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秋が深まって、好きも深まって〜小笠原伯爵邸〜

本当は行けない予定の諦めのパフェだった。

小笠原伯爵邸。
これまでもわりと直近で何度もnoteで取り上げた話題だし、今後もそうなる予定だから、もうそろそろ「小笠原伯爵邸めっちゃ素敵なお店!」という説明から入るのはやめよう。あれ…?今までもそんな説明してたっけ?

と…とにかく魅力溢れる大好きなお店。

お店側もパフェ愛が溢れているのか、突然3回分怒涛の予約を開始した。

無花果と葡萄。2度は仕事を調整したりして、無事に行くことが叶った。

……が、3度目は無理だ。
1~2週間の土日のみという短すぎる期間。
丁度がっつり、地元から家族が会いに来てくれる期間と重なった。

私ももう大人だ。
秋田と東京。働きながら、そう何度も会える距離ではない。
生きているうちに、あとどれだけ一緒に過ごせる時があるのだろう、ということは否が応でも考えてしまう。

20代の私は周囲から「まだ早いよ」と言われたりするけれど、そうだろうか。
親族の中には母の歳の頃には亡くなってしまった人もわりと多いのだけれど、それでも「早い」と言えるのだろうか。

亡くなるその瞬間に一緒に居られないことは、酷い話、もう覚悟の上。
だからこそ、僅かかもしれない共に過ごせる時間は、大切にしなければならない。大切に、したい。

そんな時に「食べたいパフェがあるから、この日は1人で留守番しててね!」はないだろう。

だから、諦めた。

けれど以前に食べたパフェたちの話を自慢げに電話で伝えていると、「行きたいんでしょ?一緒に行こう」とそう、素晴らしい提案をしてくれた。

うん、行きたい。


体調が不安定な母はギリギリまで行けるか分からなかったから、私のパフェだけ予約をして、直前に大丈夫そうなら電話をして1人分追加してもらう。
ケーキの取り置きと一緒に。

何度も行ってるから知っていた。
1人でもきっと2人席への案内だから、多分人数を1人から2人へ変えたところで、お店への迷惑はそう大きくないんじゃなかろうか、と。
もし御手間をかけたのなら、ごめんなさい。


中山栗と太秋柿のパフェ

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もう、もう何度も何度も画像で写真を見てきたのに、いざ目の前にすると眩暈がするくらい美しくてドキドキする。

トップの、華やかというよりはシンプルなのに、目が離せないこの幻惑的なビジュアルは、なんだ。
ハロウィンパフェではないはずだけれど、魔女の帽子みたい。
円を描いて並ぶフレッシュの角切り柿は、魔女の儀式を実行しているようじゃないか。

このホワイトチョコが、食べてみるとなかなか驚き多くて。
下の薄いところ、中央の分厚いところと先端の尖ったところ。
それぞれ舌から伝わる刺激が異なる。溶け方が違う。
面白い。

小さなキューブ状の柿は、シャクッと気持ちの良い歯応えを楽しませてくれる。淡泊めなスッキリとした味わいで、パフェの導入として凄く良い。
熟々の甘い味わいを強制的に楽しませてくれる柿も勿論好きなのだけれど、「君の味わいはどこ?」と探すくらいが良いのだ。パフェと対峙するための集中力が高くなるってものだから。

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そして、柿の下の茶色い土台。
これ、なんだと思う?
普通に考えたら、サクサクのパイ生地よ?

…しかし、なんと栗のペーストだという。
マーブル模様というか、大理石のような色の混合。いよいよ魔女儀式的な、神秘性が増す。

何のスイーツだったかな?それを作る過程の状態を平らに潰し……とか、なにか凄まじい説明をしてくれたのだけれど、もう脳が追いつかない。「凄い」の一言として心に響いた。

味わいとしては、栗きんとんが1番近いだろうか。

これで、パフェの主役となる柿と栗が登場した。

その後に純白のクリームに入っていくのだけれど、どうせパッと見では見えないのにフワフワの粉雪のごとく粉糖をふりかけるこだわり具合、ヤバくない?好きすぎる。

基本的に栗は甘い。特別な甘みをつけなくても、甘い。だから、その後にやってくる栗の甘さに控えて、クリーム自体に甘さは少なく、それを粉糖がそっと補う。

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さて、柿や栗の甘いアイスやソルベテに、クリーム。うんうん、冒頭の印象づけ、加えてパフェの心臓部とも言えるひんやりのパーツで登場させることで、主役としてのポジションが確定する気がする。

いくらメニュー名に入っているからと言って、自動的に主役になれるわけではない。

食べ手がその存在を意識して認めた時に初めて、それは主役たりえるのだと思う。

で。中層で要の食感パーツ。メレンゲ。
これが凄かった。
何が凄かったってそりゃあ、美味しすぎたことだよ。美味しいが過ぎた……。

カカオにアーモンド、加えてロングペッパーというものが使われて。メレンゲは、普通これほど複雑な味わいにはならない、はずだ。カカオの甘い苦味、ペッパーの癖になる刺激というかなんというか。

これが見た目以上にたくさん入っていて、食べても食べても尽きない。それが、食べても食べても全然飽きないのだ。どういうこっちゃ。

サクッ、ホロッ、シュワリ……
魔法みたいに消える。あれっ、たった今、口の中で遊んでいたはずなのに…消えた……。
主役を引き立てる存在が、美味し過ぎた。

自分たちも負けないぞ、と言わんばかりに、今度は固形で登場、栗と柿。

生の柿は、最初と同じで角切りなのだけれど、あれ…今度はラムがきいている???

