青山のおしゃれママ健在を見て、少し元気になった
口紅を何か月も引いていない。
私はあまり顔色がよくないので、メークでは口紅が結構ポイントになる。赤い口紅も好き。ぱっと顔色がよくなる。
でもマスクは汚れるし、だれも見ないし、「必要がない」。口紅の売り上げが7割以上落ちたという。
そうだ、ZOOM会議の時と、ZOOM飲み会の時、自粛期間が終わって友人を呼んだ時、口紅を付けたな。
お化粧自体もあまりしなくなった。ただでさえ、ものぐさであまりしないのにどんどん薄くなる。これは手抜き以外の何物でもない。
「マスクの時はアイメークでキメル！」などという記事を見ると「えらい！」と思う。「がんばれ！」と応援したくなる。でもそこにのれない私。
おしゃれをしてお出かけという機会もない。
3月以降、意識しておしゃれをしたのは数えるほどだ。
自粛期間開けに女友だちと飲んだ時。
女友だちとランチしたとき。
息子と美術館に行った時。これは息子のためではなくて、新しく買ったスカートを着ていくところがなかったから。
そう。コロナになってから新しい服を買ったんだった。
友人のデザイナーさんがデパートに出店をしたときに、会いに行った。おしゃべりをして、友人の大好きなテイストの服を見た。あまり買う気はなかったんだけどとても素敵で、試着してみたらとてもよくて、ギターの模様の入った白いスカートを買った。それに合わせて黒いTシャツも買った。
久しぶりにうきうきして、気持ちが明るくなって、鏡の前でくるりと回った。
でもこれをいつ着るの？ という思いがよぎった。
わからない。でも買わないのはなんだかいや。よくわからないけれど、負けた気がする。
このスカートをはいて楽しく出かける日が来ることを信じることが、とても大事な気がした。
そんなわけで贅沢をしてしまった。
でも、デザイナーの友人も困ってはいた。出店が停止になったり、アパレル自体が危機的状況。ちょびっと「支援だ」と思うと、お金を使う言い訳になった。でも実はぜんぜんそうではなくて、そのスカートが気に入って、着たいから買ったんだけど。
久しぶりに華やいだ気持ちになって、袋を大事に持ち帰った。
その次の「おでかけ」が息子との美術館だった。国立近代美術館の「ピーター・ドイグ展」。息子もよく付き合ってくれた。
とても美しくて、幻想的で、恐ろしいところもあって深くて、「そうだ、私はピーター・ドイグに敬意を表しておしゃれしたんだ」とまた言い訳した。なんでおしゃれするのに自分に言い訳するんだろうと思いながら。
しばらくしてから、青山に行った。乳腺症の再検査のためで（乳がんの疑いもあるわけで）、少しどんよりした気分だった。おしゃれしたかどうかもあまりよく覚えていない。予約が取れたのが夕方で、せっかく久しぶりの青山だからと少し早めに行ってカフェに入った。
カフェオレとスイーツ。
落ち着いた空間とかわいいスイーツにうれしくなって、ほっと溜息。
少し先の席で子どもが騒いでいた。2歳くらいの男の子で、一生懸命何かを訴えていて、若いお母さんは周りを気にしていた。
私にも息子が小さいときに同じよなことがあった。焦るし、周りの目が気になるし。だから、にっこりして「気にしないで」という合図を送った。マスク姿だからどれくらい通じたかわからないが、お母さんはこちらに会釈をしてくれて、お子さんに向きあっていた。
ママはおしゃれなワンピース姿で、かかとの高いサンダルを履いていた。
がんばっているなあ、と感心した。私は息子が小さいときはかかとの高い靴は履けなかった。いつ走って追いかけることになるかわからなかったから。もともと楽な靴が好きだったせいもある。
だから、お母さんになってもちゃんとかかとの高い靴を履いている女性を尊敬する。
そして青山には必ずとってもおしゃれなママがいるのだ。青山ではベビーカーを押すママたちがみんな着飾っている（ことが多い）。
そのおしゃれママたちは一生懸命なのだと思う。
自分の時間がない、好きな服も着られない、おしゃれもできない、出かけるのも大変。子どもはかわいい。でもいつも時間に追われて、どうしていいかわからないことも多くて、自分の好きなことができなくて、泣きたい気持ちにしょっちゅうなる。
たまにはおしゃれして青山に行きたい！
ドレスを見て、おしゃれな街を歩いて、カフェに入りたい！
気持ちはよ～くわかる。
ただ私が子連れで青山に行ったときは、自分のおしゃれまでいきつけなかった。適当な服で、絵本専門店のクレヨンハウスに行ったっけ。
だからおしゃれママたちはがんばっているなあと思うし、心の中でエールを送っている。
そんなママが今も青山にいる。いてくれて、ほっとした。女性のおしゃれ心はみんなを明るくするよね。街も明るくなるよね。
青山のおしゃれママたち、健在。それは私を元気にしてくれた。
少し気分がよくなって病院で検査をしたら、「問題ありません」と言われてものすごくほっとした。
おしゃれな街が遠くならないように。おしゃれをしたい気持ちが遠くならないように。
何もなくても、たまには気分だけでもおしゃれになろう。
今度リモートワークの日は口紅をひいてみよう…か。
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