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リモートワーク に不向き?な日本の文化|リモートワークの課題は「コミュニケーション」で解決するかもしれない(2)

*2023/6/16 更新

こんにちは。おくやまです。
WEBディレクターです。

東京・沖縄・ベトナムという離れた拠点で起こるコミュニケーションの課題を試行錯誤してきた経緯から、初めてリモートワークを実施されている方に向けて、この経験が少しでも何かのお役にたてればと思い、「リモートワークの課題はコミュニケーションで解決するかもしれない」というテーマでnoteを書きます。

前回「伝えたつもりミスコミュニケーション」について書きましたが、その記事の中で少し触れた「全てを言わない日本の文化」について、もう少し掘り下げていきたいと思います。

前回のnoteはこちら。


異文化コミュニケーションに学ぶ、日本の文化

同じものを見ていても違う解釈が起こる
異文化コミュニケーション

経済産業省が行っている「外国人受入インターンシップ」(現在は「国際化促進インターンシップ事業」)というプログラムに受入企業として研修に参加したことがあります。「異文化コミュニケーション」について、3日間に渡って基礎知識の講習・ワークショップ・ディベートなどいろいろな角度から学びましたが、最も大きな気づきとなったのは、改めて「日本の文化」について知ったことでした。


コンテクストが高い日本の文化

コンテクストの高/低のコミュニケーションの違い

「コンテクスト」(context)とは、文脈・(文章中の)前後関係・状況・背景などを指す言葉です。「コンテクストが高い」とは、コミュニケーションにおいて言葉が少なくても(文脈や背景といった共通認識があるため)理解できること、逆に「コンテクストが低い」とは、全てを言葉で説明しないと理解できないことです。日本は非常に「コンテクストが高い」文化だと言われています。これは世界でも稀な文化で、多くの国でコンテクストのレベルは「中」〜「低」なんだそうです。

コンテクストが高い日本は「空気を読む」「状況を察する」文化であるといえ、周りの雰囲気に合わせて行動したり、誰かに言われなくても察することが「良い」とされて、そうした行動が求められる場面もあります。そのため職場では、指示がなくても「やっておきました」という人が評価され、指示や依頼を超えた対応を期待されたりします。

一方で「コンテクストが低い」文化では、指示された/任されていることだけを対応します。自分に与えられた仕事をすることで評価され、その分の対価をもらう考え方なので、それ以上は要求されないし、それ以上の仕事をするという考えはありません。

ではここで「伝える側」について考えてみます。


曖昧な言葉で成り立つ日本の文化

コンテクストが高い日本の文化では、受け取る側が察してくれるので言葉が「曖昧」でも伝える側の意図は割と通じます。

Hapa英会話のポッドキャストで「言語と文化の関係」というテーマを扱った回に、とても興味深いエピソードがありました。(下に英文の翻訳があります)

今日のエピソードでは、ジョシュアさんが言語と文化の関係性について語る、とても興味深いテーマです。日本語は、表面上には見えない隠された意味や潜在的なメッセージが沢山あることをジョシュアさんは日々実感しており、それが日本語を勉強している外国人にとってどれだけ厄介であるかについて話します。

I feel that learning English is a little easier than learning Japanese just cuz (because) the language is not so tied to the culture. (中略)when the teacher in Japan tells you “it’s cold” you have to understand that, that means go close the window. Not that he’s just complaining that it’s cold. You know that’s…you know, underlying cultural message here.

Hapa Eikaiwa 英語学習ブログ Podcast 第57回「言語と文化の関係」

(Google翻訳)
英語を学ぶのは日本語を学ぶより少し簡単だと感じます。なぜなら、言語は文化とあまり結びついていないからです。(中略)日本の先生が「寒い」と言ったら、それは窓を閉めなさいという意味だと理解する必要があります。 ただ寒いと文句を言っているわけではありません。 それが…根底にある文化的メッセージなのです。

・・・

このエピソードでは、外国人が「言葉の裏側」を察する文化を理解することは難しいということを述べていますが、逆に言えば、コンテクストの高い日本の文化の中にいれば「曖昧」を超えて「直接的な言葉」がなくても「窓を閉めて欲しいんだな」と意図を察して行動できることを表しています。「寒い」とだけ言う先生は、無愛想な印象ですけれど・・。

一方、コンテクストが低い文化では「曖昧な言葉」では成り立たず、伝える側は「全て正確に伝える」ことが求められます。例えばWEB制作の現場で変更を依頼するとき、2つの文化を比べると以下のような違いが生まれます。


▼コンテクストが高い文化
ページ名△△に変更してください」

▼コンテクストが低い文化
ヘッダー/フッターのメニュー、ページ内のタイトルとパンくずリスト、メタ情報のタイトルにあるページ名○○を△△に変更してください」


直接コミュニケーションをとっている場合は、その場で「ここも変更が必要ですね」など会話が生まれて確認することができますが、チャットや文章上でコミュニケーションをする場合は、テキスト変更が「複数箇所」であることは伝わらない可能性があります。



