ちょっと不幸がちょうどいいといった詩人がいた
noteにはすてきな詩人がたくさんいる。
私はその言葉に切り取り方に、いつも息をのんでいる。
ああ、こう描くとこんなに短い言葉で世界が広がるのかって、いつも驚く。そして楽しむ。
でも違う感じの詩を読んでいた時があった。
友人に詩人がいた時。
もう何十年もあっていないのだけど、時折り思い出す。
一つ年上のその女性は、独特の空気感をまとっていた。
ショートカットで、ひょうひょうとしていて、からっとした声で笑った。
青や、黒や、白のゆったりした服が似合っていた。
にこやかに笑った後で、ちらりと毒のある言葉を吐いた。
時々会って話したのだけど、あまり距離が縮まらなかった。
会うと楽しい。
おしゃべりも弾む。
でも、どこか、私と彼女の間には透明なクッション、みたいなものが挟まっていた。
ななさん、と呼ぼう。
ある時ななさんは言った。
「私ね、あんまり幸福になりたくないの。そうすると詩が書けなくなっちゃう気がして」
「そうなの?」
「人によると思うけど、私はそう」
だから私たちの間のクッションは除かれないのかと思った。
でもちがった。
どこか、違うところを見ていた。
そして続けた。
「私ね、あんまり幸せな恋愛をしたくないんだ」
「どうして?」
「なんかね、そこにとどまりたくないんだよね」
幸せな恋愛をすると、動けなくなってしまうのだろうか。
私は肯定も否定もできなくて、考え込んだ。
私はその時、それほど好きでもない相手と付き合っていて、そんな自分がいやだった。幸せな恋愛をしたかった。
ななさんは、いった。
「私は詩人でいたいの」
詩集もエッセイ集も出していた。
認められ始めていた。
だからなんだろうな、と思い、ちょっとうらやましかった。
私も彼女も仕事が忙しくなった。
近所に住んでいたけれど、私が引っ越した。
そして会わなくなってしまった。
しばらくななさんの詩も文も読んでいない。
私はあの時、好きじゃない人と付き合っていて、好きではない仕事をしていた。
自分があまり好きではない時期だった。
「少し不幸でいい」なんていうななさんがかっこよく見えて、いじけた。
私は臆面もなく幸せになりたかった。
そんな自分が幼く思えた。
今、noteの詩人たちの詩を読んで、思う。
ちょっと不幸でもいいけど、幸せでもいいじゃない。
詩は書ける。
幸せな詩人もいる。
幸せじゃない時もある。
どっちもあっていい。
きっとななさんは、自分をそういう場に置きたかったのだ。
一人で詩を書きたくて。
自分を追い詰めたくて。
そういう時はある。
ななさんのちょっとブルーな詩を、読みたくなってしまった。
でも私は今も、臆面もなく幸せになりたい。
詩を読んで、幸せになるひとときも、好き。
noteには好きな詩と詩人がいて。
すてきな詩人が多くてあげきれない。
あきやまやすこさんのこの詩とか、読むと幸せ。
ゼロさんは詩というよりエッセイなんだけど、詩でもあるんだな。
kesun4さんは詩もいいし、エッセイもいいし、コメントが鋭い。
詩人はエッセイもいいし、コメントも素敵。言葉の選び方が違う気がする。
もっとたくさん、すてきな詩人たちがいるので、あなたのお気に入りを探してくださいね。そしてよかったら、教えて。
詩を日常的に読める、幸せ。
ありがとう。
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