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映画🎞『モーリタニアン 黒塗りの記録』9.11の闇


『モーリタニアン 黒塗りの記録』The Mauritanian

2021年
イギリス映画
時間・129分

監督     ケヴィン・マクドナルド
脚本     マイケル・ブロナー、ロリー・ヘインズ、Sohrab Noshirvani
原作  モハメドゥ・ウルド・スラヒ
出演者
ジョディ・フォスター(第78回ゴールデングローブ賞/最優秀助演女優賞)
ベネディクト・カンバーバッチ
タハール・ラヒム
シャイリーン・ウッドリー
ザッカリー・リーヴァイ

モハメドゥ・ウルド・スラヒの著書「グアンタナモ収容所 地獄からの手記」を題材としている実話。

2001年、9.11 アメリカ同時多発テロに関与した疑いで捕われた青年は、裁判すら受けられないまま、拷問と虐待を受け続けた(当然、映画ではかなり抑えめに表現されていると思われる)。

2001年、同時多発テロ事件が起きた2か月後に捕えられ、裁判が行われたのは2009年、勝訴が2010年、そして2016年. . . オバマ大統領時代、これほど長く引きずっていたとは、長い。無実でありながら耐え、失ったものは大きい。その当時のテロ映像を思うと、アメリカも躍起になるのも十分理解できるがその裏で悲惨な、黒々と塗り潰された事実、陰謀があったとは思いもよらない。
敵方の兵士やテロリストの容疑をかけられた人々を次々と拘束し、グアンタナモ収容所に送り込んでいたが、彼らの人権は守られていなかったという事だ。

*ネット記事から拝借
記者団に公開されたグアンタナモ収容施設
2014年4月、キューバ南東部グアンタナモ
(AFP時事)
ポルノ部屋と呼ばれる部屋や、女性兵士から強制的な性行虐待、カミソリで性器を切るなどの残忍な行いがされていたと言う。


その中で、このシーンがいい。
青年が海と風と波、しぶく音を想像するシーン。ひと時、陽射しの心地よさに身を委ねる。何も諦めないとする強さと、青年が持ち合わせる朗らかな性格を映し出す。

エンドロールでは見栄えの良い、整った顔立ちの男が現れる。このような映画を見ながら、区別する事はならないが、なんと惜しいこと。若さと時間を収容所で殺してしまったのかと思うと居た堪れなくなる。だが世界各国で翻訳された手記を手にする姿と、妻子たちとの映像が記録されているだけ、少しばかり気が鎮められる。


モハメドゥ・ウルド・スラヒの著書『グアンタナモ収容所 地獄からの手記』だが、日本語訳もされており、2015年11月、河出書房から出版。2021年に文庫化されている。

著者 : モハメドゥ・ウルド・スラヒ 
編集:ラリー・シームズ 
訳者 :  中島 由華 

(英文を私なりの解釈で訳してみましたが、危ういのでサラッと流してほしい)
2005年、モハメドゥ・ウルド・スラヒ氏は英語で書きあげる。2015年版では、ラリー・シームズが編集する前に、アメリカ政府の検閲により2500か所も編集されている。多くの批評家から、スラヒ氏の受けた残忍性や辛さが欠けているとの批評が持ち上がる。そして2017年、編集を復元して再発行される。

映像では、捕らえられ、拷問を受けている状況で、未来を捨てず記録していた事に青年の確固たる思想を感じます。熱心な宗教観はわたしにはありませんが、青年の中に神が存在したこと、信じ続けたことが、捕われた青年にとって何よりも大切なものだったことが理解できます。

とするならば、2015年の日本版単行本も黒塗りの編集をされたままで、2021年の文庫本では復元されているのか。気になる。
日本政府でも、この黒々とした文書をニュースで見かけた事があるが、大昔ではなくこの数年のこと。これでもかというような黒く塗り潰されたページは、底知れぬ闇と異常な恐ろしさを感じます。

最後に、モハメドゥ・ウルド・スラヒさん自身が陽気にも、詩を噛みしめながら「俺のことみたいだ!」と歌う、ボブ・ディランの『the man in me』。PTSDなどの後遺症があると思われますが、彼の強さや、ひととなりがこのシーンでよく伝わってきます。

The man in me will do nearly any task
As for compensation, there's a little he will ask
Take a woman like you
To get through to the man in me.

Storm clouds are raging all around my door
I think to myself I might not take it anymore
Take a woman like your kind
To find the man in me.(一部抜粋)

この作品は、アメリカの闇を綴ったものでありながら、愛と平和を願う作品であり、スラヒ氏の願いとして、誰も否定するでもない大きなこころが根底にある作品です。スラヒ氏の好きな言葉は「憎悪を抱くことは毒を飲んで誰かが死ぬのを願うようなものだ」。
人を憎まず。そうやって祈りながら生きている人間が存在することを忘れてはいけない。今も尚、人を信じることで貶められた自分の魂を救おうと戦っているに違いないのだから。

バイデン大統領は任期中、本当にグアンタナモ収容所を閉鎖するつもりなのか。



🌝声、発声、機能を考える
ボイス・ボーカルレッスン/東京都 
音楽療法(医療行為は行わない)の観点からオーラルフレイル、口腔機能、老化防止を意識した呼吸法、発声のレッスンも行います。

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