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あなたは何歳まで働きますか?~寿命と働き方の話~

こんにちは、クラレザパートナーズの馬場 一士です。

新卒でアクチュアリーとして日系生保に入社した後、
外資コンサルファームの部門責任者を務め、
外資人材会社のカントリーマネージャーを経て、
40代で起業するという異色(?)のキャリアを歩んできました。

昨年6月に立ち上げたクラレザパートナーズ合同会社では、主に外資企業にインテリム人材を提供する事業を行っています。

今回の記事では「寿命と働き方」について書いていきます。

前回も少しこのテーマについて触れました(以下リンク)が「寿命のことをもっと色々お伝えしたい!」と眠っていたアクチュアリーの血が騒ぐので、専門的な話にならないよう自制しつつ、ご紹介していければと思います。

さて、あなたは何歳まで働きますか?
そもそも何歳まで生きると思いますか?


人は何歳まで生きる?

何年か前に、父が長年勤めた会社を退職して、いわゆる老後生活に入り始めた頃、こんな会話をしたことを覚えています。

父「これまでのサラリーマン人生から大きく生活が変わることになる。今後どう過ごしていこうかと思っている。」

母「引退して急に体調を崩す人もいると聞くし、心配だわ。今まで会社中心の生活で特に趣味もないし・・・(家で毎日ゴロゴロされても困る!)。」

父「ま、残りせいぜい15年ほどの命だ。何かやりたいことを見つけるさ。」

私「・・・ん?15年?」

当時、父は65歳前後で、男性の平均寿命はまだ80歳未満でした。自分の残りの寿命が15年くらいだろうと推測するのも無理はありません。実際、このように「平均寿命までの年数=残りの寿命」と考える方は多いのではないでしょうか。

ところが父の場合、残り15年どころか、20年を超えて生きる可能性が高いのです。なぜでしょうか?

平均寿命と平均余命

平均寿命とは「0歳の新生児が生存するだろうと考えられる平均年数」を意味します。つまり生まれたばかりの赤ん坊が何歳まで生きるかの期待値です。

平均寿命を算出する際には、0歳から各年齢における死亡率を使用します。
「0歳の人が1歳まで生きる確率」
「1歳の人が2歳まで生きる確率」


「114歳の人が115歳まで生きる確率」
これらを元に、0歳児が平均的に何歳まで生きるか算定するのです。

さてここからが重要なのですが、父の場合は既に65歳までに死亡するリスクをクリアしています。そのため、0歳から65歳までの間に死亡する可能性も含まれている平均寿命よりも、長く生きることが見込まれるのです。

ではどれくらい長く生きることが見込まれるのか?

65歳の人が生存するだろうと考えられる平均年数のことを、65歳の平均余命と言います。

厚生労働省の「簡易生命表(令和4年)」によると、65歳の平均余命は男性で19.44年(84.44歳)、女性で24.3年(89.3歳)です。同じ生命表から計算された平均寿命は男性が81.05歳、女性が87.09歳ですので、男性で約3.4年、女性で約2.2年ほどの差があります。

父のように65歳で退職された方は、平均寿命よりも3年ほど長く生きることが統計的に見込まれます。

ここに更に、死亡率の改善の影響が加わります。

死亡率の改善

直近ではコロナの影響もあって異なる傾向を見せているものの、長期的に見れば死亡率は改善を続けるものと推測されます。

資料出所 厚生労働省ウェブサイト

ところが前のセクションでご紹介した平均寿命や平均余命の計算には、将来の死亡率の改善が見込まれていません

例えば、前述の「65歳の平均余命は男性で19.44年(84.44歳)」ですが、これは、
「2022年に65歳の人が66歳まで生きる確率」
2022年に66歳の人が67歳まで生きる確率」


2022年に80歳の人が81歳まで生きる確率」

を元に算出されたものです。

ところが実際には、2022年に65歳の人が80歳になるのは2037年ですので、本来は以下の計算になります。
「2022年に65歳の人が66歳まで生きる確率」
2023年に66歳の人が67歳まで生きる確率」→2022年より高い確率


2037年に80歳の人が81歳まで生きる確率」→2022年より高い確率

つまり今後とも死亡率の改善が続く前提に立てば、65歳男性の平均余命は19.44年よりも更に延びるということです。

父のように65歳で退職した方は、残りの寿命を15年程度と見込みがちですが、実際には20年(85歳)を超えると見込まれます。65歳女性の場合は25年(90歳)を超えるでしょう。

そしてこれらの数値はあくまで平均値。もっと長く生きる人もかなり多いわけです。また医学的なブレイクスルー等があれば更に寿命が延びる可能性もあります。

人生100年時代と言っても、100歳まで生きることが当たり前になるのはもう少し先の未来の話だと思っていませんでしたか?

これから定年を迎える世代にとって、90歳や100歳まで生きることも決して珍しいことではないということが実感いただけたのではと思います。

長寿を前提にどう働くか

何歳まで働くべき?

さて90歳や100歳まで生きる可能性も考えるとすると、何歳くらいまで働けば生活していけるのでしょうか?

これは一人ひとりの保有資産や生活の状況等にもよりますので、「何歳くらいまで働けば大丈夫」といった確たる答えはありません。

ただ一つ言えることは、定年退職までに蓄えた貯金で老後生活を賄うのは、これからの時代、かなりリスクが大きいということです。

国の年金は基本的に65歳から支給開始となっており、企業の制度も65歳までを区切りとして退職となることが現在では最も一般的です。しかし仮に90歳まで生きるとすると65歳からの25年間はかなりの年月です。

25年もの長い期間になると、通常起こりえないようなことも起こってしまう可能性が高くなります。過去25年を振り返ってみても、リーマンショックのような株価暴落地震等の天災による住宅損傷、インフレによる生活必需品の価格高騰など、保有資産価値に大きな影響を与えてしまう事象は多々ありました。当然、想定よりも長生きしてしまう長寿リスクもあります。

これらリスクを見極め、虎の子の老後資産を守り続けるのは、たとえ金融の専門家であっても容易なことではありません。

そもそも20代から65歳までの約40年間で、25年分の資産を貯めること自体が大変です。仮にできたとしても、それで十分だという保証はない。

できるなら65歳を超えて、70代80代でも働ける限りは働くことが生活を維持するためには望ましいのかもしれません。

長く働くために

では70代80代になっても働くためには、何が必要でしょうか?

まず不可欠なのは、健康でしょう。年齢を重ねるにつれて体力や気力は衰えがちですが、それを維持するための努力を普段から行っておきたいところです。

また自分をよく知ることも重要になります。自分が得意なことは何か、自分はどういう仕事や働き方をすれば心身のエネルギーが湧いてくるか等を理解していれば、幸福感を持って長く働く方法を見つけやすくなります。

そして自分は、会社や役職等の肩書がなくなった時にも、一緒に働きたい、仕事を任せたいと思われる人物なのか?

これら要素は、60代で定年を迎えてから考えるのではなく、40代50代もしくはそれ以前から目を向けておくべきことでしょう。

さいごに

今回の記事では「寿命と働き方」についてご紹介しました。

少子高齢化が進む現代において、本来65歳を超えても当たり前のように働ける状況が望ましいものと思いますが、今の社会の仕組み上、正社員にとっては60代がキャリアの区切りとなりがちです。

当社のインテリム人材のように、フルタイムの正社員でなくてもマネジメント経験や専門能力を活かす道が広がれば、今後を見据えて40代50代でフリーランスに転向するといったキャリアも選びやすくなります。人材が年齢にかかわらず活躍できる社会に近づくための一助になれば嬉しい限りです。

長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。

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