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「ワニワニパニックのタイトルは凄い」という話から連想するナムコゲームのタイトル考~「音楽熱想」鳥越回より

音楽制作会社である株式会社ハートカンパニーのvoicy放送「音楽熱想」で、同社スタッフの鳥越さんがご自身の放送回にて「ワニワニパニック」のタイトルをリスペクトする放送をしておられました。

家にあったやつを引っ張り出してきた(笑)

「音楽熱想」鳥越回より~「ワニワニパニック」のタイトルは凄い

内容を番組から一部引用します。

商品名を付ける会議ってどういう風に行なわれてるんだろうなって。自分が別にそういう風な会議に出たわけではないんですけれども、商品名を付ける会議ってどんな感じなんだろうって思ったんです。
それを思ったきっかけっていうのが…えー皆さんゲームセンターに行かれたことありますか?ゲームセンターにいろんなゲーム置かれてありますけど、そのゲームセンターにあるゲームの中で、まぁたぶん一番皆様が一度はやったことあるんじゃないかなってゲームがひとつありまして。それはですね、「ワニワニパニック」です。ご存知ですか?「ワニワニパニック」。

このゲームに「ワニワニパニック」と付けた人って凄いな!という風に最近思ったんです。
まず「ワニワニパニック」っていう字面。
「ワニ」が2回並んでる。
「ワニパニック」でもいいんじゃね?って思うんですけど、「ワニワニパニック」って2回続けることによってどことなく出てくるかわいさとか親しみやすさっていうのが凄い。ワニワニパニックっていう字面きれいだなって思いました。(中略)決して「ワニたたき」ではなく「ワニワニパニック」って付けるっていうのが凄い斬新だなって思ったんですよね。

以上、「音楽熱想」#853放送回(鳥越氏)より一部引用
(※文言は一部アレンジしている箇所もございます)

本当はすべて紹介したいくらい鳥越さんいいこと仰っているのですが、あまりにも長くなり過ぎるので最小限のみ引用させていただきました。気になる方はぜひ放送をお聴きください。

いや、昔からナムコのタイトルは凄いんっですって

鳥越さんは良いところに目を付けられました。最近の「音楽熱想」は音楽のことそんなに話してないなーとか思いながら聴いてますが、こういう放送は全力でリスペクトしちゃいます。

そう、ナムコ(現:バンダイナムコエンターテインメント)のゲーム作品におけるタイトルのセンスって実は凄いんですよ。

そもそもゲームタイトルって作品の内容を文字って、あるいは一部流用して命名されることが多いのです。たとえば主人公や登場キャラの名前、背景世界、物語、行為、登場するアイテムetc…が反映されていることが多いです。例えば鳥越さんが例示された「ワニワニパニック」は「ワニをたたく」(その結果パニックになる)という行為が命名の由来となっています。

ただそこで、如何に「そのまんま」をせず、工夫してタイトルに落とし込むかがタイトルライター(そんな仕事あるのかな?)の腕の見せ所。そのタイトルを聞けばゲームの内容をおおよそ想像できてしまう。それでいて語呂が良くすんなり入ってくる。一度聞いたらなかなか忘れない。どんなゲームかやってみたくなる。理想的なゲームタイトルとはそんな要素をことごとく満たしているものだと思います。

無理筋?いやでも昔の作品から紐解いて探してみると、案外出てくるものですよこれが。特にナムコ作品はそのようなセンスが突出していたように思います(アーゲードゲームにそこまで詳しいわけじゃないので、他メーカーのタイトルをすべて網羅してるわけではありませんが…)。

ということで、ここからは筆者(chitoseArk)の独断と偏見のみで、ナムコゲームより「これが理想のゲームタイトルだ!」というのを挙げていきたいと思います。あくまで私見ですので「あのゲームのタイトル出てないじゃないかケシカラン!」等の物言いはどうかご容赦くださいませ。ただご意見をいただければ、私が納得したら後日追記するかもです。

参考資料はこちら。電波新聞社刊です。
ナムコゲーム好きな方は買いましょう!!

(▲Amazon、何かプレミアついてる…?)