ラム酒。段々と味わいを大人に。
スポンジに、クリームに、ラム酒をきかせている。

うっとり、手を止めてその魅惑的な味わいに集中して。パフェの中に散らばる栗を感じて、柿を感じて。バニラやペッパーの香りを存分に感じて。

そうして、ハッとする。

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バニラとラム酒のクリームでまろやかに、いつの間にか一瞬目を離した柿の世界。

レモンソースと柿のゼリーの強めな酸味で、濃い旨味で、ハッと引き戻された。

最初から最後まで、大筋、主役はブレず、様々な形で飽きずに楽しませてくれる。他のパーツも美味しく、時々よそ見をしたくなる。けれど、軸が太く強く通っている。そういう、素晴らしいパフェだ。

こんな偉そうに書いているけれど、私にはどうすればそんなパフェが作れるのか、まったく分からない。凄すぎる。

ペアリングドリンクは、残念ながらカクテルは売り切れとなっていたけれど、アルコール無しの方ではいただけた。

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柿の葉に置いての提供。
これはこれは、嬉しすぎでは???

柿のドリンクだって、今までの人生で飲んだことがあっただろうか。柿は好きだけれど、ゴクゴクと飲む飲料となると、濃くて甘ったるく飲みにくいのではと少し不安になる。無駄な不安だった。

オレンジジュースよりもさらに絡みつくような甘さのカドを減らしたくらいに、スッキリと飲みやすい。そしてしっかり、柿の味わいが染み渡る。

シナモン…?ほんのり感じるスパイス感が、サラリとした甘さに奥域を加える。美味しい。


小笠原伯爵邸で、私はパフェしかいただいたことがなかった。しかし今回は、急遽追加してもらった母が一緒だったから、念願のケーキをいただくことが叶った。

ロブレ

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美しすぎないか??

ちょっと上から見てよ。

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幾千もの星が輝く夜空みたいだ。

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その味わいは、もう、もう。
中心に「美味しい」があって、その周りに100個くらい「好き」の2文字をくっつけたような。

チョコレートは好きですか?
好き!!
じゃあもう、このケーキは大好きの塊に違いない。

こういう上に薄いチョコプレートが乗ったケーキってさ、このプレートがなかなか割れなくて、結構食べるのが難しいんだよ。
それが、フォークで簡単に、割りたい大きさにパキリと割れる。

あとはもう、どれがどの味とか分からない。全てが一体で、サラリと流れるように、ギュッと凝縮して、上手く言葉に出来ないのだけれど、何重にも甘すぎない甘さが折り重なって、このケーキが出来ている。

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母は好き嫌いが多過ぎて、食べられるタイプのケーキは限られる。だから、この系のケーキはそこそこ食べている。そして私は比較的なんでも絶賛してしまうけれど、母は美味しくないものはハッキリとそう言う。

そんな母が、「これは美味しい、相当美味しいケーキだよ」と絶賛していたので、マジで美味しいのだ。全チョコレート好きに推したい。

最近、SNSへのハッシュタグ投稿でプチフィナンシェプレゼント!みたいなのやっているんだよね。
私は後でゆっくりと振り返りながら文章を考えて投稿したい、という気持ちが強くてこの系のキャンペーンはスルーすることが多いのだけれど。

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前回一度もらったら、めっっっちゃ美味しかったんだよ。だから急いで投稿しちゃった。

これ写真だと分かりにくいけど「このサイズで作れるの???」ってくらいミニサイズで。
つまり、ほぼあの美味しい端っこのカリッとした部分で構成されているのだ。その焼き目の芳ばしさからジュワリと広がる上質な甘いバターの香り。最高が過ぎる。


前回、「以前も来てくれました?」みたいなことを言われて超嬉しかったのだけれど。
今回は「いつもありがとうございます」的なことを丁寧に言ってくださって。

予約による顧客情報があったから、というのもあるかもしれないけれど、いやそれでも嬉しい。
特に母と一緒だったから、「どうだこんな素敵なお店でこんなことを言ってもらえるんだぞ」とドヤ顔である。


先に会計をしているお客さんが私以上に常連さんらしく、シェフと次のパフェについて話しているのが聞こえてしまった。

これは…予約を逃さないようにチェックを欠かさないようにしなければ。


わりと最近好きになったお店。
行くたびに、好きが深まっていくのが分かる。

「好きだなあ、大好きだなあ」
そう深く明確に思える瞬間があることは、凄く大切で幸せで。でも、生き急いで過ごしていると、意外と忘れがちなことかもしれない。

「好き」を感じるために、きっとまた。






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