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世間知らずの転職活動・フリー編 その14

プロジェクトも調査期間に入り、落ち着いた時間を過ごせるようになっていたのだが、私の契約で問題勃発した。飯田専務のおかげで、騙されていたことが分かったが、業界の多重請負構造に憤りを感じた1日だった。

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プロジェクトの立て直し

新しいPMの林田さんのチームが急ピッチで調査を進めていた。赤井さんが言うには、今までTシステム中心に進んでいた設計をFシステムの林田さんが中心に設計を見直すことになったそうだ。

お客様のK社へのプロジェクト立て直し策として、今までの体制を見直し、Tシステム中心で進んでいたプロジェクトを、Fシステムが巻き取り、仕様を全て見直して、年内にリリースすることを提案したらしい。

そのため、Tシステムは今月、あと約1ヶ月足らずでプロジェクトから撤退することになるらしい。

年齢が近かったTシステムの若手の面々は、大川さんと私のところに来て、ほとんどが月末で退職する、と言う挨拶に来た。ある人は、普通の人でも知っているメーカーへ転職が決まっていたりと、今回のプロジェクトが炎上している中、しっかりと転職活動をしていたようだ。

そういえば、あの元気のいい薩田さんはどうするんだろう?と考えていたら、ちょうどやってきて、「町田さんが遊軍で打ち合わせをしたいから、午後会議室に集まるように言っている。」と伝えに来た。

薩田さんは、Tシステムの仕事よりも、町田さんの仕事の方が多いらしい。
しかし、そのフットワークの良さは、目を見張るものがある。薩田さんは、このプロジェクトが始まる1ヶ月ほど前にTシステムへ入社したとばかりだった。

未経験で、いきなりこんなプロジェクトだから、相当嫌になっているかと思いきや、できること、頼まれたことを全力でやるだけだ、言っていた。明るく、嫌な顔をせず、できることを素直に対応しているその姿は、私だけでなく、他のエンジニアたちも認める部分も多かった。

落ち着いた日々

我々は、といえば、林田さんが言っていたとおり落ち着いていた。林田チームの依頼を元に、SEチームが仕様を各担当者へ説明することになっていた。だから、プログラマーの我々は、SEである赤井さんたちの依頼を元に、プログラムの調査をしている、という状況であった。

要件定義自体はFシステムが中心になって、Tシステムの立花さんたちと一緒に進めたらしい。だから、そこは信頼のおける仕様が多いということらしい。しかし、基本設計以降は、Tシステム中心に、SEたちで作り上げたため、仕様に漏れがあるのではないか?ということで、そこを中心に調査が進められていた。

ここで、サブシステムごとに仕様をしっかり見直して、不足している部分を補うことができれば、確かにプロジェクトの立て直しは可能だ。ただ、赤井さんが言っていた年内リリースとなると、あと2ヶ月しかない。

果たして2ヶ月で、リリースまでもっていけるのか?と考えると、それはそれで、忙しい日々が思い出されてしまう。ただ、そもそも、リリース今月だったからな・・・と納期に間に合わなかったことに責任を感じつつ、赤井さんの依頼の仕事に手をつけるのであった。

そんな調査を進めていると、昨日の件について大川さんが話しかけてきた。

大川:「そういえば、飯田専務から今朝電話があって、佐藤さんに伝えて欲しいと言うことだったんだけど。」

私:『あ、そうなんだ?なになに?』

大川:「なんか、昨日話に出ていたZ社の川原社長っていたじゃん?その川原社長に佐藤さんの携帯の番号を教えておいたって。おそらく川原社長から連絡がいくからって、言っていたよ。」

営業の上田さんがクビになったため、Z社の川原社長が直接私と話したい、ということらしい。本当に上田さんはクビになったんだと思いながら、大川さんとタバコを吸いに席をたったのだった。

上機嫌

タバコ部屋に行ったら、昨日、超不機嫌だった角川さんが、JCLリーダー小森さんと一緒にいた。経費サブシステムの2人だから一緒にいるのは不思議ではないが、武闘家の角川さん、おちゃらけた小森さんのコンビは、凸凹コンビで見ていて飽きない。

