目のサイレントはうずくまっていたツケが2度目にこれでもかとテストされていた。

自分の力で、ひょいっと行動していくカコのようには俺にはできない。嫌な仕事も家族も手放せない。年齢も重なり腰が痛い疲れたと言う、俺のままを受け入れて欲しい。

男だから、もう歳だから、父親だから、夫だから。
という“だから”という制約の中で、カゴの中の鳥を愛でて欲しいと言っているようなもんだ。

今では、そんな俺を受け入れてくれなくて、本当によかったと思う。

最後は自分1人の力で。
自分の意思で行動できている、今の俺の方が好きだ。50歳を過ぎて、やっとわかった。

諦めなくて良かった。
というか、諦められないのがツインレイだと思う。試練は、成長のためのものであって、苦しめる為に課せられるものではない。

想像していた以上の幸せを噛み締めている毎日。
仕事で疲れて帰ってきた先には、カコの手料理。休みの日には、旅行や散歩。
以前よりもアクティブに動き回ってる割に、体もすこぶる調子がいい。

それが当たり前の日常になった今のためのプロセス。
そのための試練だった。

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