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ベラ・マッキーさんから力をもらい、精神疾患と共に走る その①

”Jog On: How Running Saved My Life”(Bella Mackie著, William Collins社、2018年)

この本は、私の人生を支えてくれる愛読書のうちの1冊である。
以下、内容をまとめてみた。思い入れのある本なのでちょっと長いけど、よろしければぜひおつき合いくださいませ。

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作品概要

メンタルヘルスの問題を抱える女性が走ることで心身の調子を整え、前向きに生きていく過程を綴ったランニングメモワール。

幼少期からさまざまな精神疾患に苦しんできた著者は29歳で離婚し、人生のどん底まで落ちた時、不意に走ることを思い立つ。最初は近所の路地を3分間走るのがやっとだったが、徐々に走れる距離が伸び、長年怖れていたロンドンの雑踏を駆け抜けることができるようになり、自分自身を受け入れ、症状をコントロールできるようになっていく。

ランニングは心身の健康を高める最良の方法の1つであること、困難な状況にあっても焦らず一歩一歩進んでいけば希望の光が見えてくることを、医学的知見も交えて、冷静かつ温かく描く。
                         

まとめ by エリンギ

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著者について

ベラ・マッキー。英国人の女性文筆家。
複数の雑誌媒体で編集者として働いた後、ライターとして記事を執筆しながら、これまでに3冊の本を出している。この”Jog On”がデビュー作。
3作目の小説  ”How to Kill Your Family” (The Borough Press, 2021年)は、現時点(2024年1月28日)で英国のAmazonで26,681個の星評価がつくほどの人気作である。

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あらすじ

メンタル疾患と共に生きてきた著者の半生

現在アラフォーの著者は、幼少期から不安と恐怖心が強く、あらゆる精神疾患の症状を抱えて生きてきた。
うつ病、不安障害、パニック障害、強迫性障害、広場恐怖症、ヒステリー、希死念慮に苦しみ、飛行機や地下鉄には乗れず、人混みが怖く、1人ではスーパーマーケットに行けなかった。

10代の頃は症状のせいで友人との遊びの約束をキャンセルすることが増え、その理由をうまく説明できずに気まずくなり、友人が減った。
高校卒業後、地元の大学に進んだが半年で中退。親元を離れて大学生活を送る友人たちが世界を広げていくのを見て、劣等感と苛立ちを感じた。

その後、美術学校に入学して2年目のある日、キャンパスで人生最悪のパニックを起こした。以来、常に「〇〇したらどうしよう」というさまざまな不安に襲われ、食欲もなく、何をする気力もなかった。人と会わなくなり、家の中を泣きながら徘徊していた。

20代は雑誌編集者として働いたが、自分は無能だと思い、仕事に自信が持てず、実家を出て自活することもできなかった。恋愛もうまくいかず、休日は家にひきこもる日々。
29歳で結婚するが、不安症状が和らぐことはなく、新婚生活はほころび始める。
結婚8か月で離婚。

ランニング開始

離婚の打撃にうちひしがれながらも、次第に「もう失うものはない。何かしなければ」という気持ちが芽生えて、走り始める。
他者の目が怖く、最初は近所の路地を一往復するだけで精一杯。四苦八苦の日々が続く。
 
ある日、いつもの路地を3分走った後、思いきって大通りに出てさらに5分走り、達成感を感じた。その日を境に心に希望の光が差してきた。
不安や強迫観念にとりつかれたら、5分でも走るようにし、こつこつ続けたところ、徐々に走れる距離が伸び、よく眠れるように。
自分は何もかも失ったわけではないという安心感が生じてきた。
16年間乗れなかった地下鉄にも乗れるようになり、車内で感動に包まれる。
 
新しいランニングシューズやレギンスを買ってモチベーションが上がり、毎回走るのが楽しみになり、あと1分長く走ろうとか、帰ったら美味しいワインやコーヒー、アイスクリームを味わおうなどと、小さな挑戦やご褒美を設けることにした。
それによってパニック症状が減り、ランニングが習慣として確立された。
 
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次の記事へ続く。

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