なお思い付きで書くので、掲載順=ランキングではございません。
そこんとこよろしくお願いします。

傑作タイトル01:「パックマン」

いきなり超メジャー級いっちゃいます。おそらく誰もが知っているゲームタイトルと言って間違いないでしょう。1980年に発売された作品で、迷路の中に敷き詰められたエサをモンスターに当たることなくすべて食べ尽くしたら面クリアというゲームです。ひとつの面に4つだけパワーエサというのがあり、これを食べると立場が逆転して逆にモンスターを食べることができるようになります。俗にいうドットイートタイプと呼ばれるゲームの始祖的存在であり、ナムコの伝説的なタイトルのひとつと言えます。

「パックマン」。何する人なんでしょうねこれ?いや人かあれ?むしろ異形の存在ではないの?でもマンって書いてあるよ?パクパク食べるからパックマン?…などなど想像は尽きません。

これを安直に「イーティングモンスター」などとしなかったところがタイトル命名センスの妙なのですよ。他社から発売された同内容の電子ゲームには「パックリモンスター」というのがありますが、これと比べると「パックマン」というタイトルが如何に洗練されたスマートなものであるかが分かっていただけるのではないでしょうか。

ゲームにおける行為のタイトル化なれどそのまんまでなく、ヒネリが効いていて語呂も良い。まさにゲームタイトルの理想形のひとつと言って良いのではないかと思います。

傑作タイトル02:「ディグダグ」

往年のナムコゲームに親しんでいた方ならきっとこのタイトルも脳裏に刻み込まれていることでしょう。「ディグダグ」は1982年に発売された作品で、「戦略的穴掘りゲーム」というキャッチコピーにうたわれているように,地中を掘り進みモンスター(プーカァ、ファイガー)を退治していくゲームです。敵を倒すやり方は2つあって、ひとつはモリを突き刺してポンプで空気を送り込みパンクさせる方法(プクプクポン)。もうひとつは地中に点在する岩をモンスターの頭上に落下させる方法。前者は足止めにも使えて手軽だが得点が低く、後者は誘導など手間がかかるが得点が高い。総じて考えることがいろいろあり、奥の深いゲームとなっています。

「ディグダグ」。英語で書くと「DIGDUG」。「DIG」は英語で「掘る」という意味の動詞であり、「DUG」はその過去形(または過去分詞形)にあたります。前述の「パックマン」と同様、こちらもゲーム内における行為がそのタイトルの由来となっておりますが、ナムコらしく語呂の良さを前面に押し出したものとなっています。これが「ディグマン」とかだと言葉の響き的に何か違う。「アンダーグラウンドハンター」とかだとそのまんま過ぎるし、何よりこの作品のかわいらしさが損なわれてしまいます。「掘る」の意味をそのまま使いつつも、英語の動詞活用を組み合わせてタイトルにするというその発想力は技アリ。いや脱帽ですよ本当に!

傑作タイトル03:「ラリーX」

この作品がリリースされたのは実は「パックマン」と同じ1980年。迷路の中を車で走り回り、敵の車や岩に当たらずにすべてのフラッグを回収すると面クリアというゲームです。特徴として自分の車を中心に画面がスクロールすること、画面内レーダーによって自車や敵車および未回収フラッグの位置をおおよそ知ることが出来るということなどが挙げられます。また敵車を煙幕で一時的に足止めすることも可能。「パックマン」的なドットイートゲームの亜流と呼ぶこともできますが、画面スクロールという要素とカーチェイスの緊張感がそのゲーム性をまったく異なるものにしています。翌年には難易度を調整した「ニューラリーX」が発売されました。

いやもうこれについて思うのは「理屈じゃないんだ」ってこと。だってよく考えてみてください。このゲームいったいどこをラリーしてるの?ウィキペディアで調べてみたけど、「ラリー」って「法規上公道走行が可能な車両でタイムアタックをする自動車競技」だそうですよ?「指定された区間を走行して、総合タイムの速さや指定タイムに対する正確性を競う」とも書いてありますよ?このゲーム閉鎖空間の迷路しか走ってないんですけど!?そして「X」はいったいどっから出てきたの?

という風にいくらでもツッコミ可能な次第なのですが、それらすべてが野暮だと思えるくらい自然にスッと受け入れられてしまうのがこの「ラリーX」というタイトル。ラリーじゃない?それがどうした。車がいて敵車がいて旗があればそれはもうラリーなんだよ。この有無を言わせない圧倒的な説得力が凄い。これを「カーチェイス」とか言わずにあえて「ラリー」としたところが非凡なところ。理屈で考えてたらこの言葉は絶対使いません。ナムコの右脳的センスが爆発したタイトルと言えるでしょう。

