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2023年3月の記事一覧

『春にして君を離れ』 アガサ・クリスティー 著

『春にして君を離れ』 アガサ・クリスティー 著

アガサ・クリスティーといえばミステリーだが、この小説はミステリーではない。旅の途中、何もない田舎で足止めをくらい、何もないがゆえに自分自身と向き合うハメになる。自分のしてきたことを振り返ることで、自分自身に気付いていく。

自分のことしか考えず、自分が1番正しいと信じ、他人を認めない主人公ジョンの物語。

この本を読んでいて感じるのは自分自身はどうなのか?と考えさせられること。自分にジョンと同じ部

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『汝、星のごとく』 凪良 ゆう 著

『汝、星のごとく』 凪良 ゆう 著

自由とは何か、偏見を持たないとはどうゆうことか。
それに対して周りの人がどう見てくるのか。

多様性と言われながらそうでない現実。
人の内情も知らないのに一端をみて全てを知っているように人を罵倒する。

自分たちが多数派なら強くなり、正解は多数派で少数派は間違えていると非難したり、説教したりする。
地動説のように少数派が正解のときだってあるのに。
それに、正解がどちらかってこともない。
今日も人を

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『シャイロックの子供たち』 池井戸 潤 著

『シャイロックの子供たち』 池井戸 潤 著

池井戸 潤はまだたくさんは読んでいないが、どれを読んでも面白い。
人の卑怯さ、弱さ、甘さが見事なまでにリアル。

正当に戦う人は蹴落とされる。そこに正義はない。
そんな世界でどう生きるのか。

もちろん、こんな世界で生き残る自信もないし、可能ならもっと優しさや思いやりのある世界で生きたい。
それでも、こんな世界があることを承知の上で、可能な限り優しさや思いやりを持って生きていけたらと思う。

優し

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『流』 東山 彰良 著

『流』 東山 彰良 著

祖父の謎の死。屈強な祖父を誰が殺したのか?
と、謎に迫るミステリのように書かれているが、これは青春小説。

若いがゆえに暴走していく若者。プライドのために戦いながらも自分の中にある恐れを感じながら喧嘩をする。そんな心情が鮮やかに描かれている。

戦争時代にあった理不尽な殺し合いや仲間との絆。
現在と過去が絡み合い複雑な流れに巻き込まれていき逃れられないカルマに絡め取られ翻弄される。

もちろん時代

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『メインテーマは殺人』 アンソニー・ホロヴィッツ 著

『メインテーマは殺人』 アンソニー・ホロヴィッツ 著

初めてアンソニー・ホロヴィッツを読んだ。
感想としては設定に驚いた。こんな書き方でのフィクションは初めてでノンフィクションなのかと何度も思いながら読んでいた。

元刑事ホーソーンのキャラも天才がゆえに説明不足でイラっとさせる感じも「ホーソーンにはなんで分かったんだ?」と考えさせられる。
そこが考察時間を与えられている感じがして個人的には良かった。

ノンフィクションだと思わせる要因として、事件とは

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『そして、バトンは渡された』 瀬尾 まいこ 著

『そして、バトンは渡された』 瀬尾 まいこ 著

読んでいて心温まる。
主人公 優子の生い立ちは、いかにも不幸になってしまいそうなんだが、そうはならない。
出逢う人出逢う人すべての人が優子に愛情を注ぎ大切に育てられる。
優子自身も素直で愛情に満ちた性格をしている。

登場人物に悪い人が出てこない。
悪い人どころか人並み以上に愛情を持った人たちばかりが登場する。
故に読んでいて本当に気持ちいい。

この物語の登場人物のように自分も成れたらなと思う。

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『此の世の果ての殺人』 荒木 あかね 著

『此の世の果ての殺人』 荒木 あかね 著

まず驚くのが舞台設定。世界が終わる終末に絶望して大量自殺が起こったり、生き抜こうと海外や宇宙へいこうとする者がいる。そんな世界でひとり自動車学校に通う小春と、これまた終末期に運転を教えている自動車学校の教官イサガワってだけで不思議な世界観。

生き抜くために窃盗や強奪も起こる。形だけの警察もいるが、書類整理だけして規模縮小をし続けている。

ある日、教習所の車の中から女性の死体を発見する。
見つけ

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『赤と青とエスキース』青山 美智子 著

『赤と青とエスキース』青山 美智子 著

章ごとに話の視点が変わりながらも1枚の絵画(エスキース)の周辺の話になっていて、この絵画の周りで起こる優しいさ溢れる物語。
人の優しさや純粋さが気持ちよく何度も泣きそうになる。

特に3章のトマトジュースとバタフライピーは泣けた。
この章は他の章のように絵画が軸にある感じはしないが、やはりそこにあり優しい話が展開される。
不器用な漫画家と不器用な漫画家が一緒にインタビューを受ける。
だが元々、師弟

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