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進化の過程で捨てたこと

ペンギンが好きである。




丸っこいフォルムに少し不自由そうな歩き方。氷を滑ったり、赤ちゃんがすっぽりおさまる高機能なお腹を持つ。フワッフワの毛で愛らしい瞳の赤ちゃん。地上ではあんなによちよちなのに、海のなかではピュンと速い。しかも大体の子がバイセクシャルだという。なんて現代に合う、機能的な動物。

でも、何より好きなところは鳥類なのに飛べないところだ。

鳥類だけの特権である「空を飛ぶ」を進化の過程で手放してしまっていることが最高なのだ。

ペンギンがまだ飛べていたころ、彼らのように海に潜って魚を獲る鳥類はほかにもたくさんいた。今でも生息するウミガラスやヒメウもその一例である。

その中でも身体が巨大化しつつあったペンギンにとって、「飛ぶ」という行為は消費体力が激しく、だんだんと要らないものになった。しかも、その同時期からクジラやアシカなどの哺乳類も進化を遂げて数が多くなったという。海の魚を奪い合う動物たちが増える中、自分たちの餌を確保するために、ペンギンの祖先は海に潜る能力を上げることを選択した。

こうしてペンギンにとって自由の空は、海の中にとって代わったのだ。

進化の過程でしっかりと取捨選択をして今でもああして生き残っていることの賢さ。フワフワだった羽は固くなり、その分の毛は全てお腹に移動し、あの愛らしい姿でいることもまた尊いと思う。進化とは賢い取捨選択と言い換えても良い。

私も人類の進化にまで寄与できなくても、賢い取捨選択をしていきたいものである。

今より少しでも自分が持つものを伸ばし、進化するために私は何を捨てよう。

いつもは現在の自分に何かを足し、書くことにおいても新しい言葉が降ってくることばかりを考えがちだが、

一度捨てるものに考えを馳せるのも良いのかもしれない。

そうやって賢く捨てた先にまた何か見えてくるものがある気がしている。





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