傑作タイトル04:「メトロクロス」

こちらは少し時代が新しくなって1985年(んでもまだ1980年代?)。主人公(傷だらけのランナー)がどことも知れない地下通路をひたすら走り、ハードル、スリップゾーン、クラッカー、落とし穴、ウォール、突然襲ってくるチェスのコマetcなどの妨害をくぐり抜け、制限時間内にゴールまで走り切ることを目指すゲームです。私にとってはこのゲームこそがゲームセンターに行くきっかけとなった思い出深い作品です(下記note参照)。

このタイトルもまた語呂の響きが良いです。「メトロクロス」って言いやすい。すっと入ってくる。今風の言葉で言えばエモい。タイトルの中に「ロ」が繰り返されているのがその理由なのかもしれません。こういう言葉を考えるのってセンスですよね本当に。

そしてふと思うのです。はて「メトロ」とは何だっけかと。すぐに思い浮かぶのは地下鉄のことですが、「メトロクロス」の世界に電車は走っておりません。そこであらためてウィキペディアで調べてみると、

・metropolis(メトロポリス)の略で首都(または中心的な大都市)のこと
・首都や大都市の高速大量輸送旅客鉄道のこと

ウィキペディアより

とのことで、少なくとも「メトロクロス」における「メトロ」はまぎれもなく前者の意味で使われていることでしょう。

「メトロクロス」のビジュアルは近未来感のある風景で、なおかつ都市的な雰囲気を醸し出しています。そういう意味で本作はイメージとタイトルが直結していると言えますが、決してこれが安直だとは思いません。むしろ世界の持つ雰囲気~すなわち世界観~をキレイな言葉で表現した傑作タイトルだと思います。これが「迷宮突破競技」みたいなタイトルだったとしたら、私は本作をプレイしなかったかも知れません。

傑作タイトル05:「トイポップ」

私的なことを言わせてもらえば、私の中で「メトロクロス」と1、2位を争っているくらい大好きなナムコ作品。画面固定型の1~2人プレイ対応アクションゲームで、1986年発売の作品です。ストーリーは子供たちが寝静まった後のおもちゃの世界で、人形であるピノとアチャが囚われたおもちゃたちを助けるために魔女の城に向かうというもの。魔女の手先となったおもちゃたちはそれぞれ効く武器が異なり、それらをゲーム内で持ち替えながら最適な手順を探り各面を攻略していくというのがおおまかな内容です。その戦略性はファンの間でいまも語り草になっているほどであり、当時のゲーマーならこれを肴にいくらでも酒が飲めるくらいのものです(笑)。

「トイポップ」。これまたファンシーで呼びやすいですね。すっと入ってくる(この表現何度目でしょうね?)分解すると「トイ」と「ポップ」。「トイ」はおもちゃのことだと分かるんだけど、はて「ポップ」とは何だろう?調べてみた感じでは、

・風船が弾ける音を表す
・音楽シャンルを指す名刺(ポップス)
・大衆向きであるさま。また、時代に合ってしゃれているさま

Weblio辞書より

といったような使い方をされているようです。また商業用語では店頭などに置く商品説明広告を指しますが、さすがにこれは違うでしょう。

アーケードゲームで「ポップ」といえば、タイトーの「ちゃっくんぽっぷ」が有名ですが、あれはおもむろに爆弾を指しているので、「トイポップ」のそれとはニュアンスが異なるでしょう。

おおむね「ポップ」というのは割と雰囲気というか勢いで使用されることが多い単語であるように思います。この言葉が付属するだけでポップな感じになるんだよねーみたいな、そんな感じで。だからその「ポップな感じ」って何だよちゃんと分かるように説明しろよって詰め寄っても何となくでしかそのニュアンスを伝えられない、そんな微妙で不完全な言葉。ただこの言葉が使われると何となくかわいらしくて明るい雰囲気になるんですよね。女性が髪にふわっと纏わせるコロンの香りのように。

「トイポップ」のタイトルは、はたしてそこまで考えられて付けられたのかどうか。そうである気もするし、そんなことない気もします。ともあれこのタイトルはゲームのビジュアルとも相まってファンタジックなおもちゃの世界を連想させることに成功したと私は思います。そんな雰囲気とは裏腹に、ゲーム自体はめちゃめちゃ頭使う硬派な作品ですけどね!!

