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ナナイモバーとかいうお菓子

先回紹介したバンクーバーグルメ「プーティン」に引き続き、今回はカナダの名物スイーツを紹介したい。

その名も「ナナイモバー」
この名前を聞いてどんなお菓子を想像するだろうか。僕は初めてこの名前を聞いた時、お芋系のお菓子を思い浮かべた。

だって「ナナイモ」である。もろに「イモ」って言ってる。日本語で。芋については詳しくないが、そういう名前の品種でもあるのだろうと思った。
そして、このような和風の名前であるからには、きっと何か日本と関係のあるお菓子なのだろうと推測した。

なにせカナダは多国籍社会。人種のサラダボールと呼ばれる国だ。街を歩けば、いろんな国籍の人たちが歩いているし、レストランや食料品店も実に国際色豊かだ。もちろん、日本も負けていない。「犬も歩けば~」でもないが、バンクーバーの街中をちょっと歩けば、至る所でSUSHIやRAMEN、JAPANESEなどと表記された看板やレストランに遭遇する。
それだけ異国の文化に寛容な国だ。たとえカナダ名物に日本の要素が入っていても何の不思議もない。

すなわち「ナナイモバー」とは外国風にアレンジされた芋をベースにした和風のお菓子である。

僕はバンクーバーの片隅で、人知れずそんな仮説を打ち立てていた。

情報によると、この「ナナイモバー」とやらは、カナダでは有名らしく、カフェやコーヒー店など、そこら中で販売されているとのことだ。早速、この仮説を実証すべく、街に繰り出し、調査してきた。

「ナナイモバー」(Wave Coffee)
上からチョコレート、カスタード、ココナッツチョコブラウニー

どうだろう。
僕の仮説は1ミリもかすっていない。

見ての通り、1ミリも「和」要素がない。
チョコレート、カスタード、チョコブラウニー。
「洋」しかない。
もはや「洋」を「洋」でサンドイッチしてしまってて、「洋」でしかない。
完全に「ナナイモバー」という名前に騙された。

さあ、それはさておき、見たまえ、この断面。

う、美しい

ご、豪華すぎる。全層がスイーツ界の主役級のキャスティングじゃないか。もはや『アベンジャーズ』である。すべてのキャラが主役級。そりゃ面白いこと間違いなし。このお菓子もまた食べずとも美味しいことは間違いなし。

一口食かじって、咀嚼する。

甘いっっ!!

これぞまさに海外スイーツ!という感じで、しっかりと甘ったるい。
甘ったるさの極みだ。
しかし、むしろこの甘ったるいのが良い。

チョコレートとカスタードの甘さが口蓋に広がり、そのあとにココナッツの香りがぶわーと鼻を抜ける。ブラウニーのココナッツ果肉のシャキシャキした触感がアクセントになって面白い。

これはいけるぞっ。

そして「バー」というだけあり、かじった時にちゃんと「バー」に相応しい歯ごたえがある。
チョコレートやブラウニーは割とバーの材料としてありがちで想像はつくが、カスタードが意外だった。カスタードと聞いて、あのトロトロのカスタードを想像するのは僕だけではないだろう。
このカスタード、写真からも分かる通り、固形である。触感をあえて例えるなら、和菓子の落雁に近い感じだろうか。あのトロトロのカスタードとはまるで違う。ちゃんと全体が「バー」として機能するように、カスタードもそのように設計されているのである。やるな、ナナイモバー。

結果、大変おいしかった。
お菓子自体は小さかったが、この甘ったるさゆえ、しっかりと胃にこたえるところもまた欧米のスイーツ感があって良い。
喉にくるほどの甘さに、きっと甘党の人たちは喜びそうだ。特にスニッカーズやブラックサンダーなどのジャンク系の菓子なんかのファンは飛び上がって喜ぶに違いない。
僕も甘党なので、かなりタイプだった。スニッカーズやブラックサンダー以上にヘビーな食べ物であることには違いないが、胃袋さえ許してくれれば、何個でも食べたい。
「こんなん、なんぼあってもええですからねえ」とか言いながら。

それに「味」とは少し異なる点で言うと、このお菓子で面白いと思うのは、このシンプルかつ大胆な発想である。

チョコレート、カスタード、チョコブラウニー、全部重ねちゃいました!
ほら、美味いっしょ??

みたいな。

この大胆でシンプルな発想。まさに欧米(偏見)
カロリーガン無視。もはや「横暴」である。しかし、うれしい「横暴」だ。だって、美味しいんだもん。単品でも成立するキャラを層にして重ねてしまうのだから、失敗しようがないじゃないか。美味いに決まってる。

これはアイアンマンとキャプテンアメリカとソーを同じ映画にキャスティングするようなものだ。実際、「アベンジャーズ」は人気のスーパーヒーロー全部出演させちゃいました!すごいでしょ?みたいな映画だ。この映画は、、、ってさっきからおれは何を話しているのだろうか。
マーベル映画を知らない人はごめんなさい。

それはさておき、「ナナイモバー」をいただいて、こういうシンプルな発想こそが正義なのだと改めて実感した。あっぱれ、ナナイモバー。

最後に、危うく書くのを忘れるところだったが、この「ナナイモバー」の名前の由来について調べたところ、日本とは何の関係もないようだ。カナダの「ナナイモ」という名の都市で生まれたスイーツなので、「ナナイモバー」だそう。そのままやん。日本で言えば「東京バナナ」のようなものかもしれない。知らんけど。
「ナナイモ」という都市はもともと炭鉱で栄えた町で、このナナイモバーは、毎日肉体労働でエネルギーを使う炭鉱労働者に対して、「たっぷり栄養を取れるように」と考案されたお菓子なのだそう。
それを考えると、たしかにハイカロリーなのは納得だ。しかるべき背景があり、なるべくして暴力的ハイカロリーになったのである。とても興味深い。

ちなみにこの「ナナイモ」という都市名自体も日本と何の関係もない。「人々の集う場所」という意味のカナダ先住民の言葉に由来しているらしい。実に日本語っぽい響きだが、全然、カナダ先住民の言葉である。

ためになったねえ~~、ためになったよおお~~。

・・・

結論、「ナナイモバー」は日本と1ミリも関係ない。
冒頭で和風スイーツであるとの仮説を得意げに振り回していたのが恥ずかしい。これからは日本語っぽい名称だと思っても安易に日本と関連付けるのをやめようと思いました。はい。

とはいえ、由来は置いておいて、スイーツとしては美味しいし、カナダの名物なので、ぜひカナダを訪れた際は試してみてください!

以上、「ナナイモバー」のレビューでした。


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