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映画🎞『ノクターナル・アニマルズ 』Nocturnal Animals/トム・フォード監督



『ノクターナル・アニマルズ」(2016) Nocturnal Animals

アメリカ:116分
脚本・監督   トム・フォード
出演者
エイミー・アダムス
ジェイク・ギレンホール
マイケル・シャノン
アーロン・テイラー=ジョンソン
アーミー・ハマー
アイラ・フィッシャー
ローラ・リニー
エリー・バンバー
カール・グルスマン
ジェナ・マローン
マイケル・シーン

1993年発表、オースティン・ライトの小説「ミステリ原稿」の映画化。

ファッション好きなら言わずと知れた、世界で鮮烈なビジュアルイメージを放つファッションデザイナー、トム・フォード。
彼のハイテンションな広告に度肝を抜かれるのも楽しみの一つでありますが、そのデザイナーであるトム・フォードの映像作品。二作目となるもの。

ハイカロリーなオープニングシーンも賛否両論の納得もの。いいですねぇ。「美」であり「醜」でもあり、ビンビンにいかしてます。
エイミー演じる主人公は資産家に育ち現代美術家としても成功するが、20年前に別れた元夫への純粋な愛の反面、辛辣な言葉や態度で見放した主人公への当て付け、皮肉のような迫力のオープニング。

もうあれこれ洒落てます。メガネもがっつりトム・フォード

不自由なく恵まれた生活の中、手に入れられない愛にじっとり夜を過ごす主人公。そんな中、見限った小説家の元夫から「夜の獣たち(ノクターナル・アニマルズ)」というタイトルの本が届く。
その内容は、元妻への復讐か、はたまた、まだ消えぬ愛、後悔、懺悔か、主人公は衝撃の内容に没頭していきます。
映像の装飾、色彩美はもちろん匂い立つ音楽もザ・トム・フォード!と言わんばかりにどれもトム・フォード一色。
音楽は無音の効果も引き立て、深い溜息がずっしりと響くほど。
艶かしさと、危うさと、裸体の曲線を終始混沌と映し出します。そのアート性にトム・フォードの美学と内向へのこだわりも見えます。
何かの記事(おそらくVOGUEヴォーグ誌)で見かけましたが、トム・フォードは、内面の美しさがなによりも重要だと言います。だからこその彼らしい突き抜けた表現なのでしょう。
人は何を得れば幸せなのか、心の満ち足りた幸せはいったい何か、わかっているようでひたすら追い続けている滑稽な生き物だと作品を通し「美」こそは何か?と私たちの "心 "に問いかけているのではないでしょうか。

そして、日本の美を取り入れた最後のシーン、日本の貧困と孤独の中に存在する日本の美意識「侘び寂び」をもって締めくくる。ゾッとします。私の読みがどこまでトム・フォードの真意に迫れているかわかりませんが、全てにおいてパーフェクト。
芸術を通し本来の「美」に迫る甘美と不穏の作品です。

_侘び寂び_
人の世の儚なさ、無常であることを美しいと感じる美意識であり、悟りの概念に近い、日本文化の中心思想であると云われている。(侘び・寂びの色彩美とその背景―和の伝統的色彩美の特性を求めて/吉村 耕治, 山田 有子 著)

とトム・フォードの多才ぶりに絶賛し文章を閉じる前に内容への、もひとつ思うところ。
まぁ、しかし、執念だわね。男のプライドずたずたの復讐劇ですわ。でも主人公が嫌な女だとも思いません。女性は夢ではなく現実にお腹を痛めて子を産み、生活を守る為に譲れないものがあります。
自分の子に、何不自由なく生きて欲しいと思うのは至極当然の親心。
たしかに、手放した才能は非凡だった、いい男だったわと甘い妄想と後悔にかられ、紐ひとつで胸元がはらりとはだけてしまうドレスを着て待ち合わせに出かける気持ちも理解できます。でもそれは人間、煩悩に尽きますからね。他人の事をどうこう言えません。主人公をまるっと悪女に考えてしまうのは四角四面ではないでしょうか。トム・フォードはその点も表現していますが、観る側、受け取る側で人それぞれ解釈がありそうです。

revenge




♟声、発声、機能を考える
ボイス・ボーカルレッスン/東京都 
歯科助手経験と音楽療法の観点からオーラルフレイル、口腔機能、老化防止を意識した呼吸法、発声のレッスンも行います。

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