器のはなし 〜陶器と貫入〜
器はお好きですか
わたしは自分で買う器も 普段使う器も和食器が多めです
どうしても増えてきてしまった食器
すこし整理しなくちゃと思うこのごろです
陶器には、土の素朴な風合いや 職人さんの手仕事の温かみ、
磁器には、ガラス質の繊細でつるんとした滑らかで艶やかな均一的な美しさ
それぞれに魅力があります
これからの寒い時期には、保温性の高い陶器が活躍するかもしれません
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白い陶器はお持ちですか
白い陶器は、磁器やガラス、柄物の洋食器と合わせても相性がいいので、わたしは普段からよく使います
ひとくちに “白い陶器” といっても、その風合いや色合いは 素材や釉薬、工程や作り手によって表情はさまざまです
陶器は、粒子の荒い粘土で作られています
水に浸すと 粒子の間に水分が入り込みます
粉引は 3層構造のため、入り込んだ水分が より抜けにくい構造になっています
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陶器を購入しようとすると、お店の方から『 貫入 』のお話をされることがあります
『貫入』というは、陶器の表面にできる細かなヒビの模様のようなもので、
素材が温度の変化によって膨張・収縮することで生まれます
素地と釉薬の収縮率の違いによるもので、貫入の程度もさまざま
差が大きいほど貫入ができやすいです
窯から出して冷ます間にできた貫入が、器のデザインとなって売られているものも多くあります
破損のときにできるヒビとは別物です
購入後に “ヒビが生じた” とか、“シミになった” とか、“色合いが変わった” というクレームが入ることがあって、それが作家さんのところにまで行くことがあるそうで、
器の特性や留意点を説明して、了承の上で購入いただきたい と作家さんからもお願いをされるのだそう
作り手と顧客との間に立つお店の方もいろいろ大変ですねぇ…
けれど、そういうものだと知られていなければ、思ってたのとは違うと言われてしまうのですね
はじめは 貫入の見られなかった陶器でも、熱い食事や飲み物に使用しているうちに貫入が入ることもあります(“経年貫入”)
そこに色の濃い液体のスープやコーヒーや紅茶、醤油やソースなどの調味料や油が入り込んで色がついてしまうのですね
色や柄のある器であれば さほど気にならなくても、白だとどうしても目立ってしまいます
吸水性のない磁器なら 漂白剤を使うことができますが、吸水性のある陶器には向きません
軽い茶渋なら、塩や重曹をふりかけてスポンジでみがけばきれいになります
貫入などをできるだけ防ぎたい場合には、陶器を購入したら 一度米のとぎ汁で器を煮る “目止め” の処理をしておくのがよいそうです
さらに、盛り付ける前にさっと水で濡らしてから使ったり、
使用後は早めに洗って 水分を拭き取り、しっかりと乾かしてからしまうのが シミやカビを防いで長持ちさせるポイントです
何かとちょっと手間がかかりますね
世話が焼けるというか なんというか…
貫入や色合いの変化を楽しみながら使うことを「器を育てる」なんて言ったりするそうです
“個性” や “成長 ”という捉え方ですね
手のかかる子ほどかわいい… そんな感じでしょうか
どんなものでも 使っていけば古くなっていきます
布製品や衣類は、色が落ちてきたり ハリがなくなってきたりするけれど、ソフトに肌に馴染んでくるし、
革製品はシワやシミもできるけど、だんだん柔らかくなって色も深みが出てきます
器の 貫入や色の変化もそれと同じことで、
“劣化” ととらえるか、“味” ととらえるか
“不良” ととらえるか、“良” ととらえるか
それは人それぞれの感覚や好みであって、けっして不良品ではないのです
気に入ったものは 大切にじっくりと付き合って、自分に心地よく馴染んでいくのを楽しめるといいなと思います
〜 目止めの方法 〜
でんぷん質が 微細なヒビや小さな穴をコーティングして、きれいな状態を保つ役割をしてくれます
米とぎ汁の代わりに 小麦粉や片栗粉を水に混ぜて同じように煮沸しても大丈夫です
(水1ℓに大さじ1ほど: 鍋底が見えないくらいの白濁が目安)
鍋に入らない大きな器や、煮沸が不可能な場合には、しばらく浸しておくだけでも予防効果は期待できるそうです
頻繁に使うお気に入りの器は、半年から一年ごとに目止めをすると きれいな状態がキープできます
もちろん、目止めをしなくても器は使えるので、貫入やシミ、色の変化を味わいながら、おおらかに器を育てていかれるのもいいと思います
もしも、お気に入りの陶器に出会った時には、ちょっと思い出してみてください
それでは どうぞよい一日を、よい一週間を
#130. 『 陶器 』
⭐︎生きてたら何歳かなと引き算す 継がれし皿に3時のおやつ
⭐︎貫入もシミもほくろもでこぼこも わたしにだってあるからねって
ー ちる ー
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