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【医療コラム】医師は積極的にコミュニケーション

■外勤病院に行くメリット


「すみません。これから外勤病院に行かないといけないので、この患者さんお願いしていいですか?」

懐かしの携帯電話「ガラケー」をパカパカと折り畳むように、四方八方に頭を下げて、いろいろと嫌味を言われながら大学病院から外勤病院へ行く……。医局から任された仕事とはいえ、バイトです。まさに今、本来の仕事である大学病院よりも外勤病院での仕事を優先しているわけですから仕方がありません。そうしなければ、私が研修医をしていた時代では生活をできるだけの収入が貰えていません。ですが、外勤病院に行くために上司や同僚に仕事を押し付けることなど、もってのほか。だから早く終わらせるために、朝早く病棟で処置やらカルテ記載やらしているのに、どうしても終わらない日もありました。いっそ外勤病院に遅刻して行ければと思うのですが、そんなことをしたら教授から直接怒られてしまうし、大学医局に迷惑がかかる。まさに追い詰められている状態です。

そして、ようやくたどり着いた外勤病院では緊張も緩んでうつらうつら。ゲンコツが飛んでくるわけではないから完全に気が抜けていました。しかし、外勤病院から帰れば大学病院にはやり残した仕事が山ほど待っている。メリットデメリットを考えれば「お金」という、とてつもないメリットがあるのですが、外勤病院に出た日はその分仕事が増えてしまうのがデメリットです。1日の業務で変化が多い。大学病院の勤務から解放されて気楽な時間もありますが、その反面負担も多い。できれば外勤病院には行きたくないものだとつねづね思っていました。

■メリットを自ら作り出す先輩の考え方


ある日溜息まじりに外勤病院へと向かうため、医局を出ていく私に先輩は言いました。
「おい。そんなにため息つくなよ。こっちまでげんなりするぜ!」
「でも、朝早くお金のために外勤病院に行くなんて気が滅入るじゃないですか?」
「まぁな。だったら考え方変えるんだよ。この病院に行くと○○なことがあるとかさ。今日、先生が行く●●病院はさ、新生児室に美人の看護師さんいるじゃん。あの子に会えるとか考えたら気分上々だよ」

確かになぁ……。
とりあえず外勤病院でいいこと探しをしました。外勤病院でいつもの私はと言えばうつらうつら……。合間に論文を読んだり書いたり。
今日は何かしら変えようと休み時間にスタッフに話しかけたり、病院内を散歩したり気分転換するようにしました。これまでですと、休み時間には机に突っ伏して寝ていたものでした。

しかし、病院内の色々な人と話すと病院の方針、流れや裏情報がわかったりするものでした。この仕事はこの病院ではどの人に頼むがいいのだとか。また業務をお願いしたりお願いされたり。頼られるのも悪くないですし、処置のときにもスムーズに事が運ぶようになりました。

■私の医師のライフハック術


外勤病院は居候みたいなものだと畏まっていましたし、外勤病院のスタッフも「大学病院からきている医師」と壁を作っていたのですが、話をすることでその壁がなくなったのでしょう。人と関わると相手にあわせないといけないこともあるため疲れるときもありますが、楽しみでもあるのでした。こうして楽しみを見つけると、気分も上がるので、論文のアイデアも浮かんできたり、診療の質も上がりいいことづくめ。

積極的にコミュニケーションをとって楽しみを見出だす。そうすれば業務も円滑に進む。
これこそが私なりの「医師のライフハック術」です。

確かに先輩の言っていた新生児室の看護師さんは美人でした。先輩に聞けば、◇◇の病院の■■さんは美人だよとすぐに出てきます。それが、先輩なりの「医師のライフハック術」なのでしょう。

ただこんなにいろんなことを教えてくださる先輩なのですが、残念ながら非モテ医師。イケメン先生なのに、いっつも怖い顔して外来診療。なれた人には心開くのですが、そうでなければ壁を作っているのです。さきほどの美人看護師も先輩といっつも目が合うので意識はしていたようですが、先輩は自分から動かないので……何も進展はなかったようです。私はと言えば先輩がモテ医師になるのも癪だから、そんなうわさ話を聞いても「あの美人看護師が先輩に気があるかもしれない」ということは口が裂けても言いませんでした。

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