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2023年5月の記事一覧

『死が三人を分つまで』 ケイティ・クティエレス 著

『死が三人を分つまで』 ケイティ・クティエレス 著

重婚をしていて事件の原因をつくったとされるローレを売れない犯罪実話ライターのキャシーが取材する。
ローレは当時のことを語りながらもキャシーに個人的な質問をすることでキャシーは影響を受けていく。

ローレの言っていることのどこまでが真実か?
それとも、関係者が少しずつ勘違いをしているのか?
『ミステリと言う勿れ』で「真実は人の数だけある」って言ってたっけ。

そして、お互いがお互いに影響し合い思いも

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『嘘つきジェンガ』 辻村 深月

『嘘つきジェンガ』 辻村 深月

と長くなったが、3つの物語で語られる詐欺のお話となっている。

「ロマンス詐欺」
純粋がゆえに葛藤し、悩む。こうゆうのってあるな〜と思った。
先輩の頼みでシブシブやらされたり。断ったらどうなるか分からない恐怖。良心的にやりたくないこととの板挟み。

「五年目の受験詐欺」

誰にも相談できないがゆえに悩む。もっと話ができていたら。
もっと冷静になれていたら。と後から後悔する。
高校生になる息子との掴

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『対岸の彼女』 角田 光代 著

『対岸の彼女』 角田 光代 著

本の紹介文にある内容を上記に書いたが、内容は違うように感じた。
対人関係の小説だと思う。

周りに合わせて生きずらさを感じながら大人になった小夜子と、学生時代に秘密を持つ陽気な女社長の過去。

新しいコミニティーに入って模索しながら人との距離感をうまく掴めなかったり、自分の立ち位置を探したりする。
特に、学生時代は感じていた不安感みたいなものが描かれている。

完璧を求められ応えようとする主婦。

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『光のとこにいてね』 一穂 ミチ 著

『光のとこにいてね』 一穂 ミチ 著

出会うはずのない育ちの全然違う2人の少女が出会う。
自分とは全く違う相手に興味を惹かれる。

親の都合ですぐに会えなくなるが、それでも相手に与える影響があった。

この小説を読んでいると優しい気持ちになる。
自分に良い影響を与えてくれた人を思い出して感謝した。
同時にイヤだった思い出も思い出して意外と消化できている自分に気付いた。

自分も誰かに良い影響を与えているだろうか?とも考えた。
けど、影

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『プレイバック』 レイモンド・チャンドラー 著

『プレイバック』 レイモンド・チャンドラー 著

駅に現れる女性の後を尾けるように依頼され遠目から観察する。
彼女の身なりから振る舞い見るだけで分かる特徴や雰囲気を読み取りながら尾行を続ける。

しかし、謎も多い。彼女が何者なのか?なぜ尾行するのか?何も知らされないまま任務に着かされる。

彼女の正体が分かった時、読んできた思い違いをしていたことに気付かされる。

フィリップ・マーロウシリーズを読んできて思うことは、マーロウというキャラクターの魅

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『リトル・シスター』 レイモンド・チャンドラー 著

『リトル・シスター』 レイモンド・チャンドラー 著

警官「彼女に名前はあるのか?」
マーロウ「今はまだない」
このやりとりは決して生まれたての女の子の名前を聞いているわけじゃない。
毎度のことながら本当にやりとりが楽しいシリーズ。
フィリップ・マーロウシリーズ5作目。

訳者あとがきで村上春樹さんが語っているが、レイモンド・チャンドラーは自分では気に入っていなかったと言っている。

しかし、村上春樹さんは登場人物のオーファメイを読むためだけでも読む

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『水底の女』 レイモンド・チャンドラー 著

『水底の女』 レイモンド・チャンドラー 著

前作の「高い窓」では正直がっかりしていたが、この「水底の女」はいつものフィリップ・マーロウが帰ってくる。

もちろん、マーロウだけじゃなく情景の描写もトークのやり取りもレイモンド・チャンドラー全開で本当に面白い。
これこれー!!と思いながら読んだ。

タフで憎まれ口のマーロウがギリギリのやりとりで喧嘩になるのかならないのかヒリヒリする。

田舎の保安官補パットンは年をとっておりマーロウのことを「お

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『高い窓』レイモンド・チャンドラー 著

『高い窓』レイモンド・チャンドラー 著

今回は紹介するか正直悩みました。
と言うのは今回の「高い窓」は正直好きではないからです。

マーロウのトークはイマイチというか、警察官の方が仮説を披露し、マーロウは黙って聞く。
言い返すこともなく、ただ黙っている。
タフではないセリフが多い。そんなふうに感じたからです。

