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エッセイ【祈る人】

【祈る人】

入学、進学、就職シーズンも無事に過ぎようとしている。
そこにたどり着くまで本人のみならず、親御さんもさぞかし苦労苦難の連続だったことだろう。

年末年始にかけて各地の神社でそういうやんごとなき事情を抱えた心配者ならぬ参拝者が引きも切らず押し掛けた。

とにもかくにも神社で必死な形相で願掛けをする親子が普段は100円しかしないお賽銭を奮発して1000円も入れたことだろう。
1000円も出したから神様ソコんとこ一つ宜しくと呟いただろう。

普段私は神社で参拝する時にお願いするのはせいぜい、家内安全、商売繁盛くらいだ。
なので礼をしてパンパンと柏手を打ってお祈りし又礼をするまでものの数秒で事足りる。

私に限らず男性は短い。
神前で3分もずっとお祈りしているおじさんを見ることはまずない。
(ここら辺の観察しっかりしているな)

だが、それに反比例して女性はやたら長い。

夫婦で同時に参拝した場合、旦那は奥さんが祈る終わるまで手持ちぶさたで上を見上げている。

うら若き女性が一人で参拝しようものなら、あんた寝ているのか?
というくらいじっと固まり手を合わせている。

一体、何をそんなにお願いしているのだろうか。
一度インタビューしてみたい衝動にかられる。

「えっと、今夜の晩ごはんの献立を考えてました」
何て人はまかり間違ってもいないと断言出来るが、せいぜい恋愛くらいしか思い当たらない。

恋愛で大いに悩むのはそれはそれで素敵だと思うがそんなに何分もお願いされても神様だって困ると思う。

神様からすればまずお願いする前に、お姉さんもう少しお洒落に気を使いなさいと言いたいかも知れない。
髪の毛だってもう少し櫛でとかしなさいと思うかも知れないし、化粧もきちんとしなさいと思うかも知れないし、そんなに太ってちゃ無理だろと思うかも知れない。

すべき努力をきちんとやってからお祈りしなさいと言いたいに違いない。

昔の人はこれを
「人事を尽くして天命を待つ」
と言った。
人事も尽くさず何とかして下さいと言われても神様だって困ると思う。

その後引いたおみくじの結果ケチをつけられてら神様は益々困るに違いない。
「え〜小吉なの〜!あんなに一生懸命お祈りしたのにここの神社ダメだわ違うところ行こう」
という女性に対して、
「そういう態度取るんならワシャもう面倒みきれん」
とあきれ果てるだろう。

おしまい

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