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CIATという言葉は近代建築国際会議CIAM(Congrès Internationa…

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CIATという言葉は近代建築国際会議CIAM(Congrès International d'Architecture Moderne)になぞらえて作られた造語です。 東北大学を中心とする建築家が現代建築において、どのような建築を残していくのかを考えるプラットフォームです。

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[第2弾]CIAT特別企画「今、建築を志す学生に勧める本」

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に伴う自粛ムードが強くなる今、このムードに飲まれてしまうのではなく、今だからこそできることをCIATから提案したいと思います。 第2弾リスト 『要塞都市LA』マイク・ディヴィス / 村山 敏勝 訳   ー五十嵐太郎(東北大学大学院教授) 『生物から見た世界』ユクスキュル, クリサート   ー藤野高志氏(生物建築舎) 『平面 空間 身体』矢萩 喜従郎 『社会的共通資本』宇沢弘文   ー渡邉竜一氏(ネイ&パートナーズジャパン)

    • [第3弾]CIAT特別企画「今、建築を志す学生に勧める本」

      今回は東北大学出身で現在は広島大学で教鞭ととっておられる石垣氏と 2016年 日本建築学会作品選集新人賞の滑田氏、また昨日発表された2020年 日本建築学会作品選集新人賞の新谷氏(久米設計)、藤木氏(PEAK STUDIO)の4名に紹介してもらいました。 以下、各記事へのリンクです。 『人口減少社会のデザイン』/ 広井良典   ー石垣文(広島大学大学院助教) 『かかわり方の学び方』/ 西村佳哲   ー滑田崇志(はりゅうウッドスタジオ代表取締役) 『ティンカークリークの

      • 3_1『人口減少社会のデザイン』

        広井良典 / 東洋経済新報社 / 2019年 社会保障や医療、都市・地域に関する政策研究等を精力的に行う広井良典氏の最新の著作である本書は、「2050年、日本の社会は持続可能か?」という問いを掲げ、人口減少社会をいかにデザインしていくかについて、具体的な方策や理念、時代認識などについて提起しています。まずは公共政策と科学哲学を専攻とする筆者が提起するこれからの社会像に触れる、そしてそこから建築や都市が果たせることは何かと考えてみる、そんな時間の過ごし方はいかがでしょうか。

        • 3_2『かかわり方の学び方』

          西村佳哲 / 筑摩書房 / 2011  先日、徳島県神山町を訪問した。創造的過疎を目指す神山町のまちづくりは、西村さんのワークショップの役割が大きかったということを聞いた。僕たちのワークショップ を見直す上で、この本を手に取った。  本書は、15人へのインタビューからファシリテーターとは何かを探る。同時に働き方研究家である著者は、インタビューを通して「いい仕事」についても考察する。  私たちは、仕事を介して、人に関わり、関わられて生きている。知識や技術は学びやすく、一通り学

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        [第2弾]CIAT特別企画「今、建築を志す学生に勧める本」

          3_4『コンヴィヴィアリティのための道具』

          イヴァン・イリイチ / ちくま学芸文庫 / 1989年 2008年に都市部の人口が郊外の人口を超えたと聞いた。都市化は人類の大発明でもあるが、一方で今回のような脆弱性も垣間見える。イリイチはこういった成長の良い面と、その後にやってくるマイナス面を発展における二つの分水嶺と言った。今の状況の中で、リモートワークやwebによるコミュニケーション、他にも大きな変化が今後あるかもしれない。 しかし、その制度や社会の流れは本当に人を豊かにするのだろうか? 受け入れざる得ない道具や制

          3_4『コンヴィヴィアリティのための道具』

          3_3『ティンカークリークのほとりで』

          アニー・ディラード (著), 金坂 留美子 (翻訳), くぼた のぞみ (翻訳) / めるくまーる / 1991年 勤めていた設計事務所を辞めてこれから独立しようとしている時、持て余した時間をつかって読んだ。 この本は著者が都会を離れ小川のほとりに住みながら、 延々と自然を見つめ、その奥深い世界を描写した随筆なのだが、葉から落ちる水の滴りすら見逃さない著者の眼差しに、今僕たちが身を置く環境の中にも微小な変化や、複雑なディテール、多様な世界があることに気づかされた。 目に見え

          3_3『ティンカークリークのほとりで』

          3_5建築への旅 建築からの旅

          二川由夫 編/エーディーエー・エディタ・トーキョー/2017年 70組の建築家による旅にまつわる記録集。アンビルドを除く全ての建築は敷地と切り離すことができない。だからその建築を体験するためには旅が不可欠となる。旅を通して得られるものは、建築のみならず、それを取り巻く風土や歴史、そして自らの思考の時間だ。本書に寄せられる建築家の考えは様々だが、行動範囲が制限される今、予行演習のように彼らの旅を疑似体験しておくのも面白いかもしれない。 -------------------

          3_5建築への旅 建築からの旅

          2_4『社会的共通資本』

          宇沢弘文 / 岩波新書 / 2000年 出島表門橋を経て、今読んでいる本。この本の内容がお勧めというより、人と人の関係やコモンズとは何かなど今の関心から読んでいるものを伝いたいと思った。誰かの人生の成功体験は、次の道を切り開くヒントにはならないと感じている。正解よりも失敗や試行錯誤の中に、今の僕もいることを伝えたい。 --------------------- 推薦者:渡邉竜一氏(ネイ&パートナーズジャパン) 1976年山梨県生まれ 2001年東北大学大学院工学研究科都市