もちろん、レイモンド・チャンドラーは素晴らしい小説家なので、僕には分からない技術や試みがあったんだと思いますが、僕の好みではな

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『さよなら、愛しい人』 レイモンド・チャンドラー 著

『さよなら、愛しい人』 レイモンド・チャンドラー 著

やはり、人物描写の表現が面白い。いや、人物に限らず情景描写も会話の展開も面白い。おそらく、ずっと読んでいられる。

人を探す大男マロイとの出会いから物語は始まるが、それは一旦警察に任せる。

それとは関係なくマーロウに探偵としての仕事の依頼がくる。
しかし、その仕事でヘマをし窮地に立たされる。

どうして起きたのか? どうしたらいいのか?
この「さよなら、愛しい人」では多くの小説家が分かりやすく引

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『宝島』 真藤 順丈 著

『宝島』 真藤 順丈 著

戦後すぐの沖縄の話。
米軍基地からの窃盗行為をしていた人たちがいた。
そんな人たちは「戦果アギヤー」と呼ばれていた。
「戦果を挙げる者」という意味で彼らは誇りを持っていた。

そんな戦果アギヤーの中でもカリスマリーダーだったオンちゃんが軍事基地「キャンプ・カデナ」に忍び込んだ夜、突如として行方不明になる。

序盤はこの行方不明になる「キャンプ・カデナ」の潜入シーンで始まる。
オンちゃんはこの事件の

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『川のほとりに立つ者は』 寺地 はるな 著

『川のほとりに立つ者は』 寺地 はるな 著

これほど優しく丁寧にバイアスを描いた物語は初めて読んだ。
読後、自分も押し付けではない優しい人間になりたいと思わせてくれる。

人はどれだけ、ちゃんと人を見ているのか?
バランスの悪い字を見て丁寧に書いてないと思い込んだり。
何度言っても言うことを聞かない人を出来ない人と思い込んだり。
話を聞いてくれない人を聞く気がないんだと思い込んだり。
一面だけを見たり思い込んだりして、その人の本質を知った気

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『キュレーターの殺人』 M・W・クレイヴン 著

『キュレーターの殺人』 M・W・クレイヴン 著

今回も最悪のシーンから始まる。
これがおそらく著者M・W・クレイヴンのスタイルなのかもしれないが何度やられても、やっぱりどう繋がっていくのか気になって先を読んでしまう。

犯人の謎の行動。
生前に指を切り死後にも指を切ることで、そこで殺人があったことをはっきりさせてくる犯人。

次々分かってくる被害者の身元だが、共通点は分からない。

思ったよりすぐに捕まる犯人コーエンだが様子がおかしい。
共犯の

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『ブラックサマーの殺人』 M・W・クレイヴン 著

『ブラックサマーの殺人』 M・W・クレイヴン 著

死んでいくシーンから始まる。誰なのかは分からない。
そして、次のシーンで刑事ポーは逮捕されているシーンに移る。
のっけから、どうなんのこれ?って感じから始まる。

エリザベス・キートンは死んだと思われていた被害者。
彼女が六年監禁されていたと現れる。
エリザベスを殺したとされ逮捕されていたジャレッド・キートンは無実だったことになる。

ジャレッドを逮捕したのは刑事ポー。
世間からバッシングの嵐にあ

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『ストーンサークルの殺人』 M・W・クレイヴン 著

『ストーンサークルの殺人』 M・W・クレイヴン 著

ワシントン・ポー シリーズの第1作目となる「ストーンサークルの殺人」そして英国推理作家協会賞最優秀長編ゴールドダガー受賞作。

序盤の被害者には共通点は見つからないし、接点も見つからない。
そして、犯人が刻んだ「ワシントン・ポー 5」の名前の意味も不明。
5という数字から5人目の標的という見方もあるがポーには何の覚えもない。

直感と正義感で突っ走り、独断で動くポー刑事と、冗談の通じないが最高の

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