キツネなシッポと遊びましょ、の話⑤ 番外編です〜第一幕〜未知との遭遇
その日、奥さんの親戚の子ども康太(4歳)が母に連れられて遊びに来た。康太はマジメな両親にも、凶暴なボクの奥さんにも全然似ていない、純粋で天真爛漫なキャラ特性を備えたすごいヤツだ。ボクとはとっても気が合うので、遊びに来たら一日中一緒に遊んでいる。何ならお風呂までボクと一緒に入りたがるくらいだ。なぜって康太はお風呂でボクの最終奥義「ぶるんぶるん」*を見て感動したからだ。ケタケタと大笑いした後で、一緒にやりたいと言って練習もした。後で康太の母さんにマジな目で怒られたのは今となってはいい思い出だ。ちなみに康太の母さんは今でもボクを見る目だけは、何故か南極レベルの冷たさを保っている。もしかしてペギラなの?といつか聞いてみたい。そんな怖いこと聞けんけど…
「おじしゃーん!」
康太は毎回絶叫しながら家のドアを開けて入ってくる。そのテンションの高さにボクは遊びココロのスイッチをオンにした。奥さんはまたかとため息をつき、康太の母さんは毎度冷たい視線をボクに向けた。
きっと康太の父親に原因があるのだ。超絶優秀な康太の父さん。ボクより年下ながらあり得ない大学のあり得ないような研究所で働いている。寡黙で静かな康太の父ちゃん。ボクとの関係性は悪くない、というよりも向こうがボクを人知を超えた生命体だという目で見てくる。理性の塊のような康太の父ちゃんと己が感性のまま生きるボク。さしずめボクらはスターウォーズのフォースの表裏を実践してるような関係だ。
「おじしゃーん!シッポカッコ良いーーーー!!!」
「ボクも欲しいーーーーー!!!」
「いいぞ!教えてやるーーーー!!!」
ボクらのハイテンションをよそに、相も変わらず奥さんと康太の母さんの目は冷たかった。康太の父さんは今回も研究室の実験が終わらんとかいう理由でこの会には不参加だ。聞けば月の半分は研究室で寝泊まりしてるらしい。
「おじしゃーん!ヤモリ、捕まえてーーー!!!」
突然のオファーだ。まったく子どもってのはどうしてこうも唐突に主張してくるのだろう。
「分かった。じゃあ道具を持って、行くぞーーー!!!」
ボクと康太は虫取り網なんかの道具を抱えて、団地裏の小山に探検に出かけた。奥さんと康太の母さんとは目も合わせない。こういう時は後先考えずに行ったもん勝ちだ。それに幼い康太にはきっとこういう探検の経験値は絶対に必要だ。きっと康太の父ちゃんには苦手な分野だから。だからボクらはうまくやっているのだろう。
ヤモリなんてそう簡単に見つかるものではない。15分と経たずに、やがて康太はヤモリ捜索に飽きてしまい近くの草原に足を踏み入れてバッタと遊び始めた。暑すぎず、寒すぎず、今の時期はこんな探検ごっこには最適だ。ボクは空を見上げると、穏やかな日差しとそよぐ風に春の盛りを感じていた。と康太が大きな声でボクを呼んだ。
「おじしゃーん、これなあに?」
康太の手には謎の物体が握られていた。
(イラスト ふうちゃんさん)
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