          2_4『社会的共通資本』

          2_3『平面 空間 身体』

          矢萩 喜従郎 / 誠文堂新光社 / 2000年 大学院の時に読んで衝撃を受けた。僕の関心だった平面と、空間を繋いでくれた本。領域横断やコラボレーションという言葉が嫌いな僕に、全ての本質の起点は同一なのだと気付かせてくれた。バブルがはじけて暗かった学生時代の空気に光を灯してくれた。 --------------------- 推薦者:渡邉竜一氏(ネイ&パートナーズジャパン) 1976年山梨県生まれ 2001年東北大学大学院工学研究科都市建築学専攻 修士課程修了 2001-0

          2_3『平面 空間 身体』

          2_2「生物から見た世界」

          ユクスキュル, クリサート/ 日高 敏隆, 羽田 節子訳 / 岩波書店 / 2005 コロナウイルスの脅威に晒される昨今。人間活動が大きく制限されることで、世界中で空気や水が美しさを取り戻しているとも聞く。誰かにとっての世界の姿形は、他者にとっては全く違うものとして存在している。「生物から見た世界」でユクスキュルは、「環世界」という概念を用いて、生物の種の数だけ異なる世界が存在することを示した。私たちはこの本を通じて、他者が知覚している世界と、それに応答する行動に思いをはせ

          2_2「生物から見た世界」

          2_1『要塞都市LA』

          マイク・ディヴィス / 村山 敏勝 訳 / 青土社 / 2001年 最初に読んだのは1990年代末。拙著の『終わりの建築/始まりの建築』(INAX出版、2001年)や『戦争と建築』(晶文社、2003年)で触れ、『過防備都市』(中公新書ラクレ、2004年)でも影響を受けたが、2001年に邦訳されてからもう20年近くになるのか、と改めて驚いたのが、マイク・ディヴィスの『要塞都市LA』(青土社、2001年/増補版2008年)である。肉体労働を経て、大学で学んだ左翼系のアクティヴ

          2_1『要塞都市LA』

          1_5『同じ時のなかで』

          スーザン・ソンタグ / 木幡和枝訳 / NTT出版 / 2009年 https://amzn.to/2UjBjlA 2004年に逝去するまで人権や政治、ジェンダーやセクシャリティについて論じ、美的観念や写真に関する文章を数多く残した著者。生涯最後となったエッセイ集。都市や建築の分野に限らず、問題提起や職業選択の場面で相対する要素が増え、扱う領域も多層的であることが求められる今日、常に少数派からの視点でラディカル且つ明晰に、思考と批評を徹底して続けた姿勢に惹かれる。 ---

          1_5『同じ時のなかで』

          1_4『スモール・イズ・ビューティフルー人間中心の経済学ー』

          E・F・シューマッハー/ 小島 慶三, 酒井 懋訳 / 講談社 / 1986年 https://amzn.to/2UdQPj0 今から約50年に、経済学者シューマッハーによって書かれた本。タイトルからうかがい知れる通り、物質至上主義や科学技術の巨大信仰、豊かさの追求を続ける社会に、経済学の視点から警鐘を鳴らしたものだが、今読んでも色褪せない。現代社会が抱える根源的な課題は変わっていない。一つしかない地球と共にいかに私たちの活動を持続させていくのか、建築・都市に関わる立場から

          1_4『スモール・イズ・ビューティフルー人間中心の経済学ー』

          1_3『都市と建築のパブリックスペース』

          ヘルマン・ヘルツべルハー / 森島清太訳 / 鹿島出版会 / 1995年 https://amzn.to/2QAIHXC 今回のコロナウイルスによって都市に集まって住むことのリスクを改めて実感させられた。 一方で、テレワークなどテクノロジーを活用し人が集まらなくても物事を進められる部分があることにも気が付いた。そして、集まることが難しい今だからこそ、人と出会い場を共有することの貴重さを感じている方も多いのではないか。この本は私が学生時代に恩師・小野田先生から勧められて以来、

          1_3『都市と建築のパブリックスペース』

          1_2『建築をめざして』

          ル・コルビュジエ / 吉阪隆正訳 / 鹿島出版会 / 1967年 https://amzn.to/3dpfDMc 言わずと知れたコルビュジエの建築論。 この本が書かれた背景を『我々は人間なのか?/ビアトリス・コロミーナ』ではこのように分析している。「結核は、じめじめした都市で生まれる湿気による疾患であると考えられていた。(中略)近代建築の宣言活動は、結核にまつわる当時の迷信と病気への恐怖を中心に成り立っていた P.120」。結核やスペイン風邪といった病気への都市に住む人々の

          1_2『建築をめざして』

          1_1『息吹』

          テッド・チャン / 大森望訳 / 早川書房 / 2019年 https://amzn.to/2WLCI67 文句なしに当代最高のSF短編集。冒険活劇でもディストピアものでもない、透徹な思考実験でありながら、情感に満ちた詩的なSFが、今日でも成立するのだと知る。前作「あなたの人生の物語」のモチーフであった、世界はなぜ他の形でなくこの形なのか、そこに自由意志はありうるのか、が本作にも通底する問題意識となっている。近視眼的な政策判断が失敗し続けるのに辟易とさせられる時にこそ、射程

          1_1『息吹』