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ちゃんと感動してますか?〜帝国ホテル〜

芸術とスイーツは密で蜜な関係であることは、私の糖分80%の人生で散々味わってきた。

それは世界の一部であり。

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一輪の花であり。

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レモンであり。

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スイカであり。

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時計であり。

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絵画であった。

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芸術とは何か。

「芸術とは爆発だ!」とかなんとか誰かが言っていた。
それが正解かどうかは置いといて、とりあえず。

芸術は、誰かの心を揺さぶる何かである。

それは、きっと1つの正解だと思う。
少なくとも、私の中の真実なのだから。

であるならば。

「芸術×スイーツ」というより、「芸術=スイーツ」という式の方が正しいのかもしれないけれど。
一方でやっぱり掛け算で表現したいスイーツに出会うことがある。


ハーモニーしか聴くことができなくなった少女の物語を読んだ。
治療法は、ハーモニーに感動すること。

しかし音楽には単音になる瞬間というのがあって、それが聴こえない歪な音楽に感動などできるはずがない。

それでも結局、彼女はハーモニーに救われ、ハーモニーを愛した。

ソプラノ、アルト、テノール、バス。
それぞれが自分の旋律に全力を込めて、ぶつかり合い、共鳴して、単音では決して実現し得ない感動を響かせる。

そんな音楽を想像した時、私はちらりとスイーツのことを想った。

チョコレートだけでも美味しいけれど、そこにバナナという別の種類の甘さが加わって、ベリーソースという酸味を添え、ナッツという食感を入れ、可愛らしい形にアレンジして、世界観に相応しいお皿に盛り付けて。

そういう色んな要素が集まって、素敵なスイーツができるのだと。
その要素には「えっ、こんなところから!?」というようなビックリがあっていい。ある方が面白い。

そして、「○○×スイーツ」とわざわざ示すことで、「俺様はただの単なるひとつの芸術『スイーツ』とは一味も二味も違うんだぜい!」とアピールするのだ。

そんなこんなで、本日は「花×音楽×スイーツ」という贅沢極まりない感動物語。

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帝国ホテル
パークサイドダイナー

帝国ホテルなんて、庶民が足を踏み入れたらいけない気がするけれど、大丈夫、レストランだけなら案外行けちゃう。
少し贅沢ではあるけれど、年に数回は行きたくなってしまう大好きなお店だ。スタッフの方の接客の良さなど、本当に毎度、凄いと思う。「舌を巻く」とはこのことだ。

そんな場所で、ちょっとヤバい感じの限定スイーツが登場したとの情報を入手。...何?平日限定???
よし、仕事は半休にしよう。

~花と音楽~2品で楽しむデザート

1品目「蜂蜜とゆずのパイ」

今回のコースの為にペストリーシェフが考案した、蜂蜜とゆずのパイ。粉糖で飾ったプレートには、サックスを演奏している絵が描かれています。

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サックスを!!演奏している!!!!
分かる、見えるよ。
今にも音が聴こえてきそうだ。

運んできてくれた時、なんとシェフ自らが登場。
目の前で香り高い柚子を削ってくれるというサービス。

このような取り組みは初だそうで、お会計の時に「いかがでしたか?」とちょっとソワソワした様子で聞かれた。というか会計の時以外にも皿を下げる時とか、何度か感想を聞かれた。
あの優秀過ぎる完璧超人的に思えていた帝国ホテルのスタッフでも、今回のイベントは結構なチャレンジでドキドキものだったのだろう。
ふふふ、なんだか心が和らぐ。

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サクッと気持ちよく砕けた瞬間に、弾けるように溶け消える、ココナッツのメレンゲ。
サクサクの軽やかなパイには、溢れんばかりにたっぷりの蜂蜜&ゆずクリーム。キレキレの鮮やかな酸味に、思わず泣きそうになる。

あぁ、これと出会う為に、私は日常を頑張ったのかな。
そんな風に思える程、ゆっくりで一瞬の非日常。
パッと弾けて、スッと消えゆく。

それはあまりにも滑らかで。
クリーム、という表現は正しくもあり、でもピッタリしっくりとこない。
飲める。
そう、飲み物とさえ思えるほどに、喉にストンと酸味を伝える滑らかさだった。

凄かった。
とんでもスイーツに出会った時ほど「凄い」とか「ヤバい」とかいう小学生でも言える感想が真っ先に出てきて、本当に嫌になる。
でもまあ、凄くヤバい美味しいんだから、それでいいや。

2皿目「グラスデザート」

コンクールで披露した作品の中からグラスデザートをご用意いたします。サクサクとしたクッキーや苺とライムのジェラートで、見た目も食感も楽しい一品です。

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それはどこぞの親指姫なのかナンナノカ...。
花の上に、妖精がおる......。

この燃えるような花びらのお皿とテーマの「音楽」に相応しいスプーンは、このイベントの為に用意したのか?
グラスを横に置くなんて発想、どこから生まれた???

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そっと覗く。

ああぁぁぁ。
なんだろうね、この心の内側から沸き立つワクワク、ドキドキ、キラキラ。

クリスマスに、ツリーの下に置いてあるプレゼントの紐を解く瞬間のときめきを思い出す。

真っ赤なジェラートは、苺のジャムでライムを包み込んだ2層構造。
ひとつのアイスと見せかけて、もう2つのスイーツの融合体。
なにこれ、何だこれ、大丈夫???
美味し過ぎて大丈夫????
美味しい罪で捕まらない?????
駄目だ、一口ごとに予想を飛び越えてくる感動に、テンパってしまう。

柚子を潜ませたミルク寒天をすくうと、うわあぁ...これで終わりじゃない、さらに下にベリーのジャム層が存在する。

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綺麗なエディブルフラワーに隠れて、ベリーの薄すぎるサクサクやザクザクと楽しい音を奏でるクッキーやクランブル。

こういう形状だからあえて「グラスデザート」という表記なのかもしれないけれど、その構造はとても「パフェ」的である。
...なんて冷静に分析する自分がいる一方で、

うめええぇぇぇぇ!
やべえぇぇぇ!!!?
と語彙力皆無にひたすら野生的に叫び狂っている自分もいる。

落ちつけてくれたのは、ペアリングドリンクの存在。
今は緊急事態宣言で、ノンアルね。

「ホワイトティースパークリング」

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華やかな林檎の香りは、飛び抜ける程に高揚した気持ちを優しく落ち着けてくれた。
深呼吸。
スンスン。
香りもたくさん楽しんで。

五感全部を使って。
素敵なスイーツとの邂逅を、いつかの私もどこかの感覚でふと思い出せるように、感動を響かせる。

**

大人になると、「日常」にだって沢山あるはずの感動に気が付きにくくなる。
自分の感情をどこかに置き忘れたように感じて、時折すごく不安になる。

だからこそ、あえて「非日常」に飛び込んで、見ないようにしたって見えてしまう感情の塊をしっかりと抱きとめて。
自分はちゃんと感動できるんだ、それを知ることが大切なんじゃないかなと思う。

最近、何かに感動しましたか?
全ての感覚に、そして人間の根源的な欲望に結びつく食べ物は、きっと感動の最強アイテムのひとつなんじゃないかなと信じてる。


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