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写真やイラストを使ってくださった記事

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noteの海に放った写真やイラストたち。それぞれ新たな記事となってまた出会えた嬉しさを集めたマガジンです。使ってくださった皆様に、感謝を込めて。
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#小説

写真を使ってくださった記事を集めました

写真を撮るのが好きです。 もっと言うと、写真を撮るという行為によって得られる没入体験が好きです。 そんななので依然、自己満足に終始しています。 好きなら仕事にしてみるかなぁ、とぼんやり考えることもありますが、仕事となるとその先にお客様がいるわけで。 積極的に「誰かのためにこの写真のスキルを役立てたい!!」と思ったことは、実はあまりありません。 でも、noteでちょっと嬉しいことがありました。 *** すでにnoteクリエイターとして活動している皆さんにはおなじみ

本レビュー・『武田の金、毛利の銀』垣根涼介

noteで書くのは初めてかも ぶっくすぱの優です。 つい先日『武田の金、毛利の銀』を読んだのでレビューさせていただきます。最後まで読んでいただけると嬉しいです。 ※ネタバレを含みます。 出会い戦国武将で誰が一番好きかと問われたら、皆さんはなんて答えますか? 私は武田信玄です。 以前、新田次郎先生が書かれた『武田信玄』を読んでから武田信玄のファンになってしまいました。 そのため、今回書店に入ったとき、自然と目が惹かれました。 その日、私は本を買う予定ではなく、友人の

【読書】すみれ荘ファミリア/凪良ゆう

今回は、『汝、星のごとく』で有名な凪良ゆうさんの作品です。 人はみな様々な顔を持っています。そして、それはある人から見れば表で、別の人から見れば裏に見える。 本作は、すみれ荘という下宿の管理人とその住人や家族の周辺での人間模様が描かれています。 ですが、タイトルや表紙画のようにのほほんとしたストーリーではなく、少しミステリアスで表向きは良い人の裏の顔というか怖いくらいの心情が読んでいる読者に迫ってくるような作品です。 だんだん表に現れてくる真実にどきどきハラハラが止ま

毎日400字小説「木村一 七十五歳」

 東北の貧しい農村の生まれだった。しかし勉強はずば抜けてできたため、なんとしても進学させるべきという高校教師の奔走により、奨学金を得、生活費はアルバイトでまかなうことを条件に上京する。親の意向で医学部に進んだが、興味は持てず、大学では哲学書を読み漁った。出版社のアルバイトで知り合った別大学の先輩に影響を受け、学生運動に関わるようになる。大きな闘争で逮捕され、そのまま中退した。就職は出来ず、実家からは縁を切られ、学習塾の講師で生活をすることとなる。三十七歳のとき、自分の理想とす

一人暮らし+α その2

 深夜。アルバイトから帰宅して早々に、幸のタックルが腹部を襲った。何すんだこいつ。 「遅い」 「遅くなるって言っただろ。あと痛い」 「こんなに遅くなるなんて聞いてないわ。あんなに朝早く出ていって、夜もこんなに遅くなることなんてなかったじゃない」 「大学行ってからバイトだったんだからこれくらいの時間になるだろ普通」 「私は寂しいと死んじゃうのよ」 「座敷童子が死ぬって何だよ……。雪降るくらい寒いんだから玄関から先に進ませろよ、炬燵が俺を待ってんだよ」 「……私も待ってたのに」

一人暮らし+α

 久しぶりにバイトもない日曜日。起きて早々飛び込んできたのは、ひどく不満げな幸の顔だった。 「たまには構ってくれてもいいと思うの」 「……ちゃんと毎日構ってやってるじゃねえか…」 「いいえ。いいえ、そんなことないのよ。幸也はここのところ、明日も朝からバイトだとか大学の課題がどうだとか言って、ほとんどご飯食べて寝るだけの生活だったじゃない。私を部屋の隅に追いやって」 「追いやるも何もお前は隅っこ大好きっ子だろ」 「それはそれよ。話を逸らさないで」 「わかったわかった。話は聞くか

ワンルーム賃貸

この部屋、前の住人の方が自殺していましてね。 いえ、だからどうというわけではないんです。 ごく普通のお部屋ですよ。 今、部屋の空気が冷たくなったと感じたかもしれませんが、それは気のせいです。 人というのは感情が感覚に直結していますからね。 このことは法律で告知が義務付けられていましてね、 お家賃はお安くなっています。 お客様だけの特典です。 次の方は元のお家賃に戻ります。 帰り際、トイレのドアがカチリと閉まった。

