見出し画像

【自己紹介】16-4 簡単に教えてもらえると思うなよ 4(Tちゃんのこと・後編)

今日もお読みくださってありがとうございます!
Tちゃん話、今日で最後です!


大好きなTちゃんは困ったちゃん(続き)

困った・その3 「それは病院を受診して!」事件

Tちゃんは仕事熱心でまっすぐ仕事に向き合った結果、壁にぶち当たったり燃え尽きたりすることの多い人でした。でも、くらたはそうやってもがいて生きている彼女を友達として応援したいと思っていたのです。
くらたもTちゃんも、互いに仕事の愚痴を言ったり聞いたりしていました。会って話すこともあれば、メールでやりとりすることもありました。

弊社はクソ組織なので、積極的に環境に働きかけないとどこまででも都合よく使役されてしまいます。それを防ぐためにくらたが実践して成功してきた方法のうち、Tちゃんの役に立てそうなものを彼女にたくさん伝えました。同じ組織で働いているので、Tちゃんの躓くところはくらたがすでに躓いたところであることが多かったのです。

Tちゃんから来たメールはほかの何をおいても優先して対応しました。自分の時間を差し置いても優先して返信しました。Tちゃんに伝わるように言葉を選ぶのに毎回とても苦慮しました。毎回とても時間をかけました。

でも、Tちゃんは全くそれを実行しませんでした。
もちろんくらたが勝手にやっていることなので、くらたの言ったとおりにしなくても彼女が苦しくなくなればそれでいいのだけれど、そのほかの手立てを打っている様子もありませんでした。
そうして、いつまでたっても同じ状況をくらたに嘆いていました。

あまりにも彼女が行動しないので、これってもしかして彼女から見たら、「彼氏に愚痴を聞いてもらいたくて話しているのに、アドバイスが返ってくる」案件なのかなあ、とさえ思っていました。
ところが、そのうち、彼女から送られてくる文面はどんどん深刻化していきました。

ついにあるとき「出張でホームに立っていたときに、このまま電車に飛び込めば楽になれるのかなとか思っちゃった」というメールが送られてきました。

それはもう、専門医案件。
冷たく聞こえるかもしれないけれど、実際くらたなんかに連絡してどうにかなる問題ではありません。くらたにTちゃんに寄り添いたいという気持ちがなかったわけではない。だからこれまでくらたが考えうることはすべて伝えてきた。でも、くらたがTちゃんの代わりにTちゃんの人生を生きることはできないのです。自分を癒すために専門医に行くという行動は自分で取ってほしい。

Tちゃんにはすぐ「大丈夫?」というメールとともに、それほどまでに思いつめるのならば医者に行ったほうがよいとも伝えました。
くらたは数年前から、自分のケアのためにカウンセリングを定期的に受けていたので、精神科医の敷居はほかの人より低いのかもしれません。

でも結局、その行動も彼女はとりませんでした。

困った・その4 決定打ミュージカル事件

Tちゃんが求めるケアを、くらたはたぶん提供できていない。でも、Tちゃんが求めるものを提供することは、たぶんくらたにはできない……そんなこんなで、Tちゃんを扱い兼ねるようになってきていたころのこと。

くらたは係長になったばかりで、自分の仕事で手いっぱいになっていました。そんな中、仕事の段取りを超がんばって休暇を取って、ひとりでミュージカルを観に行った日がありました。年末の忙しい時期で午後休とるの超大変だったけど、絶対休むと決めて周囲にも理解を求めて段取って、ギリギリ劇場に駆け込みました。
すばらしい歌声を全身で浴びて、美しい舞台装置やダンサーさんの身体表現による魔法に驚嘆して、心の澱が洗い流された。ああすばらしい!
そうだ、Tちゃんもミュージカル好きだからピンバッチをお土産にしよう!るんるん♪

と、スマホの電源を入れたときでした。

Tちゃんから、いつものとおりの愚痴メールが入っていました。

ほんとにいつもどおりの、いつもいつも、同じような内容。
わかる、わかるよ、どれだけ努力しても環境がひどすぎたらずーっと苦しい目に遭い続けるよね、その中で自分ができることなんてほとんどないことも多い。うちの組織は年度途中の異動もないから、その環境から逃げられるタイミングもほとんどない。わかる、わかるんだけど……!

だからくらた、「来年度の異動の確率を上げるためには、夏前の〇〇〇で×××をするんだよ」って伝えたよね?それをやらなかったのはTちゃんじゃん……。
それでいて、異動と全く関係ない人事課の研修のアンケートに「組織や人事に関する意見(文句)を書いてやった!少しは伝わったかな?」と、くらたに報告してきたけど……
……それ本気で言ってんの?
そんなの研修担当に「ウチにいわれても担当外だし」って鼻で笑われて終了だよ!意味のないところにエネルギー投入してんじゃないよ、Tちゃんのバカバカバカ!

くらたの心の糸がぷつんと切れました。

くらたが死ぬ気で段取りつけて高い金払って発散したところに、愚痴るばかりでなんの行動もしないお前が、何をしたァ‼‼

『ワンピース』(尾田栄一郎/集英社)11巻37ページ
魚人のアーロンが怒ってルフィを投げ飛ばすシーン

そのときはもう我慢できなくなって、Tちゃんにメールで伝えました。
こちらも怒っているので冷静にわかりやすい言葉を選ぶことができず、なかなか意図が正確に伝わらず、もどかしく長いやりとりを強いられました。
やっぱり「IQが高い人は低い人に分かるように説明できるはず」というよりは「言葉を尽くしても低い人にはなかなか伝わらない」というほうが実感に近いです。こういう伝わらなさって、高校・大学の友達や主治医とかカウンセラー、メンターの先輩には感じたことがありません。

ともあれ、くらたはここで全てに倦んでしまいました。
Tちゃんに「連絡を取るのをやめる」と宣言してそのとおり実行しました。

そのときのTちゃんの反応から察するに、Tちゃんにとってはすべて寝耳に水の出来事だったようです。そうだよね、くらたは何も言ってこなかったもんね……それは確かに申し訳なかった。

連絡を絶ったあと、Tちゃんが遠方まで観に行くほど好きだと言っていた某ミュージカルが近隣の劇場でかかっていたので観に行きました。「怪物は誰か」を鋭く問いかける、醜くて悲しくて美しい物語でした。
この物語を愛する人は、きっと心の美しい人だとくらたは思いました。

時が経つにつれて冷静になってゆき、Tちゃんにたくさんの尊敬すべき美点があることを思い出しました。けれど、再び彼女に理解してもらうためにあれこれと時間をかけて思案する気になれず、数年が経ち、今日に至ります。
今では、Tちゃんが好きだと言っていたミュージカルをくらたも大好きになり、近隣の劇場でかかるたびに必ず観に行っています。
でも、Tちゃんには連絡できていません。

ここに初めて一連のことをまとめました。
昨日も書いたとおり、かぐや姫課長のことや、ナマズ先輩のことをあれこれと書くのは心が痛まないけれど、Tちゃんのことはちょっと咎めるものがあります。勝手にここで書いて喪に服した気になるのは、Tちゃんに悪い気がします。でも書く。

今日もお読みくださってありがとうございました!
Tちゃんの話はここで終わりますが、もう少しだけ「簡単に教えてもらえると思うなよ」論を続けさせてください!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?