傑作タイトル06:「源平討魔伝」

1986年の作品。私が把握している限りナムコのアーケードゲームで最初に漢字のみでタイトルが付けられた作品だったはずです(エレメカ除く)。源平合戦後の日本という舞台設定、平家の魂となって闇の源となった頼朝を倒しに行くという物語、和の世界を再現した美術と音楽、そしてダイナミックに動く画面とキャラクターという数多の特色を持ち、当時それを見た者たちに「ゲームはもはや映画や小説に近付いた」というようなことを言わさしめたほどの傑作です。

このタイトルのどこが傑作か。それはズバリ、こういう映画か小説が実際にあってもおかしくはないような、そんなタイトルだったことです。

ここは時代背景的な話も含めて説明しましょう。

先ほど「ゲームはもはや映画や小説に近付いた」と書きました。こう言うと「それはあくまで当時の話で」とか「あの程度でそこまでは言えない」とかいろんなツッコミが湧いて出るのですがすべて斬って捨てて景清の剣の錆にして差し上げます(笑)。

実際ね、それほどのインパクトがあったのですよこのゲーム。あれはゲームというものの価値観が一段階上がった瞬間でした。これを見た多くのファンがゲームの可能性について、それはそれは熱く語ったものです。ゲームは映画に近付いていくのか?単なる遊びの道具を超えて物語を表現する手段となり得るのか?ゲームは芸術と呼んで差し支えないのではないか?「源平討魔伝」はそんな可能性を垣間見せてくれるだけのポテンシャルを秘めた作品でありました。

そして、ここが何より重要なポイントなのですが、この作品がそんな風に受け止められるためには、この作品のタイトルが一見ゲームらしくない、あたかも映画や小説を意識したものである必要があったのです。

「源平討魔伝」

あらためて見てください。そんな映画か小説が実際にありそうなタイトルではありませんか。だからこそ当時のゲームファンはそのタイトルの向こうにゲームの行く末を夢想することができました。いまでこそこういうタイトルのゲームはさして珍しくありませんが、かつて多くの学校の校則で入ることが禁じられ、不良の溜まり場であるかのように言われていたゲームセンターにこのようなタイトルの作品が登場したことは極めて大きな意味を持っていたのです。そして本作をきっかけに、特にアーケードゲームの在り方、作られ方が大きく変わっていくことになるのですが、その話はまたいつかいたしましょう…。

まだまだあるかもですがここまで!!

ちょっともう長くなり過ぎちゃってるのでここまでとしますが、気付いたら1980年代の作品しか語ってないじゃん!それもほとんど前半期が中心だし!しかもこの記事を書く発端になった「ワニワニパニック」のリリースが1988年だから、記事全体を通じて1980年代…。もうどんだけオッサンやねんお前って感じですな。あのー私いろんなところで言ってるけど、まだ現役バリバリのナウでヤングな若者なんですからね?(爆)

(いたいワニ!誰だいま私を叩いたのは?)

まだ紹介したいタイトルいろいろあったのよ。「ローリングサンダー」とか「ケルナグール」とか(これはファミコンだけど)。ただナムコも後半期になってくると安直な英単語の組み合わせが多くなり、あんまし語呂の良さとかを意識しなくなったのが残念っちゃ残念なところ。懐古主義者だからそう感じるのかもって言われるとそうなのかも知れないけどさ…。

【宣伝】 「音楽熱想」について

はい、ということで私がこのような記事を突然書く気にさせてくれたハートカンパニーの鳥越さんに感謝しつつ、そのvoicy放送「音楽熱想」について少しだけ触れておきますね。

「音楽熱想」はvoicyで提供されているネットラジオで、主にアニメ・ゲームなどの音楽制作、プロデュースなどを行なう株式会社ハートカンパニーの制作でお届けされています。

ハートカンパニーの代表は音楽レーベルとしてその名を知られるランティスから独立された斎藤滋社長で、この放送でもお喋りされています。番組は「ミライアカリ」などに携わったタノウエマモルさん、「アサルトリリィ」「アイドルマスター」などの作詞をされた安藤紗々さん、茅原実里さんのバンドにてギター奏者を務めたチャンババこと馬場一人さん、「ひぐらしのなく頃に」の作詞や歌で知られる島みやえい子さん、アニメ・ゲーム業界などを中心に活躍されているElements Gardenの菊田大介さん、そして今回紹介したスタッフの鳥越さんなどが日替わりでトークされています。

番組内容は各々が携わるコンテンツや日常の話など。音楽業界についての裏方事情が語られることもあれば、今回みたいにゲームについて語られることもあります。気になる方はぜひ聴いてみては。

【関連note】(一部)

(音楽熱想もそろそろまとめのマガジン作らないとな…)

(了)


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