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悲しみで寄り添ってくれた友へ

いつも目がうるんでいた。
不安で。
つらくて。

もしかしたら、無事に生まれないかもしれない。


妊娠を告げられてから、楽しみにしていた。
「産休に入ったら、マタニティーヨガをしよう。
平日に友だちとお茶したいな」

生まれる前のひと時を、満喫しようと。

仕事にも、育児にも追われない、わずかな時間。
ゆとりある日々。

でも、その日は訪れなかった。


妊娠中から不安定で、切迫流産を繰り返していた。
「切迫流産」とは、流産の可能性が高い状態で。
おなかが張ったり、出血があること。

安定期に入ってからの方が、危うかった。

医師の指示で、何度か休んだ。

そしてそのまま切迫早産という診断を繰り返し、入院。

「生まれなかったらどうしよう・・・」

すでに高齢の私に、もう一度という奇跡は起こるのだろうか?
いや、何よりも、今おなかにいるこの子を産みたい。

おなかの子よりも、実は私の命の方が危険な状態にあったのだけど。
そんなことは考えないで、子どものことばかり。

私が長年、ハードワークをしてきたせいだろうか。
体に負担をかけてきたから。
自分を責めて、苦い涙を流していた。

そんなとき、何通かメールが届いた。

「お元気ですか? 
仕事のことは心配しないでください」
続けて、
「実は私、いってませんでしたが、流産したことがあります。
悲しかったけれど、2年後にまた妊娠して出産したんです。
でも、ちづこさんの赤ちゃんは元気に生まれる気がしています。
私の勘を信じてください」

年の近い、後輩から。

「休めていますか?
私も若いころ、流産したことがあります。つらかったけれど、今もその子のことは忘れていません。
今のふたりの子どもがいても。
私も、私の子も見守っています。
どうかかわいい赤ちゃんを産んでくださいね」

入院前に初めて一緒に仕事をした、ベテランのコーディネーターさんから。

「流産するこの多くは、染色体異常などで育つことのできない子です。
私はそれで2回流産しましたが、今は元気な子どもに恵まれています。
そこまでおなかにいる子なら、大丈夫。
無事に生まれますよ!」

友人に紹介してもらった、高齢出産された通訳の方。

「私は結婚直後に妊娠して、流産して。その後7年間妊娠しなかったので、子どものいない人生を考えていたところに、妊娠しました。
あきらめないでくださいね。同級生の子を産みましょうね」

すてきな服を作るデザイナーさんから。
彼女は二人目を妊娠中で、報告し合っていた。

そのあとも、いただいたメールには悲しい体験と、乗り越えた強さと温かさがあった。

こんなにたくさんの友が、ひっそりと悲しみを胸に秘めていた。

寄り添ってくれた、友。

私よりも、つらい思いをしたのに。

私の涙は、変わった。
苦い涙から。

温かい、涙に。
感謝の、涙に。

私の産休は、すべて入院生活となった。

個人病院から救急車で、救急病院に搬送された。
そして予定日より1か月早く、出産。

いくつかの危機を乗り越えて。

生まれた。

奇跡の子。

寄り添ってくれた、
見守ってくれた、
友がいたから

どれほど、心強かったか。

力になったか。

出産祝いでいただいたタオルで息子を包みながら、
私の心が包まれていた。

いただいたベビー服を着せながら、
私の心がまとっていた。

温かさを。


私も包みたい。

寄り添いたい。

悲しいことはない方がいい。

でも少しでも力になれるなら。

大丈夫、きっと無事に生まれるよ。
元気でかわいい赤ちゃんが。

赤ちゃんだけではなくて。

あなたの命が。

生き返るように。

私が包んでもらったように、あなたを包めたら。

今も忘れない、ありがとうを込めて。

何人かの友人の話を聞き、一緒に泣いた。

できたら。
もう少し、近くに行かせて。

包みたい。
寄り添いたい。


イラストは出雲千代さんからお借りしました。ありがとうございます💕

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