旅楽団 38

【38 マイタケ爆弾(ぶっ飛び編)】


どうやら赤い歩道橋の上で[ちくわぶ]を使ってみていた蜘蛛たちは、街のはずれの海にできている赤い道をまっぐにこの街に向かって走ってきているのだ。
僕らは僕らで、蜘蛛たちの方へ走っている。
僕の前を、マイタケが例のソロバン片手に僕の[ちくわぶ]をもってハイスピードで走って行く。僕の足ではグングン引き離されていく。
蜘蛛たちの姿がぼんやりと見えてくると、マイタケはなおもスピードを上げる。
どこにあのパワーがあるのだろうかと不思議になってしまうほど。
街のはずれまでやって来た頃、グングンスピードを上げていくマイタケ。
「ぶー!」
思わず大きな声をあげてしまう。
マイタケが又何かにぶつかったのだろう宙を舞う姿を見てしまったのだもの。
僕にはその姿がスローモーションに見える。
そしてマイタケが落ちる場所には、多くの蜘蛛たちがいる。
ドボンって大きな音が聞こえる。
それを見て取って、僕のダッシュは限界を超えるほどのスピードだ。
とは言ってもマイタケの10分の1ほどしか出ないスピードなのだけど。
はぁはぁはぁ…。息を切らして走り続ける…。
ふうふうふう…。足をグルグル回して…。
そうやって、やっと、やっと…。
蜘蛛たちが視界に入ってくる。
蜘蛛たちはワーワー騒いでいる。
ソロバンが石にぶつかってバラバラになっている…。
その先に[ちくわぶ]が転がっている…。
ぜぇぜぇ…。ソロバンとちくわぶをランドセルの中へしまう
10匹ほどの蜘蛛の真ん中に、僕の体ほどある丸い水槽みたいなものが置いてある。
それの周りの蜘蛛たちが何かを言っている。
「「亀か?」」
「「たわしか?」」
「「亀だったろ?甲羅があったもの」」そんな声が聞こえてきた。
「ぶ?」
水槽の底はいびつな形になってヒビが入っている。何らかの力が上からかかってしまったのだろうか?僕の頭で算数がはじまる。
はじき出した答えが、蜘蛛たちを追っ払う。
「あっちにいけぶう!」案の定水槽の中に、マイタケが浮いている。
ぷかぷかと手足を甲羅におさめて。
僕は慌てていびつな水槽の上からマイタケを引っ張り上げようとする。幸い尻尾が水の上に出ていた。
僕はそれを引っ張る。水の重みを含んだ亀の子たわしの亀の子は今までの重さだと高をくくっていた僕はビックリするのだ。
お、重い…。
僕は全力で走って重量挙げをする。
ひ、ひぃいぶ…。
ざぶーん。
僕も、水槽に落ちてしまったんだよ。
その拍子にヒビの入っていた水槽の底らへんに小さな穴が開く。中に貯められていた水が漏れ始める。
僕は水槽の水の中から空を眺める。ギラギラしてヘラヘラしていた太陽は、なぜだかこの時はシャンとしていて虹の7色にもう2色加えていてね、とてもキラキラ輝いていたんだよ。それにあんなにふてくされていた月なんか、太陽に負けずに黄色いマントを格好良く音を立てながらひるがえす。そして僕ににっこりとほほ笑んでくれるほどだ。
僕は空から横に首をひねる。蜘蛛たちは水槽の周りから遠ざかっていくのがぼんやりと見えた。そして蜘蛛たちが来た方角から何だかキラキラ光るものがこちらに向かって飛ぶように走ってくる。どこからか、シュワシュワ音が聞こえる。細かい生まれたての音たちが。僕はそれを見て思う。
「あぁ、なんてきれいなんだろう。キラキラ色が舞っている。何て素敵な音色なのだろう。どこかで聞いたことのある音も少し混じっている…」


ひとまずストックがなくなりましたので これにて少しお休みいたします。 また書き貯まったら帰ってきます。 ぜひ他の物語も読んでもらえると嬉しいです。 よろしくお願いいたします。 わんわん