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『結婚作詞 離婚作曲』 シーズン1 〜浮気男カタログ〜

2021年・韓国
演出:ユ・ジョンジュン、イ・スンフン
脚本:Phoebe(イム・ソンハン)
出演:ソンフン、イ・テゴン、チョン・ノミン、イ・ガリョン、パク・チュミ、チョン・スギョン、イ・ミニョン

30代、40代、50代夫婦の結婚と離婚(?)を描いた作品。
(?)と書いたのは、とりあえずシーズン1ではまだ離婚は成立していないから。
今日、第16話を見たのですが、今日になってシーズン2があると知りました。16話で終わると思ってました。全然何も終わってないです。

何気なく見始めたのですが、思いの外面白くて、続きを楽しみに見てきました。
離婚経験があるとなおさら楽しめると思います。

意図的に三つの異なる世代の、しかもタイプの異なるカップルの、それぞれの結婚生活を描いて行きますが、前半は、夫側の様子は表面的にしかわかりません。

女王様 vs 素直な坊ちゃん

裕福な家庭に生まれ育った弁護士のパン・サヒョン(ソンフン)とラジオDJのプ・へリョン(イ・ガリョン)の30代カップルは、何かにつけぶつかりあってケンカをし、最終的には夫のサヒョンが折れる、というのを繰り返す結婚生活を送っています。
ケンカはいつも、激しく口の立つ女王様へリョンの攻撃に打ち負かされて言葉を呑み込むサヒョンが家を飛び出したり、少なくともその場を離れて終わります。あとで謝るのはもちろんサヒョンです。

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日課のようにケンカして、それでも別れない夫婦はざらにいますから、この二人もこんな感じのままやって行くことは十分あり得ます。幸せかどうかは別として。
しかしサヒョンは離婚を切り出します。好きな人ができたというのです。
もちろんへリョンは納得しません。まずはその女を連れてこい、となりますが、サヒョンはそれに応じません。サヒョンの両親も巻き込んで、さあこの結婚の行方はどうなることか、というところで前半が終わります。

愛妻家の病院長 vs パーフェクトウーマン

病院長のユシン(イ・テゴン)は自他共に認める愛妻家で、日々妻への愛情表現をかかしません。妻サ・ピヨン(パク・チュミ)はラジオ番組のプロデューサーで、家事も子どものケアも完璧にこなす良妻賢母。傍目からは何もかも整った完璧な家族に見えます。
ピヨンは母親との確執がありますが、唯一の汚点のようなそのことを夫には隠していました。しかしそれも早い段階で夫の知るところとなり、家族はより一層完璧なものになります。
でも、視聴者はその完璧さに違和感を感じてしまいます。ユシン役のイ・テゴンの演技の賜物か、あるいは脚本の狙い通りということか、この完璧な夫婦がその完璧さゆえに嘘くさく見えてくるのです。

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ユシンは早くに母を亡くしており、母というには年若い継母がいて、何くれとなく世話を焼いています。ピヨンはその様子を、少し行き過ぎているのではないかと感じてはいますが、前半ではこの夫婦の間にはっきりした亀裂はありません。

真面目で穏やかな大学教授 vs 糟糠の妻

放送作家のシウン(チョン・スギョン)は、30年間自分を犠牲にして家族に尽くして来ました。腱鞘炎の手首に湿布を巻き、身なりも構わず働いて、二人の子を育て、家を買い、夫ヘリュン(チョン・ノミン)への誕生日に車を贈ったりします。ヘリュンが大学教授になれたのもシウンの支えがあってこそでした。
それなのにある日突然、ヘリュンが言います。自分を自由にして欲しい、と…

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シウンにとっては青天の霹靂です。理由を問うても要領を得ない答えしか帰って来ません。「俺たちは長く一緒にい過ぎた」なんて、シウンからしてみれば別れる理由になるとは到底思えない。けれども真面目だけが取り柄のような夫に女がいるとも思えない。夫に聞いてもそれはないと言う。しかしラジオ局での仕事の後、このことをへリョンとピヨンに話すと、絶対に女がいる、とへリョンが言います。

前半の第8話までは、このように妻たちの側から見えている出来事や状況で構成されていて、視聴者にとってもサヒョンやヘリュンが別れを切り出して来たのは突然の出来事で、その事情は全くわかりません。ただ、ところどころに仄めかしがあったりはします。
そして第9話からは、ことここに至るまでを、今度は夫側に起こった出来事や状況をたどって行く形で見せて行きます。
この構成が面白いです。ミステリーの倒叙みたいな感じですね。
視点を変えると同じことも別の意味を帯びるということを改めて思ったりしますし、ふーんなるほど、あの時そうしてたわけね、という楽しみ方もできます。

結局三人とも浮気なんですよ。その浮気が本気かどうかは別として。あんまり言ってしまうと見る楽しみがなくなってしまうかもしれないのですが、それぞれのケースが浮気のというか、浮気男の典型的なパターンで、まさに浮気男カタログなんです。

坊ちゃんサヒョンは女性から優しくされたいのだし、真面目男ヘリュンはなんかキラキラドキドキしたい。ナチュラルボーン女たらしのユシンは女性から頼られたい、そして頼ってくる女性すべてにいい顔したいんです。

現在の結婚生活の状態というかその状態をもたらす相手=妻が、この浮気男たちが浮気したくなる土壌として機能してしまいます。
サヒョンの妻へリョンは、気が強い女王様で譲ることを知らない女、ヘリュンの妻シウンはくたびれ果てて湿布の匂いをさせている地味な女、ユシンの妻ピヨンはしっかりと自分の足で立つパーフェクトウーマン。
それぞれ、妻に無いものを求めて外に向かってしまうわけです。

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完璧だって浮気されちゃうんですよ。浮気する男は妻がどんなであっても浮気する、とはよく言われていることですね。

シーズン1では、この三組の夫婦のどの問題にも決着がついていません。彼らがどうなって行くのかは、やはり見届けたいです。
シーズン2の配信が待たれますね。


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