くろろきん/国連職員

国連で平和構築やってます / 15年くらいアフリカと中東の紛争地暮らし 。 紛争地での…

くろろきん/国連職員

国連で平和構築やってます / 15年くらいアフリカと中東の紛争地暮らし 。 紛争地での仕事・生活の悲喜こもごもを中心に、時々国際協力を志す人の役に立てるようなことを書いていきます。 戦争のある日常/国際協力

最近の記事

平和構築の仕事ー治安への恐怖について

今回日本での休暇中に3つの大学でゲストスピーカーとして平和構築の仕事の話とか国連でのキャリアの話をした。 そのうち二つは地方の大学で国際協力について学ぶ授業だったのでとても関心をもって授業を聞いてくれた。 事後アンケートで質問を回答することになっているので、久しぶりにNoteを再開してみた。 3つの大学で多かった質問が「命の危険を感じたことはあったか?」という質問だった。また、「国連の職員として紛争地域で働き始めるときに「怖い」という感情はなかったのでしょうか」という質問も

    • 【戦争のある日常】トンガでも活躍している衛星携帯

      トンガで火山が噴火し、電話やインターネット回線をつないでいる海底ケーブルが切れてしまい、国外と連絡が遮断されてしまったというニュースを見たが、そこで衛星携帯が活躍しているようである。 この衛星携帯、僕もアフリカでフィールドに出張に行くときや任地が地方だった時は必ず衛星携帯を持って行った。基本的には電波が弱く、上に障害物がない状態で話さないといけないし、プリペイド式だったので色々準備が面倒なのだが、いざというときは本当に役に立つ。 一度出張の際、移動のためにボートで川下りを

      • 【日本帰国】空港検疫所の水際対策手続きを素早く終わらせるコツ

        年末に日本に帰国した。 コロナ禍に入ってもう10回近く日本に帰国しているのでかなり入国時の水際対策の対策?ができるようになったのでここで各手続きを速く突破するための準備というかコツを少し共有しようと思う。 体験者はわかると思うけど、降機から抗原検査結果を待つ場所に到達するまで、ほとんど障害物競走なのだ。とにかくチェックポイントごとにくねくねと歩かされる。各チェックポイントで手間取ると時間がかかってしまうので、サクサク行けるようにポイントを追って説明する。 ちなみに入国時

        • 【研究機関と政策(国際開発分野)】イギリスと日本の違い

          ここのところ大学院についての話を書いてきた。 今回は質問されたわけではないのだが、前回の話とリンクして大学院とか研究機関と政策がリンクしているかという話。 開発や国際協力関係の話であるが、日本とイギリスではだいぶアプローチが違う。 日本だと地域研究とか、国に興味を持って研究を始める人が多かったりするが、イギリスだと理論構築から始める。開発援助にもこの傾向はあって、イギリスの開発援助機関は最初に理論構築を行い、その後そのモデルを使って開発支援を行っていく傾向にある。 例えば、

        平和構築の仕事ー治安への恐怖について

          【海外大学院での学び】イギリスと日本でこんなに違う?

          学生さんの質問に答えるシリーズ 前回に続いて大学院についての質問 海外の大学での学びについて詳しく教えていただきたいです。 僕の留学経験は日本の大学院時代にタイに交換留学をしたのと、一度就職してからイギリスの大学院に行った2回の経験があるが、修士をとったのはイギリスだけなので、イギリスの大学院での学びについて書こうと思う。 イギリスの大学院では国際開発関連の研究をしたのだが、日本でも似たようなコースだったのにアプローチが違ったので面白かった。具体的に言うと • 理論先行

          【海外大学院での学び】イギリスと日本でこんなに違う?

          【大学院と留学】日本とイギリスでの経験談

          しばらく忙しくて、久しぶりの更新。学生さんへの回答シリーズ続けます。 大学院に行くのは、元々決めていたのですか? 社会人を経てから、イギリスの大学に行かれたそうですが、院試の勉強も同時にされていたということでしょうか? 忙しい人生を送られてきたと思うのですが、どうやって時間管理をされているのですか?コツなどあれば教えてください。 大学院や、海外の大学に向けて、学費はどうやって準備されたのですか?親からも支援を貰いましたか? 今日の質問は大学院に関して。 僕は大学を出た後

          【大学院と留学】日本とイギリスでの経験談

          【国連を辞めたいと思った時】酷い上司はキャリアの10%理論

          質問に回答するシリーズ。もうすでに講演から時間が経ってしまったので、見ている学生さんがいるかは不明だけど(遅くなってすいません…) 「今の仕事を辞めたくなったことはありますか?」 ストレートな質問だが、僕も仕事を辞めたくなったことはある。一番辞めたかったのは、上司が大変な人だった時だ。紛争国で働く場合、生活環境や職場の環境などは良くない場合もある(特にアフリカの場合)。体力的にはハードだが、そこは意外と何とかなるもので、一番重要なのはやはり同僚や上司など一緒に働く人との関

          【国連を辞めたいと思った時】酷い上司はキャリアの10%理論

          【国連で働く人々】出産と子育てとキャリア

          アンケート回答シリーズ(質問が10以上あるのでまだまだ続くと思います) 「国際機関で働いている女性はどれほどいるのか、またそういった女性は育児や家庭を持ちながらキャリアを両立できているのか知りたいです。個人的に国際機関で働きたい思いもありますが、そういった面で躊躇してしまう自分がおり非常に気になる点なのでお聞きしたいです。」 前回のエントリーで日本人スタッフの特徴を書くといったけど、一くくりにするのも誤解を招くのでやめて、その代わりこの質問に対して僕の友人の例などを挙げて

