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老健でただ一人の言語聴覚士として働いて気づいたこと

こんにちは。
お読みいただきありがとうございます。
言葉好きの言語聴覚士 ちかです。

X(旧Twitter)にて細々書いていたのですが、
一人職場で言語聴覚士(以下ST)の仕事をして気づいたこと、
感じたことの振り返りを今日は綴りたいと思います。

一人職場で働こうか迷っているSTの方や、
ST不在の現場で働いているスタッフの方に読んでいただけたら
嬉しいなと思いながら、書いていきます。



私のST歴

私は専門学校を卒業してから5年間、病院勤務をしておりました。
回復期のリハビリ病棟で3年。
その後急性期病棟で2年。

職場には私を含め5人STがいました。
先輩にも後輩にも恵まれて、
割と伸び伸びと働けていたと思います。

困った時にはすぐに相談できる環境。
検査やリハビリに使う道具も充実しているし、
当たり前にST用のリハビリ室もあった。

STが当たり前にいる環境で働き、やりがいも感じていました。
何もなければそのまま、その病院で働き続けていたと思う。

ただ、夫の転勤の都合により、退職をすることになり、
人生初めての転職をすることになりました。
しかも、縁もゆかりもない土地で。

正直資格があればどこかしらで働くことはできると思っていたものの、
夫が転勤族という都合上、
数年で退職しなければいけないことと、
私が運転免許を持っていないことがだいぶネックになりました。
ローカルで生活するには車の運転はマストですね…

幸いなことに少し苦労はしたものの、
就職エージェントの力を借りて、老健施設での採用が決定しました。

施設にとって初めての常勤ST。
他所から来たという立場なので、
職員や利用者から受け入れてもらえられるのか。
介護領域の知識がないこともあり、
不安は大きかったですが、
ありがたいことにこちらの職場も皆様暖かく私のことを歓迎していただいて、
とても救われました。

ST不在の介護施設の現実

ただ、働き始めた時の施設の様子は、
ツッコミどころだらけだった。
想像をしていなかったレベル、と言っても過言ではない。
病院で働いていた時の当たり前は全く通用しない、そんな状況でした。

ちなみに、簡単にまとめたツイートはこちら。


スタッフの人手不足、忙しさがあるのはもちろんなのですが、
嚥下障害に関する知識を得る機会がなく、
お食事の介助をするときに危険な食べさせ方をするスタッフが多いこと。
また、自力で召し上がれる方でも、
むせている人、食べ方が危ない人がいてもノーマーク。

歯磨きに関しても、ご自分で磨くことができれば全部その人任せ。
磨き残しがあったり、
入れ歯の裏側に汚れが残ってしまっている方などもたくさんいました。

病院勤務時代にも同様の悩みはありましたが、比ではなかった…

ここで私のSTとしての使命感に火がつきました。笑

技術や知識が私より遥かに上のSTは山ほどいるけど、
この場所では私が率先して動いて協力して、指導しなければ。
利用者さんのため、スタッフのために。

そんな気持ちで働いた2年間。

一番心強かったのは、栄養士さんの全面的なバックアップ。

これまでSTがいなかったときに、STの代わりに利用者さんの食事の様子を見て、お食事の形態を調整してくれていた存在。
栄養士が食事場面に積極的に介入することは、病院ではなかった。
食事の食べ方の指導や形態の調整はST、
食事の提供量や栄養バランスの調整は栄養士。
良くも悪くも役割分担がはっきりしていた。

けど、STがいない現場では、そんなことを言っていられず。
STの役割まで担ってくれていた栄養士さんの存在に救われました。

一緒に食事場面を見てもらい、
スタッフや医師に情報を共有するところも手伝ってくれる。
私の熱量高めな意見や提案も真摯に聞いてくれる。ありがたいです。

そんな協力体制もあり、
こちらからの過剰なまでの(笑)積極的な働きかけによって、
介護士さん看護師さんの嚥下障害に対する認識や意識が少しずつ変わっていく。
その感覚が私のモチベーションや、やりがいにつながっていきました。

※一人職場で働くに上で実践してよかったことについては、
また後日記事にしていきたいと思います。

STが介入した2年間での変化

一つ目は、スタッフの方の介助の仕方の変化。
現場の忙しさは相変わらずですが、
「ここだけは押さえておいてくれ!」と言ったポイントが
頭にあるかどうかで、以前に比べて危険な介助をしている方が減りました。
私が食事の時間に顔を出すため、
無言の圧力があるせいなのかもしれないけど。笑

二つ目は、現場からのアプローチ。
むせが気になる、食べ方が早い、食事の姿勢が悪い
入れ歯があっているか確認してほしい
会話の時に使えるコミュニケーションノートを作りたい
などなど、スタッフの方から
たくさん意見をもらうようになりました。

食事、口腔ケア、コミュニケーションなどに関する
相談相手がいることで、
視点を広げて利用者を見る、疑問が浮かぶ。
STに伝える。という、いい流れが作れたと感じています。

最後は、利用者の口腔衛生状態の改善。
これは私が、というよりかは、出張でいらっしゃる
歯科衛生士さんのおかげなのですが。
歯磨き指導をしてくれるため、
以前とは見違えるほど全体的に、皆さんのお口の中が
きれいになりました。
口臭ある人も少なくなった。
加えてS T介入の効果もあり?
以前よりも誤嚥性肺炎の診断がついて入院する方が減少したと、
施設長からもコメントをいただくことができました。

私自身が学んだこと

働く中で感じることはいろいろありますが、
一番の学びは、
利用者さんたちが、話し相手を求めている
ということ。
介護士さんは日常的に関わる人、お世話をする人。
忙しそうで話しかけにくい。

利用者さん同士で話すこともあるけど、
うまくコミュニケーションが取れないこともある。

そんな時、STがちょうどいい話し相手になれると、
少し息抜きができるのかな。
利用者さんと話をしていると、そう思うことがよくあります。

本人の気持ちや希望、ちょっとした不満など
もらしてもらえると、嬉しい気持ちになります。

それを現場や家族に伝える、
少しでも施設での生活が心地よいものになるように、
可能な範囲できることをする。
コミュニケーションの専門家の立場上、
これからも意識していきたいことです。

リハビリで口の体操をしたり、言葉の練習をしたり、
もちろんそれも大事だけど、
それ以上に会話の時間を作るということ自体が
一番大事なことだなと、老健での経験を通して感じました。

私自身も利用者さんと話していて、救われることもたくさんあります。
自分の三倍近く生きていらっしゃる先輩方のお話を
聞ける機会があるのもありがたいことですね。

そしてもう一つは、
スタッフ同士のコミュニケーションの大切さ。
チームで介護をする以上、
それぞれの専門的な知識を持ち寄りつつ
時には垣根をこえて意見を交わす、
体を動かす。
この積み重ねが、
お互いの知識や技術のブラッシュアップに繋がるなと思いました。

他職種がどんな理由で何をしているのか、
もっと積極的に知りに行く姿勢は
今後も心がけたいと思います。

ここまでお読みいただき
ありがとうございました。



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