KITAJIMA REN

趣味で小説やエッセイを書いてます。 小説はFacebookで書いてましたが、こちらに移…

KITAJIMA REN

趣味で小説やエッセイを書いてます。 小説はFacebookで書いてましたが、こちらに移行することにしました。 kindleで2冊出版しました。

最近の記事

【ノキさんと俺】8

アドレス帳をペラペラとめくりながら人差し指が止まった。 「知り合いのコウジに頼めばなんとかなるだろ」 「コウジって誰?」 「アイツはなあー」 アドレス帳を開いたままノキさんは俺に向かって話し始めた。 「コウジってのは、まあわしの弟子みたいなもんよ。ガキの頃から面倒みているんだ。若いころはそりゃまあ手がつけられないやんちゃ野郎だったけど、今じゃ立派な車屋のオーナーよ。おもに外国の高級車を取り扱っているんだ。お客さんの要望に合わせてカスタマイズするのが得意なんだ。あそ

    • 小説【ノキさんと俺】7

      施設の横に簡易修理テントを建てたノキさんは徹底的に俺のマシンを図り始めた。 一つ一つのパーツを図面に描きそれに寸法を付け足して行く。 俺はそんな事して何の役に立つのか半信半疑で見ていた。 ノキさんはフリーハンドで図面を描くんだけどこれが恐ろしく上手い。 定規で線を描いたとしか思えないくらい真っ直ぐなんだ。それから線の太さも変わらない。 よーく見るとシャーペンを指先で回しながら描いている。だから線の太さが一定なんだ。 それからマシンの細かいとこまでちゃぁんと描いてある。そ

      • 小説【ノキさんと俺】6

        【ノキさんと俺】6 次の日からノキさんは俺の事は無視して変な行動に出た。 施設の悪い所を直し始めたんだ。 切れかかった電球を替えたり、網戸を張り替えたり、すり減った椅子の脚を直したりとあんまり施設の人が得意じゃなくてほっぽらかしてあるモノを見つけては直していった。 俺は半分腹がたってきた。 てっきり俺のマシンを直してくれるのかと期待していたのに。 まあ、俺は人に裏切られる事はもう慣れっこだけど。今回は少なからずショックだった。 そんな日が一週間続いたある朝、ノキ

        • 小説【ノキさんと俺】5

          【ノキさんと俺】5 俺のマシンはもう12年選手だ。 俺が二十歳の時にやってきたんだ。 俺達の施設では成人するとそのお祝いに電動車椅子をプレゼントしてくれる。 小児麻痺にとって二十歳を迎えることはとってもスペシャルな事なんだ。早く旅立つ者が多いもんな。 そんな訳でなんだかんだコイツと暮して12年経つ。 そりゃ~12年にもなりゃあちこちにガタがきちまう。 まっ、俺もだいぶガタがきてるけどよ。 ノキさんは、そんな俺のマシンを見てこう言ったんだ。 「ベアリングが摩耗して

        【ノキさんと俺】8

          小説【ノキさんと俺】4

          【ノキさんと俺】4 ともかくノキさんってのはすげえ。俺はリスペクトしている。 歳は俺の親父くらいかも。『俺たち団塊の世代がどうのこうの』って言ってたから。 でも歳なんざぁ関係ねぇ。 あの人がドライバーを持つと手に吸い付いてんじゃないかってくらい一心同体になってる。俺はノキさんがドライバーやペンチやニッパー何かの工具やネジを落っことすのを見たことがねぇ。 それから握力が半端なく強い。つまむ力も凄いんだ。親指と人差し指で十円玉を折れ曲げちまうし、電動車椅子だってひょひょ

          小説【ノキさんと俺】4

          小説【ノキさんと俺】3

          【ノキさんと俺】3 俺は小児麻痺のくせに耳もちぃとばかし悪い。だからたまに何を言ってるのかわからないんだ。 でもノキさんは、そんなこたぁお構いなしにぶぁ~とデカイ声で捲し立てる。まるでF1マシンが奏でるエグゾーストノイズのようにだ。 このノイズがまた俺にとっちゃ子守唄みたいに心地良いんだ。 いい歳こいて子守唄っていうのもなんだけど、本当にそうなんだ。 ノキさんは、本当は猪木って名前だってわかったのはだいぶたってからだ。俺はイ行が聞き取りにくいんだ。ずっと気が付かずノ

          小説【ノキさんと俺】3

          小説【ノキさんと俺】2

          【ノキさんと俺】2 そりゃあ俺だって公道を6キロ以上で飛ばしちゃいけねえ事くらいわかっちゃいるさ。 子供の時から施設の先生に耳にタコが出来るくらい、いやタコどころの騒ぎじゃねえ耳の中にラジカセが埋め込まれたみたいに年がら年中聞いて育ってきたからさ。 だから俺はそのいいつけをちゃんと守っていたんだ。こう見えても模範生だったんだ。 俺達は移動するときゃ細心の注意を払って世間の皆様方にご迷惑がかからねえようにひっそりとまるでアリの行進のように一列になって田舎道をえっこらおっ

          小説【ノキさんと俺】2

          小説【ノキさんと俺】1

          【ノキさんと俺】1 俺は飛ばし屋だ。何時だって周りを蹴散らしぶっ飛ばして行く。 俺のマシンはそんじょそこらの奴等とは全然違う。 俺のマシンはかなりのチューンナップがやってある。 そのチューンナップはノキさんがやってくれたものだ。 俺の名はアキラ。もう32歳になっちまった。 ノキさんは俺のパートナーと呼んでも語弊がないだろう。 ダチ。そう俺のダチだ。そして最高のメカニシャンだ。 俺は生まれてこのかた俺の二本足で立ったことがない。立ち上がれないのだ。 そう俺は生