【詩】春の放心

春の光は朦朧と どこか狂気を滲ませ漂う 赤子の瞳(め)の初めて見た 光の靄の記憶のように 小さな放心を満たして 春のゆりかごは揺れている #詩 #詩人

爆弾魔の防犯教室 「話はそれからだ…」と中年男は言った シーズン2 その21

 その後、尾行を撒くこと数回、前の車からドライブレコーダーで監視されてるから逃げるを繰り返し、糞平の家へ着いたのは午前10時過ぎだった。  俺はほぼ一晩中、まるでカーアクション映画の世界の中にいたようなものだったのだ。  車がジャンプしたり跳ねたりする度に天井に頭を打ち、スピンして目が回り、度重なる急発進急停車で首や腰はもちろんのこと、尻まで痛い。  もちろん、車酔いしている。  当分、車には乗りたくない…  現実にカーチェイスするほど他の車に追われていたのかと言えば、そ

 真綿荘の住人たち 著:島本理生

 北海道から東京の大学に合格し、上京する事になった大和君。三食食事付きの格安物件の真綿荘に住む事になった。真綿荘は江古田にある古いアパートだ。一階に画家の晴雨さんと小説家の綿貫さんが住んでいる。晴雨さんは綿貫さんの内縁の夫だ。  綿貫さんがこの真綿荘の主人である。料理の世話から洗濯まで寮母のように働いている。合間に執筆活動をしているようだ。他に住人は椿さんに鯨さん両方女性である。椿さんは高校生の八重子という女の子と付き合っている。所謂レズビアン的な趣向だ。鯨さんはなんと大和

【短編小説】 「フタツ氏の、じゃがいもと夢の時代」 (3400字)

 煮える頃だ。ふつふつと音で分かる。空の、水色と黄色の混ざった箇所だけ描き終わりたい。集中力を要する過程だった。もしかしたら、今回は勝負できるかもしれないという予感があった。一筆ごとに確信へと変わる。そうしたら、肉じゃがでもしようか。なんも要らないかと、笑う。自分を納得したかった。  母がここを去ってもうすぐ半年になる。忘れられない味を再び、思い出す。それでもう悲しくもならない。今はそんな気がする。季節は確かに巡った。母は僕の前に姿を現さなくなっただけで、まだどこかで呼吸す

欠落

 兄は几帳面な人だった。子どものころから、机はいつも整理整頓されていたし、学校のノートもとてもきれいに書かれていた。それも、別に必死になってそうしているわけでも、強迫的ななにかがあるような感じでもなく、ごく当たり前に振る舞うとそうなるのだというみたいに、ごく当たり前にそうしていた。同じ血を分けたはずのわたしにはとてもではないが理解できないことだった。  わたしはといえば、机の上はゴチャゴチャで、いつもなにかを失くして探していた。そんな子どもだった。  兄はそんなわたしの探しも

【短編小説】梅ジュース

日常は当たり前ではない。それを理解するのには若すぎた。 梅ジュースにまつわるある女の話。 「そういえばさっき中央館でアスパラ売っていたんだよね。買っていこうかな」  友人が鞄を探りながらなんともなしに呟いた。二人が通う大学は農業系の学部が入っていることもあり、時折構内で格安の野菜の販売がある。  そういや若草色の塊を見かけた気がする、と女はぼんやり思った。  値札と小銭をいれるアルミ缶に、真っ白な若い茎が無造作に詰め込まれたコンテナ。人通りが多いため料金を払わない不届き者

 短編【味覚障害】小説

「ちょっと、痩せたんじゃない?」 佐和子は義理の弟、義光の少しやつれた顔を見て言った。 体調を崩したという連絡があり、義理の姉である佐和子が義光のアパートまで様子を見にきたのだ。 佐和子がわざわざ義光の様子を見に行ったのは、義光が独り者であるという理由もあるが、もう一つ、ちょっとした不安があったからだ。 その不安とは義光がこのアパートに十日前に引っ越しをしてきたという事。 とにかく家賃の安いアパートだった。 義光の兄で佐和子の夫である義行が「事故物件なんじゃないのか?」