しかし、そこにいた角川さんは、昨日の林田チームに対する不満タラタラの不機嫌な状況から一転、ニコニコ上機嫌な空気を発散している。

私:『角川さん、なんか、機嫌がよさそうじゃないですか?何かいいことあったんですか?』

角川:「あ、分かる?」

と、ニコニコと答えた。

大川:「分かりますよー。すごい上機嫌オーラが周囲にに発散されてますよ?」

角川:「そう?いやー、林田さんはとってもいい人っす。」

大川・私:「え?」

昨日あんなに不満たらたら、やってられんと言っていた人が何を言ってんだか?と思いながら、話に耳を傾けた。

角川:「なんと、来週から、うちから2人エンジニア追加されるっす。昨日、仕様のヒアリングのときに林田さんと会話して、どうやら人がこれから必要になるからってことで、提案したらOKをもらったんっす。」

大川・私:「えっ!?」

と、2度驚いたが、角川さんはこんな武闘家で小森さんを足蹴にするような人だけど、小さな会社の取締りということ。やはり仕事をもらえるとそれはそれで嬉しいらしい。

小森さんも「え?」と驚きながら、自分が経費サブシステムのメンバーから外されるのではないか?と、角川さんにしつこく自分の進退を聞いては、また足蹴にされていた。

リーダー・・・JCLもやってほしいだけど。。。

JCLリーダー?

席に戻ると同時に、林田さんから声がかかり、打ち合わせをすることになった。

林田:「佐藤さんお疲れ様です。JCLのリーダーといういことで、どのような仕様になっているか?状況を共有して欲しいです。」

私:『え?』

今日は、不意打ちで驚くことが多い日だ。と思いながら答えた。

私:『いえ、JCLのリーダーは私ではないですよ。JCLリーダーは小森さんです。』

林田:「え?みんなに聞いたら、JCLのことは佐藤さんに聞けば良いと言っていたから。リーダーだと思ってたけど、違うのかな?」

私:『そうですね。リーダーではないのですが。。。私も入場してまだ2週間ちょっとなのですが、入場した当時からH社の汎用機を使ったことがある人が私と大川さんということもあり、JCLの修正は中心に対応させていただきました。』

林田:「そうなんですね。それは失礼しまいた。実際リーダーはだれかはどうでも良いのです。一番知っている人に話を聞きたいので、教えていただけますか?」

「わかりました。」と答え、この2週間の経緯と、JCLの状況を報告した。全体的にJCLを作れる人が少なく、作れる人も他のプログラムに手を奪われ、なかなか、JCLまで手が回っていないこと。

その結果、ジョブの全体的な流れまでチェックできず、実際に実行してもプログラムと処理の流れの整合性がとりきれていない、と、仕様の不具合が含まれたまま試験が進められていることなど、この2週間JCLを作ってきて感じたことを伝えたのであった。

土日の都合

午後になると、薩田さんが町田遊軍チームの打ち合わせが始まる、と、大川さんと私を呼びにきた。

遊軍チームと言えども、チームらしい動きはしておらず、町田さんからそれぞれ指示を受けて動いていただけだから、集まるのは初めてだ。何が始まるのか?と恐る恐る会議室へ向かった。

会議室には、既に小森JCLリーダー、請求サブシステムの香川さん、そして、今まであまり話したことのない支払サブシステムも村井さんが席に座っていた。その3人に加え、大川さん、薩田さん、そして、私の3人が町田遊軍チームのメンバーだった。

実際はKシステムの若手メンバーがあと3人ほどいたのだが、今月末会社を退職するということで、呼ばれなかったらしい。

少し遅れて、町田さんが会議室へ入ってきた。

町田:「あ、みんな集まってくれてありがとう。初めてだね、みんなで集まるのは。そんな中、申し訳ないんだけど、みんなにお願いがあるんだけど。」

会議室にいたみんな「え?」と思いながら、少し緊張した雰囲気で町田さんの言葉に慎重に耳を傾けた。

町田:「今週末、土日、予定は空いてるかな?」

なぜ「土日の予定?」と聞かれるのだ?と平穏だった今週に、急に不安が押し寄せてきた。

つづく

※この物語は経験をベースにしたセミフィクションです。

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