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焼き芋という名の小さな火遊びがたき火だった

手の中のアチアチが、うれしい。

いい香りが立ち昇ってくる。

焼き芋。

屋台で買って、息子と半分こした。

ねっとりした、濃い山吹色の、さつまいも。

5歳くらいの息子は、外の屋台で買ったこと、外で食べられること、大好きなさつまいもなこと・・・うれしいことがいっぱいで、笑顔もいっぱい。

ベンチでほおばる、熱いくらいの、温かさ。

20211101焼き芋


思い出すのは、私が子どものころ。

10歳くらいだったろうか。

北海道で、焚火たきびをして、焼き芋を作った。

庭の一隅に、焚火の場所があって。
父は時どき、不用品を燃やしていた、

秋には、そこにさつまいもを入れた。

はじめはそのまま入れて、真っ黒になった。
生焼けで、ゴリゴリした。

アルミホイルに包むこと。

奥の方に入れること。

じっくり焼くこと。

少しずつ学んで。


私の楽しみは、焼きいもだけではなかった。

焚火の炎。


透明な黄色、みかん色、朱色、緋色、赤、時おりの青。

チラチラと、ヒラヒラと、サァ~ッと、

姿を変え、表情を変える。
気ままに、自在に動き続ける。

一瞬も、静まらない。

いつまでも、見ていた。

消えないように、枯れ枝を入れて。

顔や、胸や、しゃがんだ膝が熱くなってくる。

でも、背中を向ける気にはならない。

チラチラ、誘うように、笑うように。


はぜた火花が、手にかかった。

熱い!

でも、離れなかった。


父は、遠くから見ていたのだろうか。

姉は、あきて部屋に入ったのだろうか。

なぜか、ひとりで見続けた記憶がある。

20211101焚火


できた焼きいも。

皮がアルミホイルにくっついて、はがしにくかった。

半分に割ると、勢いよく湯気が上がって、熱かった。

ぽっくり甘い。

今のような、ねっとりとした強い甘さはなかったけれど、ほくほくとして。

皮にくっついたところが香ばしくて。

満たされた。


でも。

おぼえているのは、炎の、魅力。


危険も熱さも、体で知って。

でもあらがえない、炎。

太古の記憶なのだろうか?

体の芯も、熱くなるような。

焼きいもを見ると、食べると、ふっとよみがえる。


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キャンプファイヤーでも、アウトドアでもない、日常の焚火を思い出す。

東京では、できないけれど。


※イラストはyukkoさんからお借りしました。ありがとうございます。

ありがとう花火と宝石


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