          小説【ノキさんと俺】1

          【カップ焼きそばに向かって撃て】

          【カップ焼きそばに向かって撃て】 誰もが一度は食べた事があるカップ焼きそば。 私はカップ焼きそばに対してマンネリ気味である。 それは何故かって? それはですね。 新商品が少ないからです。 私がつっかけ履いて出掛けるドラッグストアに置いてあるカップ焼きそばに関してはこの五年程代わりばえのない商品が陳列してある。 実に陳腐だ。 陳腐極まりないのだ。 果たしてこれで良いのか。 カップ焼きそば業界は努力を怠ってやしないのか。 もう新商品の開発を諦めてしまったのか。 カ

          【カップ焼きそばに向かって撃て】

          エッセイ【祈る人】

          【祈る人】 入学、進学、就職シーズンも無事に過ぎようとしている。 そこにたどり着くまで本人のみならず、親御さんもさぞかし苦労苦難の連続だったことだろう。 年末年始にかけて各地の神社でそういうやんごとなき事情を抱えた心配者ならぬ参拝者が引きも切らず押し掛けた。 とにもかくにも神社で必死な形相で願掛けをする親子が普段は100円しかしないお賽銭を奮発して1000円も入れたことだろう。 1000円も出したから神様ソコんとこ一つ宜しくと呟いただろう。 普段私は神社で参拝する時に

          エッセイ【祈る人】

          【やきとりのこ】

          【やきとりのこ】 (皮かモモかはどっちだっていい) やきとりにおける頂上決戦とも言うべき対決にいよいよ判定を下せねばならない時が刻一刻と迫っている。 頂上決戦とは何か。 それは皮かモモかどちらが人気なのか対決である。 どちらも人気なのは周知の事実だ。 皮はやきとりのオープニングに相応しいメニューだ。 やきとりは皮抜きに語れない。 やきとりの基本なのだ。 相撲で言えば四股を踏むような立ち位置だ。 何事も基本をおろそかにしてはいけない。基本がちゃんと出来てこその応用なのであ

          【やきとりのこ】

          エッセイ【ありがとう僕の真っ赤なフライパン】

          【ありがとう僕の真っ赤なフライパン】 いつ購入したのか忘れたけどもう20年くらい使っているフライパン。 直径は22cmほどと少し小さめ。 毎朝、お弁当用の玉子焼きに使っている。 テフロン加工も剥がれ落ちて油断すると焦げてしまうが、熟練の腕でちゃんとした料理を作る事が出来る。 実はニトリで購入した新しいフライパンも有るには有るが温まるまで時間がかかりどうしても二の足を踏む。 赤いフライパンはあっという間に温まる。 専門用語で言うと熱伝導率が高い。 この熱伝導率の高さが料理の

          エッセイ【ありがとう僕の真っ赤なフライパン】

          エッセイ【渋い男のホットケーキ】

          【渋い男のホットケーキ】 男にも時には休息が必要だ。 その日男は甘いものを欲していた。 SNSのやり過ぎで疲労困憊していた。 激しいコメントの応酬で気分が萎えていた。もうこれ以上の返答は無理だった。 パソコンから離れ向かった先はキッチンだった。 冷蔵庫から玉子を取り出す。 無意識に殻を割る。 割ったは良いがその後の事を考えている訳では無い。 ただ玉子を割らずにはおられなかった。 誰が男を責める事が出来ようか。 彼にはプロセス無視の行動が必要だったのだ。生粋の京都人の男は

          エッセイ【渋い男のホットケーキ】

          【X世代のカツ丼】東海林さだお風エッセイ

          【X世代のカツ丼】 大手チェーン店の「かつや」が我が町に出来て久しい。 私も何度か食べに行った事がある。 食べる度に「何か違うんだよな」と思う。 決して不味い訳ではない。そもそもそんな不味かったらチェーン店として生き残れない。 味としては及第点と言わざるを得ない。 でも、何か物足らないのである。 何が物足らないと問われてもこれですと明確に返答出来ないもどかしさがある。 蓋を開けた時には誰が見ても紛れも無くカツ丼なのだが、一口食べると「ふ〜んそうなのね」となのね感が否

          【X世代のカツ丼】東海林さだお風エッセイ

          エッセイ【旅するインコ】

          【旅するインコ】 道の駅は楽しい。 私の夢は日本全国の道の駅を制覇することだ。 コロナが収束した昨今、道の駅も賑わいを取り戻しつつある。 先日立ち寄った道の駅は往時の雰囲気を醸していた。 屋台が数店舗出店していた。 焼きそば屋にハンバーグ屋にクレープ屋に唐揚げ屋にジュース屋にパン屋にけんちん汁屋におでん屋。 それらが道の駅の入口付近に多くあり威勢の良い掛け声で 「へい!いらっしゃい」 「美味いっすよ」 「ぜひ試食してって下さい」 と客を誘導する。 その掛け声につられて

          エッセイ【旅するインコ】

          【ラーメンの自動販売機】東海林さだお風エッセイ

          【ラーメンの自動販売機】の巻 知らない人は知らないが知っている人は知っているラーメンの自動販売機。 そんな自動販売機が本当にあるのかと疑う人もいるだろが、実際に今でも立派に稼働している。 製造から既に40年以上経っていると思われる自動販売機のおじいさん的存在だ。 本来なら定年退職して余生を送る筈だったラーメンの自動販売機。 オーナーからお客さんが楽しみにしてるから働けるだけ頑張って働いてくれと懇願され、あちこち故障し錆び付いた老体に鞭打って頑張る姿は感動を覚える。

          【ラーメンの自動販売機】東海林さだお風エッセイ