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【第17回】【推薦図書】地区防災計画制度入門【内閣府「地区防災計画ガイドライン」の解説とQ&A】

質問 「地区防災計画制度入門」について教えてください。

概要

 地区防災計画制度入門」(NTT出版)は、地区防災計画制度創設当時の内閣府の防災担当官によって書かれたテキスト・解説書です。その要点は以下の4点です。
 ①内閣府防災担当官執筆の地区防災計画学のテキスト、著者は地区防災計画学会創設に中心的役割
 ②地区防災計画ガイドラインや関係法制度の解説
 ③実務的観点からのQ&A
 ④事例を踏まえた後継本は「防災の法と社会 熊本地震とその後

解説

①内閣府防災担当官執筆の地区防災計画学のテキスト、著者は地区防災計画学会創設に中心的役割

 「地区防災計画制度入門」(NTT出版)は、「内閣府「地区防災計画ガイドライン」の解説とQ&A」という副題が付された2014年の制度創設当時の内閣府の防災担当官によって書かれたテキスト・解説書です。地区防災計画学の「古典」といわれています。
 筆者である西澤雅道氏及び筒井智士氏は、内閣府の防災担当官として、2014年に公表された「地区防災計画ガイドライン」や「平成26年版防災白書」の特集の執筆を担当しました。その際のノウハウをいかしつつ、行政の資料としてまとめきれなった情報、学識経験者等の指摘を踏まえて、筆者たちが個人的に進めた研究等を含めて、研究者だけでなく、地区防災計画づくりの現場でも参考にできる資料として後世に残すために、NTT出版の協力を得て執筆されたのが本書です。
 筆者たちが地区防災計画学会設立の中心メンバーであったことから、本書は地区防災計画学会で広く読まれる書となりました。なお、本書は、筆者が所属していた組織や所属している組織等の見解とは無関係であるとされています。行政官が執筆している専門書は、一般的にこのような位置付けになっています。

②地区防災計画ガイドラインや関係法制度の解説

 本書は、内閣府が公表した「地区防災計画ガイドライン」が全く世に知られていない時期に出版されたことから、冒頭の「第1部 地区防災計画ガイドラインの紹介」では、地区防災計画制度が創設されるまでの背景、関係法制度の概要、地区防災計画制度の基本的考え方について詳しく説明しています。
 また、内閣府の「地区防災計画ガイドライン」の概要、本体、別冊(地区レベルの防災活動の取組事例)も組み込まれており、地区防災計画づくりのテキストとして利用されてきました。
 地区防災計画制度は、従来の行政主体で、中央集権型・トップダウン型の日本の防災制度に、共助によるコミュニティ防災を基本とした住民主体ボトムアップ型の仕組みを導入したことから、日本の防災が新たなステージへ進んだことを説明する専門書としての役割も果たしてきました。

③実務的観点からのQ&A

 地区防災計画制度が、東日本大震災の教訓を踏まえた災害対策基本法の改正よって創設されたのが2013年6月で、地区防災計画ガイドラインが公表されたのは2014年3月です。そして、この地区防災計画制度が施行されたのは2014年4月です。本書が世に出されたのは、2014年9月となっていますが、当時は、地区防災計画制度が世の中に全く知られていませんでした。現場の行政官の方たちもどのように本制度を適用していいかわからない、コミュニティの現場でも、住民を主体とした自発的な共助によるボトムアップ型のコミュニティの防災計画づくりの制度ができたのかもしれないけれども、前例もないのでどう取り組んでいいのかわからないという状況でした。
 そのようなこともあり、地区防災計画学会でのアカデミックな議論も踏まえて、地区防災計画制度について、Q&A形式で詳細に解説がされています。
本書は、学術的に地区防災計画学について論じる際には、引用されることが多くなっています。

本書の目次

第1部 地区防災計画ガイドラインの紹介
 地区防災計画の全体像
 内閣府「地区防災計画ガイドライン」(概要)
 内閣府「地区防災計画ガイドライン」(本体)
 内閣府「地区防災計画ガイドライン別冊 地区レベルの防災活動の取組事例」
第2部 地区防災計画Q&A
 制度の背景
 計画の基本的考え方
 計画の内容
 計画提案の手続
 実践と検証
第3部 地区防災計画に関する研究
 地区防災計画のモデルの概要と解説
 地区防災計画チェックシート

④事例を踏まえた後継本は「防災の法と社会 熊本地震とその後」

 本書の執筆者である西澤氏が、福岡大学に出向していた際に、現場での地区防災計画づくりの事例を踏まえて執筆した本に「防災の法と社会 熊本地震とその後」があります。
 2016年の熊本地震、2018年の西日本豪雨等での経験も踏まえ、2019年に法律学、行政学及び社会学の研究者が一緒に執筆した学際的な研究書です。法律学の専門書で有名な信山社から出版されており、法律書としての性格も持っています。なお、2022年には、西澤氏も含めた地区防災計画学会のメンバーによって、「地区防災計画学の基本と実践」という専門書が弘文堂から出版される予定です。

参考

 この「地区防災計画制度入門」は、海外の研究者からも注目を集めています。例えば、中国地震局の担当官である伍国春氏による翻訳によって、中国の名門大学である华中科技大学出版社より、中国語で下記のような書籍として発刊されています。なお、伍氏は、田中重好名古屋大学名誉教授のお弟子さんであり、名古屋大学で博士号(社会学)を取得されています。

伍国春・西泽雅道「东日本大地震后的日本减灾制度研究」(2019・华中科技大学出版社)


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