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グローバルで人気急増中の日本酒サブスクが日本の若者の酒離れを救う

昨今のZ世代はあえてお酒を飲まないのがカッコいいと言う傾向があるようだ。

日本男性の若い世代ではお酒を飲む割合が、半分近くになっていることが
下の表からもおわかりいただけるだろう。

飲酒習慣がある人の割合(%)

ビールを最近飲まなくなったという方も多いのではないだろうか。
ビール業界も不況の嵐が吹き荒れていると言われる。

1ヶ月に約3蔵が廃業しているといわれる日本酒業界も例外ではない。

日本酒業界も20年前に比べ、出荷数量や製造場が
半分近くまで落ち込んだと言われている。

こうした業界の危機を打ち破る
日本酒の新しい価値を新しい場所で提案しようとする企業をご紹介したい。

アメリカ・ロサンゼルスを拠点に日本酒を販売する「Tippsy」だ。

各日本酒銘柄のストーリーや味の違いなどの情報を提供して、簡単に楽しく購入していただくというのが同社のビジネスモデルで、アメリカで一番種類の多い、情報の多い日本酒のオンラインのプラットフォームを目指している。

現在までに2億6千万円の資金を調達し海外の日本酒好きのユーザーを次々と獲得している。

引用:PRTIMES

「Tippsy」では、ミニボトル(300ml)のおまかせ詰め合わせセットのサブスクリプション(定期購入)サービス「Sake Box」を提供している。日本酒をよく知らない人にとって、味がわからない商品をいきなり四合瓶で買うのはハードルが高いもの。300mlサイズで少量ずつお試しできるようにして、好みの銘柄を見つけやすくする仕組みを取っている。※1

『Tippsy』のお客さんの約8割は、日本酒の存在は知っているが、何を買っていいか、ひとりではわからない人たちです。『おいしかった記憶はあるけれど、購入先がわからない』『もっと知りたいが、誰に聞いたらいいかわからない』という日本酒初心者の方々が、いろいろな銘柄を知り、自分で選べるようになるまでのガイドとなるサービスが『Tippsy』である。

熱量の高いお客さんに支えられる海外日本酒市場

また、「SUSHI屋さんで美味しい銘柄をのんだけど名前がわからないし、どこに売ってるかわからなかった」という人や「初めてSAKEを飲んだけどハマったよ」という良いレビューが5000件を超えている。ここでいくつか実際のレビューをご紹介したい。※2



「"Tippsy always sends unique sake that we cannot find in our area, and we love the description cards and food pairing suggestions." 」Aleah(近くでは買えない面白いセレクションを送ってくれるし、商品カードに書いてあるペアリングがとても嬉しいよ。アレア)
 
「"I'm very new to sake but it's nice to have an assortment sent instead of me having to do some guess work. Love that this box has sake from other regions in Japan." Matthew」(日本酒初心者なんだけどオススメをセットにしてくれるから助かる!このサブスクだと異なる地域のお酒が飲めて最高!マシュー)
 
「"Love love love the welcome box. It was my 1st time trying sake and i felt like i was given a good variety to explore." Anonymous」(ウェルカムボックス最高!初めて日本酒を飲んだんだけど、たくさんのバラエティを一度に楽しませて貰えたよ。匿名)

※1SAKETIMESより
※2創業者Noteより

「Tippsy」のスタートにあたって、「熱量の高いお客さんからのサポートを受けています」と話す創業者の伊藤さん。サイト内の「Community」という項目から気軽に質問や回答を投稿できるほか、facebookグループやInstagramを使って利用者との密接なコミュニケーションを図っているという。


日本酒のグローバル展開を確信する兆し

前職にいた時、アメリカで開催されたB向け、C向け両方のテイスティングイベントで日本の地酒を飲んでもらったことがあった。その際の参加者が「これは何だ?うまいじゃないか!」と絶賛していた。

実は、アメリカに出回っている日本酒の大半は、日系酒造メーカーがアメリカに工場を建ててカリフォルニア米で作ったもの。それ以来、「なぜこんなに美味しい日本酒がアメリカでは知られていないのか」と疑問に抱くようになり、Tippsyを起業に至った

と伊藤さんは語る。

彼らがレストランでおいしい日本酒と出会っても、近所のリカーショップには日本酒を置いていない。それならオンラインで買おうと獺祭などのキーワードをGoogle検索しているうちに、彼らはTippsyのWebサイトにたどり着く。

引用:https://www.tippsysake.com/

「レストランでおいしかったあの日本酒は水色のボトルに入っていたけれど、何だったっけ」という方が増えているので、初めてのサブスクリプションボックスには「日本酒とは何か」や、ワインでいうリージョナリティ(地域性)、原料による味の違いを説明したガイドブックを添えるようにした。

彼らがTippsyのサブスクリプションボックスによって日本酒を学び、単品買いができるような知識と好みを持つようになったら、日本酒の市場規模を広げるドライバーになると考えている。
引用 https://onlab.jp/journal/onlabgrads-tippsy/

さらに
アメリカでの日本酒のマーケットは日本の10分の1程度でさらに伸びているが、日本国内では縮小傾向となっている。そしてもう一つ、海外で日本の「コンテンツを売る」という「モノづくり国」の次の形として日本が目指すべき姿のマーケティング成功事例を作れたらと思っている。

アメリカでワインに負けないカテゴリーに成長させてみせる

と創業者の伊藤さんは語る。

また、投資家の1人である本田圭佑はこう語る

Tippsyは蔵元の声やストーリーをユーザーに届けているので日本酒が好きなアメリカ人にとっては特別な感覚になると思っています。市場も急成長しているのでパイオニアとしてのアドバンテージを活かして頑張って欲しい。

引用 https://www.tippsysake.com/

政府も民間企業もグローバル展開に注力

日本酒の輸出をさらに加速させようと政府や民間企業が海外展開に注力し始めている。

国税庁の酒レポートでも商品の差別化・高付加価値化等が課題だと指摘しつつ海外市場の開拓(輸出促進)を国税庁の取り組みとして本レポート内で掲げている。

また、政府系ファンドのクールジャパン機構「日本食のテーマパーク」を欧州中心に海外展開する方針を固め、英国で2018年春1号店を出店、今後はパリなど他の欧州主要都市での出店を目指している。

これら政府と民間企業がどのように協力体制を築いていけるかも
日本酒業界の衰退に歯止めをかける大きなポイントになってくるだろう。

おわりに

日本では縮小傾向の日本酒も、海外における日本酒の市場サイズは10年連続で拡大しており
さまざまなメディアで「日本酒スタートアップ」が取り上げられ、日本の投資家たちも注目している分野の1つだ。

先日も日本酒D2CのRiceWine(ライスワイン)が3億円の資金調達を実施しこれまでにない盛り上がりを見せている。

まだまだワインやビールとの消費金額差は歴然だが、海外そして高価格帯という切り口で非常に伸びしろが大きい産業だと言えるだろう。

他の酒類に比べてマーケティングが弱いとされてきた日本酒業界だったが
近年の盛り上がりで優秀な人材がこのマーケットにどんどん入っているということも耳にする。

この数年において、日本酒が海外におけるブランディングをどのように握っていくか、新しい文化、スタンダードを定着させられるかどうかが苦境の日本酒業界を切り抜け、再び新しい時代を切り開くことが出来るかどうかの分岐点となってくる。引き続き動向に注目したい。


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