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星の出ているうちに帰っておいで*覚醒*he said epi50

 俺は、離婚と新しい仕事で目まぐるしい流れの渦の中に身を投じていた。自分の意思とは関係なく、環境の変化に引っ張られている感覚。

 これまで、何も動こうとしていなかった自分。損得感情ばかりで、
「今はこう動いた方が相手は喜ぶだろう」 
「ここはこうした方が利がありそうだ」
「こんな風に見られたくないから」
というような思考で動いてきた。

 それが当たり前だと思っていたし、誰だってそうだと信じて疑わなかった。夫婦は愛し合っていなくても家族は成立する。年相応に、家庭を持って子供がいれば、格好がつくじゃないか。とりあえず、外からみれば一般的な家族がある。

 自分の気持ちなんて無くたって、誰かに“普通”ってみられることが正しいと信じて疑わなかった俺。

 でも、カコに出会ってしまったら最後。それでは生きていけなくなった。

 これまでの生活・人間関係を手放して、俺は、離婚をして実家に帰ってきた。子供との連絡はいつでもとれている。頑なに裁判を拒んだ友莉子。多分、お金がかかるから…。そして、財産分与をしたくないからだろう。20年近く続いた夫婦関係は紙切れ一枚で一日で終わった。俺は、退職金と数カ月分の給与だけを持って家を出ることになった。

 あっけない。ゼロからのスタート…。すがすがしいもんだな。

50歳を超えて、仕事も人間関係も刷新され、新しいコミュニティーの中で自分の感覚を取り戻す。

 カコと再会してから、またサイレントになって1年が過ぎた。目まぐるしかった1年。これまでにない、変化の渦はやっと落ち着きを取り戻してきた。

 今思えば、会うたびにケンカばかり。でも、たいていは俺の未熟な子供の部分の甘えでカコを困らせて怒らせていたようにも思う。俺が最初にカコを遠ざけた。そして、カコは他の男と関係を持った。それが許せなくて、何度も何度もカコに詰め寄っていた。俺が手放したばっかりに!カコに辛い思いばかりさせた!でも許せない!一人ならまだしも…3人なんて!!なんて軽い女なんだ。どうせ、また他の男とやるんだろう!

 再サイレントになった時には、その怒りが渦巻いているだけだったが、今は不思議と全くその感情がない。

 不思議だな…。昔は、嫉妬こそが好きのバロメーターだと思って疑わなかった。俺はカコのことを好きじゃなくなったのかな…。でも、会いたい。カコの声を聞きたい。抱きしめたい。ずっと心にいる。忘れるなんて出来ない。

 “ツインレイ”という言葉を知って、ツインレイという関係が何なのか、ツインレイという存在がどういう影響を与え合っているのか、ある程度の知識は付いたと思う。これまでにない、恋愛相手とは違う女性。

 俺は、カコと再会した時に約束した。
「もう、離さないよ。絶対に…」
「ティファニーを持って、迎えにいくよ」と…。

多分というか、絶対的にカコは俺を待っている。今度は、さ迷ってなんていないよ。信じるというより心で当たり前に感じていた。

 俺は、指輪を買って(実は、再会した時にティファニーの指輪を試着させてもらっていたからサイズは頭に入っていた)カコに会いに行くことを決めた。(太ってたら、はまらないかもな笑 ま、大丈夫だと信じよう笑)

 急に行ったらビックリするかな。やっぱり連絡してからの方がいいかな。ドキドキが止まらない。一気に体も心もボルテージが上がっているのを感じていた。

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