キツネなシッポと遊びましょ、の話⑤
ボクは本当に反省が苦手らしい。
↓新シリーズ、キツネなシッポ編です。哀れな妄想癖のオトコが繰り広げるアホらしさ満載の空想活劇をお楽しみください。よければアルマジロ編もどうぞ。最終回です。
黒マスクのお陰で?ボクは何とか翌朝を迎えることができた。カラダ中の関節がきしんでいる。昨夜のことは思い出したくもない。床と額が同化していくなんてヒトの所業ではなかろう*。
でも大丈夫。ボクは鋼の鬼メンタルを持つオトコなのだ。ボクは今ただこうして生きていることを神に感謝していた。朝陽はこんなにも眩しく、小鳥の鳴き声はこんなにも清々しいものだろうか。ボクは生を実感するとともに、性の実感も得ようと次の作戦を、いや妄想を膨らませた。
昨日の一件でボクの損失は大きかった。奥さんの取り調べの結果、小池クンとは要注意人物として接見禁止の指示を頂いた。ついでにコンビニ銀行の隠し口座を白状させられ、ボクの僅かな資産も没収された…元警察ってのはマジでこわい…
前を向け。偉大なイノベーションとは、こんな過酷な状況を打破しようとして生まれるものなんだ。ボクは逆境をバネに這い上がることを趣味とする、心の底からのM体質のようだ。
週末のお昼、奥さんは久々の女子会とかでお出かけだ。ボクは笑顔で奥さんを送り出すと、しばし考えた。そうだ、chatGPTだ。
完璧じゃないか。後の3つは何の問題もない。これだけ痛い目にあっても夢をあきらめないこの不屈のメンタルこそ、ボク最大の長所なんだ。目標はただ一つ。女子にモテたい、チヤホヤされたい、ふんふんしたい、それだけだ。あとは計画、プランだけだ。ボクは普段の仕事でもなかなかないレベルの集中力を発揮していた。こういう時は紙に書いた方がアイディアをまとめやすいんだ…
集中してカキカキすること数分、ドアが開く音がした。奥さんだった。
「忘れ物しちゃった。何してんの?」
ボクのメモを見た彼女は、再度ゴジラ第4形態へと変貌しようとしていた。
マズい、逃げるしかない。そう思ったボクは奥さんに背を向けると、玄関にダッシュしようとした。
「はうっっ!」
奥さんがボクのシッポを捕まえていた。マズい、シッポはまだ敏感なままだ。のけぞるボクを見て奥さんが言った。
「こんなモン生やしてるから、いつまでもおかしなコト考えるんでしょ!」
そういって彼女は両手で強引にシッポを引っ張り出した。快感は激痛へと、身悶えは悲鳴に変貌した。
ブチッ。何かがキレた。奥さんの両手にはボクから離れたシッポ様が握られている。撃たれた死の間際の動物のように、シッポ様はジタバタと動いている。やがてシッポ様は息絶えたように身動きしなくなった…
シッポ様の最後を看取ったボクは、近くの草原に埋葬することにした。ありがとう、シッポ君。ステキな夢をありがとう。こうしてシッポ君は土へと還ったのだ。その日ボクはシッポ君との別れを惜しんで、1日中落ち込んだ。奥さんは心なしか優しかった。
翌日、目が覚めるとまた違和感があった。見るとまたシッポが生えていた…ボクのシッポはトカゲみたいに再生するらしい。シッポ様は再会を祝うかのように朝陽を浴びてゆらゆらと揺れていた。
心地よい感動がボクを包んだ。
「勝った…」
何に勝ったのかもよく分からない。でもゴジラよりトカゲのシッポの方が強そうなのは確かだ。
(イラスト ふうちゃんさん)
↓良ければごいっしょに。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?