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怠惰と戦うオシャレさん

美容院に行った。
4ヶ月も伸ばしたままにしていたパーマは、毛先だけがくるんとするだけのお飾りになっていた。


髪の長さを調節程度に整えつつ切りながら、もう一度パーマをかける。
どうしてもパーマを止めるという選択肢はしばらく考えられそうにない。もう天然パーマオンリーで、縮毛矯正をするかどうかで迷うあの日には戻りたくない。不自然に動くのが嫌なら、真っ直ぐにするよりももっとぐちゃぐちゃにしてしまえという理論を武装している。

巻き方も敢えて部分部分で変えてもらって、無造作感を出してくれたらしい。非常に満足している。同じ巻き方のパーマも経験して、綺麗で統一感があってその場では満足していたが、2ヶ月もすれば毛先の遊びごとにしかならなくなる。見栄えにはそこまで影響はないけれど、施術直後の「パーマをすることでしか得られないオシャレ上級者」感が薄れていく。

オシャレ感に満ちると、頭頂部から足先までオシャレが通っている気がするし、歩いて地面に触れるたびに意識が体を拡張して地面と共鳴し始める。人混みと客引きの声が飛び交う日常の中でも、パリコレクションのランウェイを闊歩している自分をイメージしながら足をクロスさせるように歩く。

春が近いし、こんなに重たいジャケットはもう着なくていいだろうと思いながら黒のロングジャケットを羽織ってきたが、美容院を出て気分が高揚してからジャケットを羽織ると、ひらひらとシルエットが揺れて趣があるように見える。自然と重たさが気にならなくなった。「オシャレは我慢」はあながち間違いではないらしい。影の反射が大人びていて「オシャレじゃん!」と調子が上がった。


いや〜、気分がいいねえ!!!!最高の気分だ!!!!!!

ガチャガチャした髪型に変わったし、また髪のセットを楽しみたいなあと思いながら、堂々たる帰還を遂げた。
途端に眠くなってきた。オシャレ心は屋外でしか発動しないようで、すぐに怠惰の人生が玄関前で迎えにきた。

オシャレなんてどうでも良くなった。眠りたい時は黙って寝るべきだ。

オシャレさんは堂々たる昼寝を決行した。草臥れた表情が鏡に写る。


オシャレってなに?難しすぎん?


精神的怠惰を脱却できるまで、オシャレを頑張りたい。



問題です。「オシャレ」「パーマ」と何回言ったでしょう?
数えてみてね。眠い目が少しだけ冴えるかもしれません。


自分を甘やかしてご褒美に使わせていただきます。