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私の原風景ってなんだろう、どこだろう

「北海道か、かわいそうだね」といわれたことがある。

私は小学校時代を北海道で過ごした。
のんびり、伸び伸び、とてもいい時間だった。

でも、作家の早坂暁さんにお目にかかった時にいわれたのだ。
「北海道か。じゃあ吹雪の荒涼たる風景だろう、君の原風景は」と。

ショックを受けた。

でも違う気が、した。
目をつむってみた。

それまで自分の原風景を考えたことがなかった。
やはり浮かぶのは、北海道の景色だった。

吹雪もあったし、凍った地面に滑りながら登校した日もある。

でも、目に浮かんだのは、広大な原野と、咲き誇るキスゲの花だった。

20210623キスゲ

そう告げると、
「おお、それはいいね」とほほ笑んでくださった。
ホッとした。

そうだ、私の中に広がる原点みたいな風景は、キスゲの花が咲く勇払原野なんだ。
初めて自分で知って、不思議で新鮮だった。

原風景を見つけるきっかけをくださった早坂暁さんは、『夢千代日記』『天下御免』などを書かれた小説家で、脚本家だ(4年前にお亡くなりになっています)。

当時は渋谷の公園通りのホテルに住んでいて、たまたま同行した人に紹介されて、話をする機会を得た。

5分ほどの時間に、なぜ原風景の話になったのか、もう覚えてはいないけれど。

私は早坂暁さんの原風景を聞きそびれてしまった。

調べてみたら、愛媛・松山のご出身だった。
その自伝的青春小説『ダウンタウン・ヒーローズ』が大胆で、痛快で。

主人公の青年は娼婦に惚れて、自分も刺青を彫る。
その娼婦・イチ子がいじらしく、美しく、哀しい。その印象がつよく残っている。

読んで、早坂暁さんの原風景は松山の、町か温泉か。お遍路さんの通る辺りだったのか、と想像してみる。
もはや聞くことはかなわないけれど。


まるで違う景色を人はみな、自分の心の中に持っている。
そのことを教えてくれた。

兄弟がいても、その原風景はそれぞれ違っているかもしれない。

私とて、勇払原野に行ったのは数えるほどしかない。
なぜそこの風景が、さあっと鮮やかに浮かぶのか、わからない。

地平線まで続く花咲き乱れる原野。

梅雨のない北海道の、あの景色をまた眺めたくなった。
私の原風景を。


※写真はhaluchobinさんからお借りした写真で、勇払原野ではありません。
haluchobinさん、ありがとうございます。


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