失ったものと消えた夢

パーキンソン症候群が判明した時、多くの検査医から過去の生い立ちなどを尋ねられました。病気によっては、遺伝や積み重ねてきた事柄が病の根になっているからだそうです。

私は小さい頃からいじめられっ子で、「何となく腹が立つ」という理不尽な理由からいじめられた経験があり、感情を抑えるようになっていきました。

また、幼少から身体が弱く、貧血やめまい、理由のわからない発熱が続くなど、ストレス性のものを抱えていました。

大きくなってからは、身体も健康になり(なったように見えていただけでしたが...)、私は自分の夢を実現するために頑張っていました。

そんなある日、どうしても働きたかった職場に非正規雇用の空きが出て応募したところ、受かることができました。私は、非正規でも成果を上げることを目標に、目の前の仕事はどんな小さなことでも真面目に取り組んでいました。休みも取らず、コツコツと積み上げるかのように働き続けました。

ある時、嘱託の人が急に来なくなる事態が生じ、その穴埋めを陰ながら行いました。事務雑用を全て請負いながら、終電で帰り、始発で会社に来る日々が長ながらく続きました。

しかし、私が正規として雇われることはありませんでした。もうダメだと思わされたのは、当時の上司に「仕事ができる奴は安く使う」と面と向かって言われたことです。

今となっては、逃げた嘱託の方は同業種で成功され、新聞や雑誌にも取り上げられ、逃げ出した職場で働いていたことも華やかな経歴として話さしています。

一方の私は...もうしたいことも、恩返しもできない状況です。当時の職場には、私が一緒に働きたいと思わされた方や、雇用形態が違えど助けてくれる後輩達がいました。彼らと働けるように、いつか恩返しができるように、そう思って頑張った結果が大きなストレスとなり、不眠が溜まり、ドパミン減少につながっていったのかもしれないと、検査医達からは指摘を受けました。

壊れた脳は戻らないんです。頑張る前に身体を考え、逃げるが勝ちなのかもしれません。そんなことを思い出した今日、窓の外は綺麗な青空が広がっています。働いていたあの頃は、見上げる空はいつも星空ばかりでした。もう、同じ場でその夜空を見上げることさえ一生ありません。

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