          【国連で働く人々】出産と子育てとキャリア

          【国連で働く人々】多様性と放任主義

          講演を聞いてくれた学生さんの質問に回答するシリーズ 「国連で働かれている方には、どのような特徴を持っている方が多いですか?」 国連と一言で言っても事務局、各機関の本部(NYやジュネーブ等)、地域事務所、国事務所とあり、人道、開発、(平和維持や政治)ミッションでも違うので、なかなか難しいのだが、色々と傾向はある。僕が知っているのが主に紛争地の国事務所なので、そこの人たちを前提に話す。 まずアフリカの国事務所レベルでは、最近はインターナショナルスタッフでもアフリカ人が増えて

          【国連で働く人々】多様性と放任主義

          【批判的思考の身につけ方】自分の当たり前を壊されよう

          学生さんからの質問への回答シリーズ。最後が重要なのでできたら最後まで読んでほしい。 「批判的考察について、その能力を養うために読書が挙げられると思いますが、どのように養いましたか。」 講演の中で国際協力分野で働くには批判的思考(クリティカルシンキング)を身につける必要があると言ったので、それに対する質問であるが、個人的意見では読書は必要だが十分ではないと思う。読書は映像や音声よりも自分のペースで考えながら読み進めていくので時間がかかる分、記憶に残りやすいし、考える力もつく

          【批判的思考の身につけ方】自分の当たり前を壊されよう

          【国連での仕事を選んだきっかけ(おまけ)】「きっかけ」のせいでテレビデビューがお預けに

          昨日のエントリー「国連での仕事を選んだきっかけ」を書いていてふと思い出したエピソードがある。 アフリカのへき地で働いていた時に、知り合いを通じてとあるテレビ局から連絡がきた。当時流行っていた「こんなところに日本人が?」系の番組の人からだった。 もともと自分からテレビに出たい!という方ではないのだけど、まあせっかっくアフリカのことや仕事のことなど知ってもらえたらうれしい気持ちもあったので、出演を前提に何度か詳細にわたるメールのやり取りを担当の人とした。 しかしそれでも情報

          【国連での仕事を選んだきっかけ(おまけ)】「きっかけ」のせいでテレビデビューがお預けに

          【国連での仕事を選んだきっかけ】どこで働くかより、何をするか

          知人を通じて、日本の大学で国際関係学部の授業にオンラインでの講演を頼まれ、自分の仕事の話や、国連や国際協力の分野で働くためのアドバイス的なことも話した。オンラインだと反応が見づらいのでためになったか不安はあるがアンケートや先生からの反応だと満足してもらえたようだ。 さすが国際関係学部の学生さんだけあって鋭い質問が多く、時間の関係で講演中に拾えなかった質問がいくつかあって、Noteで回答すると伝えてあったので、見てくれるかはわからないが、何回かに分けて回答していく。 「今の

          【国連での仕事を選んだきっかけ】どこで働くかより、何をするか

          【戦争のある日常】ヴァカンスは紛争地で?

          今朝、休暇に行っていたドイツ人の同僚が戻ってきたので休暇楽しかった?って聞いたら、最悪よーって返ってきた。どうやらレバノンに行ったらしく、そこで銃撃戦が始まってしまったらしい 紛争地で働いている国連のスタッフは、その危険度などに合わせて数週間に1回、1週間国から外に出て休みがもらえることになっている。家族なども任地には連れてこれないし、普段の精神的な負担が大きいからだ。 そんな休暇を使ってレバノンの首都ベイルートに友人を訪ねて遊びに行ったら、銃撃戦が始まってしまい、日中外

          【戦争のある日常】ヴァカンスは紛争地で?

          【戦争のある日常】ムハンマドの誕生日は緑色に

          今日事務所から宿舎に帰る途中、車体が完全に緑に塗られた車を何台も見かけたので、何で?って聞いたら、明日がイスラム教の創始者、ムハンマドの誕生日だからと運転手が教えてくれた。 確かに、「明日ムハンマドの誕生日で、集会が各地で開かれるため外出は危ないからテレワークしなさい」というお達しが来ていたので認識はしていた。ちなみに国の祝日ではあるようだが、国連は祝日として指定していないので休みではない。 運転手は続ける。 「お店のシャッターなんかも緑にしてるところもあるし、緑の旗も

          【戦争のある日常】ムハンマドの誕生日は緑色に

          【戦争のある日常】燃料をめぐるチキンレース 敗者は国民

          オフィスは国連スタッフ用の宿舎とは別のところにあるので、僕らは毎日防弾車に乗って宿舎からオフィスに通っている。 その通り道、国営のガソリンスタンドがあるのだが、毎朝数百台という信じられない数の車が列をなしている。ガソリンを買うのにも一日並んで、それでも手に入らない時も多いという。 そのガソリンスタンドを過ぎて、別のガソリンスタンドの前を通りかかると、なんとガラガラなのである。そこでガソリンを入れている車もたまに見かけるのだが。 なぜこんな奇妙なことが起きるのか? 僕が

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          【池袋暴走事故】収監決定にて思ったこと -加害者のナラティブ-

          突然だけど、今日は気になっていた日本のお話。 池袋暴走事故で禁錮刑が確定した飯塚幸三氏が収監され、遺族がコメントを発表した このニュース、被害者の父であり夫である松永さんが積極的に状況を発信しており、飯塚氏が自分の過失を認めないこともあり、またすぐに逮捕されなかったなど、”上級国民”として扱われた(かどうかには賛否あるが)ことから世間の注目を集めた。 僕は日本にいなかったこともありあまり世論には詳しくないが、松永さんの記者会見はいつも心打たれるものがあり、Youtubeで

          【池袋暴走事故】収監決定にて思ったこと -加害者のナラティブ-