日本企業は、役割の境界線が曖昧な「O型組織」

M型組織/O型組織の役割分担

組織構造についても少しだけ触れてみます。大きく分けて「M型組織」と「O型組織」という考え方があるそうです。

M(Mechanistic)型:機械論的
全ての役割が決まっていて、問題が発生した時には「誰の責任か」を議論する組織

O(Organic)型:有機的
全ての役割は曖昧で、問題が発生した時には「どうして問題が起きたか」「誰が対応するか」を議論する組織

「O型組織」である日本の職場では役割分担がきっちり決まっておらず、時々「宙に浮いてしまっているタスク」が発生します。「誰かがやるでしょう」とみんながお見合いしている状態です(わたしの会社では、電話受けの役割は決まっておらず、なんとなく新入社員か一部の女性が対応していました)。この役割分担が曖昧なタスクは、マネジメントが行き届いていることや、普段オフィスで顔を合わせていれば声を掛け合って解消できるかもしれませんが、リモートワークの場合はその機能が低下してしまうことが考えられます。

海外で仕事をしていて思うこと

ベトナムではベトナム人のメンバーと一緒に仕事をしていますが、ベトナム語ができないわたしは英語を使ってコミュニケーションをしています。

「英語」は「日本語」よりも端的に正確に伝えることに向いていると思います。いろいろな言い回しが成り立つ日本語は、複雑な文章になりがちです。「ページ名△△に変更してください」「△△にページ名直せますか」「ページ名ですが、⚪︎⚪︎を△△に修正お願いします」他にも無数に別の言い回しができます。英語では、基本「Change A to B」です。この違いは、日本語が「文化」に影響されて成立していることによるものだと考えますが、日本語の文章で「正確に伝える」ことの難しさが現れているのではないでしょうか。

一方で、ベトナム人・日本人にとって英語は第二言語。お互いの理解力や記憶力だけを頼りに「口頭」だけでコミュニケーションをすることはせず、口頭で話し合ったら必ずそのあとに、チャットや資料など文章にして送ります。さらに言葉の選び方・伝え方・抜け漏れがないかどうか(指示が網羅されているか)など、「自分がコンテクストの高い文化」であることを常に意識するようにしています。

それでも時々、全く思いもよらないことで、ミスコミュニケーションは起こります。仕事方法や習慣、大切にしているものや文化、根底にあるものが違えば、発想や連想するものも異なるからです。

これは「異文化コミュニケーション」に限らず、リモートワークにおけるコミュニケーション全体に言えるのではないでしょうか。相手の顔が見えないコミュニケーションでは「伝わり方」は常に一定ではなく、こうした状況では日本の文化であるコンテクストの高さは少々やっかいです。

ミスコミュニケーションは完ぺきに防ぐことは難しいですが、それでも出来る限り避けるための工夫をすることが、最大のリスクヘッジであり最大の効率化だと考えます。

日本の文化はリモートワークに不向き?

異文化コミュニケーションの視点から日本の文化について考えると、リモートワークで気をつけないといけないポイントがわかってきました。

日本の文化(コンテクストが高い)
・「察する」「空気を読む」文化
・「言葉」が曖昧でも伝わる文化
・「役割」が曖昧でも成り立つ文化

顔が見えず「察すること」「空気を読むこと」が難しいリモートワークでは、コンテクストが高い文化であることを意識して、曖昧さを回避しながら正確性・網羅性をもって伝えることでミスコミュニケーションはかなり解決できそうです。また、役割分担がされていないタスクについて、一度整理してみることもよいかもしれません。

*余談ですが、日本の文化や日本語の性質を理解することは、曖昧さを避けて文章を正確に書く必要がある「翻訳ツール」や「ChatGPT」を利用するときにも有効です!

曖昧さを回避して、リモートワークを円滑に!


主語・目的語を省かず、5W1Hを明示する!

口語をそのまま文字にした時に省きがちな主語・目的語ですが、全ての情報は正確に書くことを意識します。なぜ(WHY)/どんな理論を(WHAT)/ 誰が・誰に(WHO・WHOM)/ いつ(WHEN)/どこで(WHERE)/ どのように(HOW)を意識するとわかりやすく、このあたりの曖昧さをなくすことで正確性・網羅性が保たれます。

言葉を正確に使う!
日本語は単語を曖昧に使っていることが多いと思います(正確でなくても通じるので)。正しい単語を選ぶことも大切です。

ややこしい言葉の回避
直感的に理解できない表現や混乱を招く書き方はなるべく避けて、できるだけ「名前」や「固有名詞」を使用します。

例)弊社・御社は何度も出てくると、ややこしいので社名や名前で書く/「これ・それ」ではなく固有名詞を使用する、など

わかりにくいことは、図示/表にする!
文字だけで理解しにくいことは、図示/表にして、視覚的に理解できるようにします。わたしは主にGoogle Drive(スライドやスプレッドシート)を使用しますが、簡単なものはキャプチャを送るだけで解決することもあります。

次のnote「伝わるアウトプットの整理術」では、わかりやすい図示ついてご紹介します。

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まとめ

・コンテクストが高い日本の文化を知ることが大事
・役割分担が曖昧なタスクは整理する
・言葉の曖昧さを回避して、リモートワークを円滑に

ここまでお読みいただいてありがとうございます!

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↓最後の記事「伝わるアウトプットの整理術」


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