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小説【ノキさんと俺】2

【ノキさんと俺】2

そりゃあ俺だって公道を6キロ以上で飛ばしちゃいけねえ事くらいわかっちゃいるさ。

子供の時から施設の先生に耳にタコが出来るくらい、いやタコどころの騒ぎじゃねえ耳の中にラジカセが埋め込まれたみたいに年がら年中聞いて育ってきたからさ。

だから俺はそのいいつけをちゃんと守っていたんだ。こう見えても模範生だったんだ。

俺達は移動するときゃ細心の注意を払って世間の皆様方にご迷惑がかからねえようにひっそりとまるでアリの行進のように一列になって田舎道をえっこらおっこら用水路に落っこちねえように買い物カゴくくり付けて行くのさ。

買い物が一番の楽しみなんだ。

二キロばかり離れた小さなスーパーが俺達の縄張り。

お店の人とも仲良しだ。そうしなけりゃ俺達は生きていく楽しみが半減しちゃう。施設の先生はそこらへんのこともちゃぁんと教えてくれた。

ノキさんは施設の人じゃねえ。ボランティアともちょっとばかし違う特別な存在。ボクシングに例えるとセコンド。野球に例えるとスコアラーかな。あんまいい例えじゃねえか。

ノキさんのことは本当はあんまりよく知らねえ。

何時の間にかふらっと施設にやって来てた。

ノキさんも自分の事をベラベラ喋るタイプじゃねえし、俺だって自分の事はあんまり話したくねえ。だからかしんねえけど俺達は凄く馬が合う。

つづく

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