マガジンのカバー画像

思考整理の文章置き場

28
日記ではない長文のエッセイや、もぐら会「書くことコース」の原稿などをまとめています。
運営しているクリエイター

#小説

わからない言語で繰り広げられる朗読。意味を見出さなくてもいい、その音を聞くと、わかることがあるから。

わからない言語で繰り広げられる朗読。意味を見出さなくてもいい、その音を聞くと、わかることがあるから。

静かな感動が全身にわきあがり、魂がふるえる。

その瞬間に聞こえてくるのは、都市部で交わされる忙しいコミュニケーションのための言語ではなく、昔からひっそりと続いていた伝統儀式のあいさつのようでありながら、真実の断片がぽつりぽつりと蛍のような光りを放つ、おだやかで暖かくてやさしい言の葉。ずっとずっと前から憧れていた景色はここにあった、そう確信せずにはいられないほどイタリア語が圧倒的だと感じたのは、コ

もっとみる
オルガ・トカルチュク著「昼の家、夜の家」を泣きながら読む。

オルガ・トカルチュク著「昼の家、夜の家」を泣きながら読む。

小説を読む意味ってなんだろう。

それはとても非生産的で効率が悪くてむしろ時間の無駄だと思われるかもしれない。ある人はこう言っていた。「小説は他人の空想。そんなもの限られた自分の時間で読む必要はない」と。でも、出会うべき一冊に出会ってしまったなら彼・彼女の人生にとってその作品と出会えた価値はかけがえがなくて、物語を通じて得た経験は生産的だし、効率的だし、むしろ誰よりも時間を有効に使ったと感じられる

もっとみる