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#132【劇評・賛】ミュージカル『この世界の片隅に』

今日もお読みくださってありがとうございます!

今日は、先日観てきた新作ミュージカル『この世界の片隅に』について書きます。


日生劇場がすき

3月に『カムフロムアウェイ』を観てから、日生劇場好きなんです。

昨年60周年を迎えた日生劇場。

海の中を連想させる曲線的な内装、タイル張りの天井、最後列でもよく見える舞台。

生き物みたいな曲線が優美な天井
劇場入り口のタイル。キラキラと美しい。

それから、赤絨毯に優美な螺旋階段のホワイエの優美な内装。

白シャツに黒ベスト、蝶タイのレトロなスタッフの制服に、丁寧で洗練された接客。
はぁー、好き。

(2024年5月28日追記:手元のメモからスタッフさんのスケッチが出てきたので掲載!)

『この世界の片隅に』感想

原作の、物語としての素晴らしさ

まず第一に感じたのは、原作の物語としての素晴らしさです。
まず、70年以上前の人々を解像度高く描き出し、戦争によって影響を受ける人々の日常や、原爆の恐ろしさをよりリアルに感じさせます。
また、周作とすず、水原とすず、周作とリン、リンとすず、主要な登場人物の関係性。
これを考えれば、最初のアニメ映画でリンのエピソードを割愛したのは、やむを得ない資金上の事情とはいえ悪手だったと思います。のちに加えてよかった。

みんな知ってる話

この作品は原作マンガ、アニメ映画と、話題になり、広く愛されました。そのため、今ミュージカルなの?という感じがありましたが、多くの人が知っている物語だからこそのトリッキーな構成になっていました。

ミュージカルは、時限爆弾にあい、すずが姪っ子と右手を失った直後から回想の形で始まります。周作や妹との対話の中で過去を回想しながら話が進んでいきます。中盤で回想が物語の中の「現在」に追いつき、そこからは時間を追っていく構成でした。

今書いていて気が付きましたが、くらたも大好きなかの名作ゲーム「ファイナルファンタジーX」と同じ構成ですね。

役者の身体性を通して初めてリアリティをもって理解できること

原作マンガやアニメは、飄々としたというか、淡々としたところが魅力だと思うのですが、ミュージカルはどうしてもそこに豊かな感情表現やウェットさが発生します。

そうしたミュージカルの特性や、そこに実在感のある人間が介在することによって、わかりやすさ、共感しやすさがましていると思いました。
特に、おもに周作の心情にまつわる表現がとてもわかりやすくなっていました。
すずが北条家に嫁いだ夜の傘と干し柿のシーンは形骸化しつつある古くからの慣習に血を通わせようとする心遣いがリアリティをもって感じられました。
戻ってきた水原とすずのシーンでも、周作の、家長代理としての責任感、兵隊に対する思い、水原への嫉妬、葛藤、すずへの愛など、いろんな思いが実在しそうなものとして感じられました。

以下、自分のメモから

印象的な歌詞、セリフ

歌詞「この世界の片隅にあなたがいたこと」
リンのセリフ
「売られてもどうにか生きとる。
子どもができんくらいでそう簡単に人ひとりの居場所がのうなったりせんよ。」

音楽的要素について

さすがアンジェラ・アキさん、合唱がよき。
シンプルにわかりやすい、感情誘導的な曲(←言葉が不適切だが褒めている)

子役の歌がすばらしい。
大人になってから結婚してカタがついたはずなのに抱いた嫉妬心や純粋な恋心など、子役が歌うからこそスッと入ってくるものがあった。

ただ、役柄的に海宝直人の王子ボイスが聞ける場面が少なかった、もっと聞きたい。

また、二幕の始まりは一幕の終わりと同じ場面からだったので、え、またそれ?って感じだった。二幕の始まりはガラッと雰囲気を変えて、が王道では?掘り出しもんみーつけた、からでよかったと思う。

すず……世俗的価値観に落とされたマイペース娘

他人からの評価二種
「ぼーっとしてる子じゃ」↔︎「すずちゃんはやさしいねぇ」(すいかとお着物)

すずのセリフ
「優しいなんて言われるの初めてだったから、世界がやさしく霞んで見えた

周作の姉・径子

セリフ
「自分で決めたことじゃけえふしあわせではない」
歌詞「自由の色、自分の色、愛の色(自由の色は自分の色であり、それは愛の色でもあった、という意味の歌詞)」

径子はモガでおしゃれ、自由恋愛で結婚……姉ほど自由であった人もいなかった……姉の世代はまだ自由があったのか?

姉のシーンの山(姉がすずに「ここにいていい」というシーン)よかった。
わかりやすかった。
「あんたの世話くらいどうもない」は歌詞にはあったが、セリフでダメ押ししてほしかった。
原作で大変よいセリフだと思ってたのに、アニメで割愛されてしまったの残念……

すずと周作とリンと水原

花見 リンと周作の物語の決着
ラストシーン リンも水原も笑顔

敗戦

原作の敗戦のシーンには最初驚いた。
最後の一個まで奪ってくれないならなぜあれもこれも持っていったのか、という怒り。
ミュージカル版は、すずの慟哭はよかったが、山がもっとあってもよかった。

双葉館の焼け跡 
リンは死んだか逃げ延びたかわからない。でも麻の葉の着物を見て、すずのなかでも決着がつく演出(原作にはない)。
なぜ、アイスクリームを知っている妓女がスイカを描いてもらいたがったか。

全部文章にできずすみませんー!


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