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思ったよりはるかに深かった。アイスブレイクの問いに込められたファシリテーターの思考と意図

多様性をテーマにした「問い」からはじまるコミュニケーション/第2回【問いをつくる】というワークショップに参加した。
ワークショップの中でもイントロ部分、その中でもアイスブレイクが大事と語る塩瀬先生に、アイスブレイクの問いに込められた意図をお話してもらった。
結論:アイスブレイクにすべてが詰まっていた。


アイスブレイクの問い:「目玉焼きの食べ方は?」

このワークショップは、「あなたの目玉焼きの食べ方は?」という問いから始まった。
80人の参加者が2-3人ずつに分かれて、名前と目玉焼きの食べ方を紹介しあった。
話しやすいテーマなので、塩、ソース、しょうゆ、硬め、半熟、片面焼き、白ごはんと食べる、ソースは香味ソースなど、いろーんな回答がでてきた。

次の問いは、「これから1ヵ月間食べ続ける食べ方は?グループで1つに決めてください」。1グループの人数を5-6人に増やして、目玉焼きの食べ方を1種類にしぼった。
そしてしぼられた回答と、今の気持ちをチャットで全体共有した。
「決まってすっきり、うれしい」、「どうでもいい問いだと思った」、「別の食べ方に挑戦するのもありかなと思った」「もやもやする」「妥協した」
これまたいろーんな意見が出た。

そしてファシリテーターの一言「ダイバーシティの問題はここに集約してそう」
「別の食べ方に挑戦するのもあり」「どうでもいい」にあるように、対立が面倒くさいから多様性に賛成しているだけかもしれないし、説得力をもって意見を言えない人も、こだわりがある人もいるよねと、多様性への態度が現れていることを見事に説明されていた。

答えが存分にばらけるよう、参加人数が多いのを活かした設計でもあった。
まさに「多様性」を体現する問いだったし、多様性や同調圧力に対して自分の言葉で言語化し、表現を増やす体験を積むアイスブレイクだった


なぜ、「多様性」と「目玉焼き」か

今回のテーマである「多様性」は、何に対しても語れるが、逆に抽象化しすぎて焦点がぼやけることがある。
そんなときは制約条件を強くして、ものすごく矮小なテーマにしたほうがいいと終了後に塩瀬先生が教えてくださった。

「なのでものすごく矮小なテーマ(目玉焼きの食べ方、鍋に入れる具材、ご飯のお供...)など制約条件を強くしたほうが一気に広がります。ただし鍋は冬シーズン限定、ご飯のお供はけっこうパン派を排除してしまう...結果として目玉焼きはご飯派、パン派両方を含めてるのでより機能しやすい。」

さらに、こだわりと寛容のバランスが良いのもポイントのよう。
例えば上下関係がある中で「私は絶対A案がいいです!」と上司に言うのは言いづらいが、「目玉焼きには絶対ソースです!」ならこだわりを押し通しやすい。

「こだわりの強い人たちがお互いに譲らないけれども、上司部下の関係を超えて下克上で話ができるテーマだったりするので採用しています。」

そうやって普段の関係性を変えられるので、目玉焼きの問いは会社の幹部研修などでも有効のようだ。

メインの内容での活かし方

「多様性とは〇〇である。あなたにとっての〇〇は?」を話し合うのが今回のメイン。そこで出てきた意見を理解しやすくするためにも、目玉焼きはメタファーとして最後まで使われていた。
「目玉焼きには塩というのが共通していても、アンデスの塩とか伯方の塩とか、解像度を上げると多様性が出てくるよね」と、ワークでの意見を紹介するのにも使われていた。
こんな風に参加者の共通言語となって、メイントピックを理解しやすくするために、最後までアイスブレイクの問いが生きていた

当日だけで終わらず、日常にも尾を引くインパクト

さらに何がすごいかって、当日だけは終わらないこと。
当日のワークショップで得られる気づきの多さと、目玉焼きという超身近な題材とが相まって、イベントが終わっても日常にインパクトを与える。
「多様性って何だろう」とこれから目玉焼きを見るたびに考えるようになるし、食べる人と多様性について話すきっかけにもなるのだ。

以上の事から、アイスブレイクの問いを設定するポイントをまとめるとこんな感じだろうか

〇必須
・身近で答えやすい
・自分の言葉で伝えられる
・メインテーマを考えるヒントになる
・普段の関係性をくずすきっかけとなる
〇これができると衝撃のワークショップになる
・メインテーマを集約/象徴する
・参加者の共通言語として、メインテーマの語りと理解を促すメタファーになる
・見るたびに思い出すような、イベント終了後もインパクトを残す題材

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