マガジンのカバー画像

BOOK LIFE

63
読書
運営しているクリエイター

2023年2月の記事一覧

『俺ではない炎上』朝倉 秋成 著

『俺ではない炎上』朝倉 秋成 著

自分の身に覚えのないことでネットで炎上、しかも殺人犯にされている。根拠もないうちから会社の同僚や友人、家族にも疑われる。
助けを求めて会社の同僚に相談しても「正直、やったんじゃないか。と思っています。」みたいな反応。友人だと思っていた人も、家族も味方にはなってはくれない。
この描写がリアルすぎて本当に恐ろしくなる。

さらに、警察でも山縣が犯人だと思われるような証拠が発見され警察も山縣を追い始める

もっとみる
『虐殺器官』 伊藤 計劃 著

『虐殺器官』 伊藤 計劃 著

物語を通して問われる倫理
犯罪は許されるのか?
犯罪じゃなければ何をしても許されるのか?
犯罪はどういう理由なら許されるのか?
理由が正当なら許されるのか?
誰に対して正当なら正当なのか?

途中、出てくるゲーム理論
はじめ裏切るものが勝つが、複雑化していくと裏切り者は淘汰される。これを見て思うのが助け合うのが生き残れるのか、裏切るのが生き残れるのか。状況で変わる。
現代ではこのバランスは思いやり

もっとみる
『方舟』夕木 春央 著

『方舟』夕木 春央 著

犯人が分からないまま時間だけが経ち着々と水没が迫る地下建築の中で次々起こる殺人。誰が犯人なのか?
犯人を犠牲にして生き残る人たちは殺人犯では無いのか?
正義とは何か?
殺人の動機も分からず疑心暗鬼になりながら追い込まれていく。

正直、エピローグを読むまで感想を残そうとは思っていなかったが、衝撃のエピローグに呆然となった。

本格ミステリ・ベスト10(2023)国内ランキング 第2位
このミステリ

もっとみる
『爆弾』呉 勝浩 著

『爆弾』呉 勝浩 著

爆弾魔と警察の心理戦から見えてくる、揺らぐ自分の中の何か。
本当に守るべき人とは? 正義とは?
そして、その答えが分からなくなる。

人は自分の仲間だけを助ける。
これが本当の世界なんだと思い知らされる。

綺麗事を掴み直すラストが妙に腹落ちする。

読みは始めたら止まらなくなる疾走感。
自分に問われる正義。
最近読んだ中でベスト1位のエンタテイメントミステリー小説。

このミステリーがすごい!(

もっとみる
『われら闇より天を見る』クリス・ウィタカー著

『われら闇より天を見る』クリス・ウィタカー著

出版 早川書房(2022/8/17)

ゴールド・ダガー受賞
このミステリーがすごい 第1位
週刊文春ミステリー 第1位
ミステリが読みたい! 第1位

読んでいくと何度も勘違いをしてしまう。
見た目で怪しんだり、1つの行いを見て判断したり。

語り手が変わると見え方がガラッと変わる。
愛が知人を救い、愛が他人を傷つける。

死んだ人たちは本当に死ぬべき人たちだったのか?
殺人をした人は本当に殺人

もっとみる
『オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティー著

『オリエント急行の殺人』アガサ・クリスティー著

1934年発表
1974年と2017年には映画化もされた作品

最初のあたりで感じた違和感を読んでいく内に忘れて推理してしまった故に驚いた。

あまり推理小説を読んでいないからか、こんな終わり方があるとは思わなかった。

結末に解き明かされるトリック、真犯人に驚き。
犯人のその後に、と2度驚いた。

真実とは正義とはを問われる。
これは本当によく考えたい内容だが、悪は本当に悪なのか?
善は本当に

もっとみる
『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーウェンズ著

『ザリガニの鳴くところ』ディーリア・オーウェンズ著

全世界1500万部突破のベストセラー 2022年映画化
2021年 本屋大賞翻訳小説部門第1位

湿地帯に住む少女の孤独と街に住む住人の少女に対する偏見を通して見える差別の問題や偏見。環境が与える成長への影響が描かれている。

さらには、動物学者でもある著者が環境問題にも触れているようにも読める。
自然動物や昆虫類の描写のリアリティーがすごい。

著者は70歳を超えているおばあちゃんで、湿地帯の少

もっとみる