午後2時がさす目の敵

すれ違う視線同士に気づかなかったフリをして、向かう先々に冷たい視線をぶつける。重たい前髪が被さっていて、視線同士が激烈バトルを始める前にどちらかが逸らしている。またたく間に首はそっぽを向いて体の向きを変えて遠ざかっていく。

ターミナルとなったモニュメントの前に、ポツポツと雨粒のように人が現れては消えていく。待ち合わせの集合地にされるためだけに創造された意思を持たない置物は、いつもより視線が下に向いている。どれが目と判断したのかは思い出せない。

これから、なにかを企むこともなく、とりあえず行き当たりばったりで道を選ぶ人はいるのだろうか。複数人で集まるとなれば、集合前からある程度の目的を決めてどこかに消えていくのだろうか。尾行する権利は不運にも持っていなかったし、今日のところは勘弁してやって、集合してモニュメントから離れる後ろ姿を5秒だけ眺めて捜査を終了する。

集合時間のキリがいい2時になる。数組が一度に出会いながら笑顔になっていく様子がうかがえる。
会うこと自体が久しぶりなのだろうか、どうしても声の大きさが抑えられなくなっている三人組が。面識ある人との再会よりも、自意識が拡大していくことに気持ち良くなっているのかもしれない。それはそれで気分が良くなるなら、被害を受けたわけでもないし、誰もが寛容な心で許してくれる。何よりも微笑ましいことだし許してあげよう。

特別見る必要のないスマホの画面をほどよく眺めながら、ここの風景に溶け込む。違和感なく待ちぼうけをくらっているように振る舞う。演技派なので慣れた手つきでスマホを触る。パズドラのドロップを動かす手が滑る。4コンボ。

誰と待ち合わせしているわけでもない。この街の流れと一緒になってみたかった。
タイムラプスで人が流れる様子を撮ると面白いから、自分の目で長時間捉えてみたかった。

動き蠢く風景を真上から覆い被さっていくように全体を俯瞰視する。遠くにいるはずなのに、等しく声が聴こえる。

どこにいくでもなく、その街を一度に吸い込む。喉元が詰まる感覚に、気分が良くなった。


自分を甘やかしてご褒美に使わせていただきます。