キツネなシッポと遊びましょ、の話⑤番外編です〜第三幕〜ぶるんぶるんの悲劇
とりあえず話④を読んで頂ければ世界観が伝わります。うっすーい世界観。でもマジメな作品を続けたら、ついついおフザケ作品も欲しくなりません? 箸休め、ですね。よければアルマジロ編もどうぞ。
↓今回はボクと少年と、こんな謎の生物との短いココロの交流の物語を描いてます。
「康太クン、これなあに?」
「わかんない。でもなんか生きてるみたい」
「ふうん、変なカタチだね。」
いつの間にか康太と女子警官はつちのこクンに興味津々な様子だ。
「おじしゃんがね、つちのこみたいだって」
「ふうん、でもよく見たらちょっとカワイイかも。」
女子警官がアタマをツンツンすると、急につちのこクンが元気になった。さっきまでのグダグダ感がウソのようだ。やる気満々に目を見開き、なんだか少し大きくなったように見えた。
「ヤダ。何、コレ?」
女子警官が女子の顔になった。
オマエ、子どもの前でナニ考えてるんだ。ボクは女子警官の脳内世界が下品すぎて引いてしまった…
「おまわりしゃん、なんか大きくない?」
「そ、そうね…」
やめとけ、それ以上考えちゃダメだ。なぜかボクとはフォースで意識を共有してる。お互い脳内で考えてることは手に取るようにわかるんだ…
女子警官はキッとした目線でボクを見た。
…何よ、アンタがおかしなモン持ち込むからじゃないの!
…知らんがな。大体今の今までそんな風には思ってなかったぞ!お前の方こそ、根が下品なんじゃないのか?
…アンタと一緒にしないで!!
ボクらの脳内世界では激しく火花が飛び散った。康太は不思議そうに僕らの方を見ていた。と突然康太が何かを思いついたようだ。つちのこクンを握りしめると、得意そうにコッチを見た。
「ねえ、ねえ、みて。ぶるんぶるんだよ。」
康太はつちのこクンを両手で握ると、激しく左右に振りだした。つちのこクンは康太に足?もとを握られてブルンブルンと頭部を振り回された。
「こ、康太クン?」
…ちょっと、アンタ子どもに何教えてんのよ!
「イ、イヤ…」
…だって、こんなトコで披露するなんて想定外だって!
女子警官は口元を両手で抑え、顔を真っ赤にして康太の荒業を呆然と見つめた。無邪気な康太は、ボクらの注目を集めて得意気な顔でぶるんぶるんを披露した。それは、あの時お風呂で練習したのよりも、遙かに見事なぶるんぶるんだった…
「どうしようかな、コレ?保護してもらえます?」
「持ってって…もう、知らない…全部先輩に言いつけてやるから!」
女子警官は顔を赤らめたまま奥に引っ込んでしまった。後にはぐったりしたつちのこクンがひとり取り残された。
ああ、帰ったら僕はまた奥さんと康太の母さんの冷凍光線を浴びるのか。煉獄の炎の次は冷凍攻撃だ。でも今回のはボクのせいじゃないよね。ねえ、康太。これって不条理ってヤツじゃないの?
まあいいか、康太カワイイし。これもまたいい経験だ。でもな康太、もう人前でぶるんぶるんはかましちゃいけない。大人になったら捕まるからな。ボクは康太の頭をなでながら、ココロの中でそう康太に話しかけた。
つちのこクンは目を覚ましたようだ。気だるい感じを全身で表すかのようなグダグダ感だ。どうすんだろ、コイツ?ここに置いていこうかな。その方がやる気出しそうだし。
ひと仕事終えた人がよくそう思うように、彼(コイツ)もまた生きようと思うのだろうか?
↓女子警官さんのイメージです。日本テレビ、ドラマ「ハコヅメ」より
(イラスト ふうちゃんさん)
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