ベラ・マッキーさんから力をもらい、精神疾患と共に走る その②
私の人生を支えてくれる本 ”Jog On: How Running Saved My Life”(Bella Mackie著, William Collins社、2018年)について書いた前回の記事の続きです。
著者のランニングへのスタンス
・とにかくゆっくり走る。決して無理はしない。1回1分でもOK。これまでに走った最長距離は15km。自己ベストタイムを計ったこともない。
ハーフマラソンにも出たことはなく、フルを走るなんて考えるだけでぞっとする。長距離レースへの憧れはあるが、マイペースの取り組み方で満足している。
・ランニング至上主義者ではない。メンタル疾患で苦しんでいる人に、むやみやたらと走ることを勧めたくはない。本当に辛い時はベッドから起き上がるのも困難であることを、痛いほど知っているから。ランニング以外で自分に合いそうな回復方法があれば、ぜひそちらを試してほしいと読者に呼びかけている。
・ランニングによって著者のメンタル疾患が治ったわけではない。あくまでも調子を整え、今後の人生を通して諸症状とうまくつき合っていけるようになるための1つの手段と考えている。
◆◆◆
困難を抱えるランナーたちの紹介
本書執筆にあたり、著者は多くの人に話を聞き、走る理由を尋ねた。健康維持のみならず、離婚、失恋、失業、精神疾患、子供の誕生、大切な人を亡くした悲しみに向き合うためなど十人十色。
失恋して半年間実家にひきこもった男性は、毎日ほとんど何もできなかったが、約8kmのランニングだけは続けたところ、心身がすっきりして自信が芽生えた。
20代で両親を飛行機事故で亡くした女性は、走ることで喪失の痛みとなんとかつき合えるようになった。
両親のダブル介護で強いストレスを抱えていた男性は、走る時間を確保することで物事に優先順位をつけ、思考をオーガナイズできるようになった。
ある男性は、ホームレスの若者のために「ランニング・チャリティー」という活動を立ち上げた。ドラッグに溺れることが多い彼らのメンタルを良好に保ち、人生は自分でコントロールできるという自信を養うために、週3日、一緒にランニングやエクササイズに取り組んでいる。
◆◆◆
メンタルヘルスの問題を抱えて、これからランニングを始める人への著者のアドバイス
・ゆっくり走ろう。著者は1キロ7分30秒ぐらいのペースからスタートした。慣れてきたら徐々にスピードアップすればいい。
・気が進まなくてもひとまず外に出てみよう。ちょっと歩いたり走ったりするだけでも、心と体がぐっと楽になる。
・こまめに水分補給を。パニックになったら水分を摂ると落ち着く。
・走りながら不安に襲われたら、音楽を聴いて気持ちを集中させよう。
・友人と走ったり、ランニングクラブに入るのも良い。不安症状を抱えていることを正直に話してみよう。ランナーたちは優しい。きっと理解してくれる。
・周囲の景色に目を向けよう。旅先でも走ってみよう。街のリズムを感じるために、ランニングは最高の方法だ。
・まずは3か月続けよう。ポジティブな変化が定着するにはそれなりに時間がかかる。
・ランニング記録をつけよう。走る前に食べたり飲んだりしたものも記録しておくと、不安とストレスを和らげるためのルーティンを作りやすい。
◆◆◆
以上、愛読書の紹介でした。
英語の本なので、読解力不足で意味をつかめない文章もちょくちょくあったが、我が人生における切実なテーマなので、頑張って3回読んでみた。
私自身はうつ病、吃音、過去の自分への後悔や罪悪感、将来への不安などを抱えながら、なんとか生き続けていけるようにと、ランニングで心身を整える日々を送っている。
そして他のランナーたちを目にすると、「この人は人生においてどんな事情を抱え、いかなる理由で走っているのだろう」と想像することがある。
もう生きていけないと思うほどの激烈な体験をしながら、今、黙々と走り続けている人もいることだろう。
◆◆◆
精神疾患をはじめ、この世のあらゆる苦しみを抱えながら、それでも走って生きている人が世界中にたくさんいる。
ベラ・マッキーさんの「無理せず、ゆっくりいきましょう」という励ましに支えられて、今日も私はよたよたと走る。
この本に出会えたことに心から感謝である。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?