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「読書酒紀」 7回目 放送後記

※番組が終わるたびに、パーソナリティが番組の感想を語り、番組中に取り上げた本のリンクと紹介をしていきます。

回目リンク

読書酒紀第7回、初めて先行を担当したパーソナリティの野中です。
収録がだいぶ前だったのですが、改めて聞き直して、今回自分の語りが、本に依存してしまっているなと反省しました。
ショーペンハウエルは『読書について』のなかで、本を読むことによって思考が「他人の思考の運動場」にされてしまうという弊害を論じていましたが、今回の自分の語りはこの状態になっていたように思えます。本に自分の意見を仮託してしまっていたわけです。
本を読むことに目的を持つこと、役に立つ本を読むこと。人生にはこうした目的的な読書も必要ですが、役に立たない本を読み、本に書いてあることに思考を左右されない、「考える土壌」みたいなものを耕すための漠然とした読書も重要なのではないかと思うのです。
本に書かれていることを、ただ発表するだけでは、そこにゆとりも思考の発展も生まれない。今回の自分の語りのなかでの最大の反省点でした。
この番組を通して、パーソナリティ二人で、思考を耕すような読書のありようを、リスナーのみなさんと考えていけたらなと思いました。

今回紹介した3冊の本

①『方法序説』デカルト 著 谷川 多佳子
この本は書かれていることというよりも、この本を書いたデカルトという人間の歴史的意義と、彼の文章の巧みさを味わうという動機で触れると良い本だと思います。近代思考的土台はこの人から始まっています。彼は「ただ一人闇のなかを歩むようにゆっくりと行こう」と語っていましたが、近代という闇のなかを、現代人である私たちもさ迷っているわけで…彼の思考から私たちが学べるものはたくさんあると思います。

②『カイエ I』ポール・ヴァレリー 著 佐藤正彰 訳
ヴァレリーは、近代批評家の小林秀雄が好きだった作家です。この本がどのような本かを一言で要約することはできません。あえて言うなら、人間が一人の思考の中で考えつく限りの、人生に関わる様々な出来事や観念は、みんなこの本に書いてある、そういうように理解すると良い本だと思います。手元に置いておいて、時折ペラペラ見るのがおすすめの読み方です。

『自分ひとりの部屋』ヴァージニア・ウルフ 著 片山 亜紀 訳
今議論として混迷を極めているジェンダーの世界ですが、この本から始めてみるのは存外良いような気がします。ジェンダーという感傷的になりやすい問題について、ウルフらしいフラットな視点と語り口で書かれているので、落ち着いて読み進めることができます。そして、自分一人の部屋を持つということの歴史的意味についても踏み込んで語られているので、1LDK化が進んでいる現代社会で、改めて読み返すと部屋選びの参考になるかもしれないですね。

『読書酒紀』番組URL
https://open.spotify.com/show/36X5GlyHQcAavgvrcUvIf2

お便りフォーム(いただいたお便りは必ず番組で紹介します)
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSf5FXfc1gEew5YN27tg3rdPEa-AZgViEM0khg_QiHzSCQukVw/viewform


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