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好きだったから恥ずかしくて逃げていた、私

「こんな暗い子だと思わなかった」

そういわれてショックだったのは、私がそのとき好きな男子の言葉だったから。

中学3年の文化祭の集まりで、7,8人でクラスメイトの家に集まっていた。

その日、私は仲がいい(と思っていた)級友のウソを知って動揺していたのだ。毎日、一緒に帰り、立ち止まって1時間も立ち話をしていた友人。

他愛ないおしゃべりが多かったけれど、家族のことなど悩みを相談されて、真剣に答えていた。
父親の不在、妹のわがまま・・・。
でも、その大半は嘘で、家族構成まででたらめだった。
父親は普通に家にいて、妹は存在していなかった。

何重にもショックを受けた。

なぜそんな嘘をつくのか、わからなかった。
のちに、彼女は日常的に誰にでもウソをついていたことを知った。そういう性癖だったのか、何かつらいことがあったのか、その後接点を持たなかったので、わからない。

その嘘に一生懸命に悩んで応えていた自分。そのバカらしさ。

親友だと思っていた自分の目のなさ。
まったく見抜けなかった情けなさ。

昼間に別のクラスメイトから「ねえ、こんなこと言われていない? 私も同じことをされていて」と声をかけられたのだ。
すぐには信じられず、その友人のところへ行ってさりげなく聞いてみたら
「何いっているの? 私、そんなこといったっけ?」

それまで私に話していた自分の言葉を、すべてなかったことにされたのだ。

動揺したまま、集まりに出て
「もうだめだ~」みたいなことをつぶやいていたら、

「暗い子」といわれて、またショック。

その男子、Ⅿ君は頭が良くてどこかシニカルで、ちょっと斜に構えていた。そんなところが好きで。
勉強ができるのではなくて、頭がいい感じ。
先生へのひとこと返しもおもしろくて、ちょっとしゃれていた。

彼も私に好意を持っていたという。その場で「いいなと思っていたのに」
といったあとで、
「こんな暗いと思わなかったなあ」だって!

タイミング、悪っ!

文化祭は盛り上がって終了したんだけど・・・。

その後もⅯ君とはつかず離れず。
話もするが、接近もしなかった。

この距離感はずっと続き、卒業式でもうまくアルバムにサインももらえなかった。ほかの男の子には書いてもらったのに。
私の方が、一歩引いてしまったままで。

20210606中学生女子

その後、近所で会ってもうまく話せなかった。

私が意識して、なんだか、恥ずかしくなっちゃうのだ。
目を見て話すのが。
私の方が、シニカルになっちゃって。
別に、どちらでもいいわ、みたいな変な態度をとってしまう。

私を見かけて自転車で通りすぎた彼が、わざわざ戻ってきてくれたのに、
「暇な人ね」なんていっちゃって。
本当に、いやなヤツだった、私。

今思い出すと、「ごめんなさい!」「恥ずかしい」って叫びたくなってしまう。

何で構えちゃったんだろう。

意識、しすぎたんだろう、な。
本当に好きだった、から。

好きっていう気持ちを自分で受け止めきれなくて。

身をよじってしまうような、恥ずかしさに包まれて、どうしていいか、わからなくて。

素直、という言葉を知らなかった。

その後も接点はあるような、ないような。


何十年もたって、同窓会で再会した。
ぜんぜん変わっていなかった。
何度かミニ同窓会でも会って、話して。

Ⅿ君はアカデミックな場で活躍していた。

今度は普通に話せて、ちょっとまぶしい思いをした。
彼もそんな感じだった。どこか似ているのか、な?

そのあとで縁があって、小さなパーティーに誘われた。ちょっとわくわくして、大人の友人になれたらいいなって心がふわりと浮いた。

でも誘ってくれた彼の方が忙しくなって、予定はなくなった。

結局、距離感は縮まらない。

だから、なつかしいのかな、今も。

男友だち、なんだけど、友だち未満、みたいな。

一度のデートもしていないけれど、私には甘酸っぱい思い出。
こうやって書いても、恥ずかしくて赤面してしまう。
不器用な、私。

あれから少しは成長した・・・の、かな。

それから10年以上たって、ようやく私から初めてデートに誘えたよ。
違う人を、だけど。
あなたはその頃もう結婚していたね、きっと。

社会人になってから出会った人。
殻を破れた、かな。
その相手が、今の夫。
遅かったけれど、間に合った、みたい。

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なつかしい、恥ずかしい思い出です。
たぬきの親子さんのおかげで思い出しました。
ありがとうございます!


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