Haseve Kikaku

長谷部代表より命を受けたしがないタレント達が旅先を紹介します。 このシブさを観られるの…

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長谷部代表より命を受けたしがないタレント達が旅先を紹介します。 このシブさを観られるのはHaseve Kikakuだけ! さあ、明日はもっと面白い https://youtube.com/channel/UCyPEZCBYUabbDtduSyLNQ0Q

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  • 朝の連続長谷部小説【これが夢なら醒めないで】

    全ての働く大人達へ贈る物語

最近の記事

エピローグ

―――あれから一度も夢を見ることはなかった――――― 陽が落ちるとまだ風が効いてくる、そんな黄昏時。長谷部は、故郷・・と呼べるほど遠くに住んでいるわけではないが、慣れ親しんだ街角に降り立った。小走りで駅前ロータリーから南へ突き進むと、目的地が見える頃には身体が温まっていた。馴染みのない黄色い看板が、小さいながらも、新しい事もあってか堂々と掲げられているように見える。そんな居酒屋の入り口の前に立って深呼吸し、息を整えた。 あれから何度も終点から終点へ、目を閉じては往復した。し

    • 最終章 大脱走

       会場中に響き渡る大ブーイングの傍ら、二人の男達は、抜き足、差し足、忍び足。客席からひっそりと、姿を消していた。そう、長谷部と香西課長は誰よりも早く換金所を目指したのである。 「Congratulation,Congratulation・・・」 妙に上がらないテンションの英語と共に、現金1000万超が、長谷部達に手渡された。換金所のスタッフもまた、黒いスーツにサングラスだったが、あのおっかない黒服とは全く体型も風格も異なる、威圧感のない落ち着いた男性だった。 「なんで英語なん

      • 第16章 リベンジマッチ

         目の前の光景に圧倒されていた長谷部だったが、ふと、視界に見覚えのある背中を捕らえ、目を細めた。間違いない、二階部分の隅でスロットマシンに興じていた猫背の中年は、香西課長そのものだった。 「絶妙なタイミングだなおい。」 香西の元へ歩いていくと、やっぱりといえばやっぱりなのだが、残念ながら、負けているのは明白だった。相変わらずこの男は悲痛な面持ちをしている。 「課長。お待たせしましたっ。」 スロットの音がうるさかったのもあり、わざと大きめの声で話しかけたのだが、思いの外、香西課

        • 第15章 スーパージェスコ

           長谷部と三谷は屋上の柵にロープを括り付けると一人ずつ、するすると降りることにした。望美の働いていた四階喫茶店へは、思いのほかスムーズに入ることができそうであった。これも下準備通り、彼女が窓の内鍵を解除してくれていたからである。 「よっ・・と。」 三谷がまず先に片手でロープを掴んだまま、窓に手をかけ、足場を確認しながら中へと吸い込まれていった。イテッという声が響く。どうやら着地に失敗したようだ。長谷部が心配そうに屋上から様子を伺っていると、三谷はすぐに窓から顔をだし、手招きし

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        • 朝の連続長谷部小説【これが夢なら醒めないで】
          19本

        記事

          第14章 種の行方

           遅れること半日。長谷部は煙草の香り漂う一室で立ち尽くしていた。もうかれこれ何時間こうしているのだろう、そう思わずにはいられないほど、激しい『詰め』に遭っていたのだ。 「もうやめろ、やめちまえ。やる気ないんだろ?ん?」 支店長はそう言い捨てて、個室を後にした。長谷部は一人、取り残される。 「やる気なんて一度もないさ・・。」 ため息すら出ることはなかった。10秒もしないうちに、遠くの方から支店長の怒鳴り声が聞こえてきた。どうやら次の標的は香西課長のようである。当たり前かもしれな

          第14章 種の行方

          第13章 現実

           夕陽が眩しかった。西の空は真っ赤に燃えて、いつまで経ってもこの街を照らしているように見える。日に日に夜は短くなり、また新しい一年が始まろうとしていた。春分は過ぎたのだ。思えばこの一年間、何をしていたのだろう。間違いなく23年の人生の中で、一番無意味に過ごしていたと、長谷部は心の底から感じている。 「ほら、買ってきたぜ。」 三谷がルートビアとグミを持って視界に現れた。それらはコンビニのビニール袋に入っていた。  オレンジ色の屋上駐車場で缶を開け、長谷部と三谷は乾杯した。そう、

          第13章 現実

          第12章 セカンドチャンス

           4畳半ほどの洋室は、外の寒さとは裏腹に、異様な熱気に包まれていた。 「・・・これ案外イケるな。」 明らかにしなびた饅頭をほおばり、三谷は壁にもたれかかっていた。香西は無表情で椅子に座り、机に肘を乗せ頬杖をついている。くたびれた野郎どもが三人、各々の時間を過ごしていた。時計の針は既に1時15分を指している。もう深夜だ。香西課長の書斎、というのにはあまりにも粗末すぎるこの小部屋に、長谷部たちは潜伏することになったのだが・・。 「なあ、どうするよ。」 食べかけの饅頭を片手に三谷が

          第12章 セカンドチャンス

          第11章 人生の主人公

           その扉を開けた瞬間、冷たく、しかし澄んだ風が体の中まで吹き抜けた。そうだ、忘れかけていたが今は3月の夜なのだ。  あの黒服がどこまで追ってきたかは分からない、それでも長谷部は未だに全速力で走り続けていた。それなのに、だ。出口を出て三谷の逃げた方向へと駆け出そうとすると、今度はまた守衛らしき男が二人、こちらに向かってくるのが見えたのである。 「なんだよ・・。」 長谷部は回れ右をして折り返し、南東の方角へと走り出した。もちろん当てなどない。このジャスコは北側を国道に面しており、

          第11章 人生の主人公

          第10章 VSジャスコ(後編)

           熱い、それでいて息苦しい。そして・・真っ暗だ。冬服に全身埋もれた長谷部は動悸が収まらなかった。全速力で走ったせいもあるが、動揺していた。こんなに新鮮な空気のありがたみを感じたのは初めてである。何が起こっているんだ・・? 「おい、三谷・・。」 長谷部は三谷に聞こえるかわからないほどの僅かな声量で呟いた。が、しかしすぐに返事は来た。 「おう・・俺もよくわかってないんだ・・・。ただ、トイレから出て戻ろうとした時に・・。」 まだ何も質問したわけでもないのに、三谷は説明し始める。 「

          第10章 VSジャスコ(後編)

          第9章 VSジャスコ(前編)

          PM9時。ジャスコ4Fの寂れたゲームコーナーでは、平日から二人の男がはしゃいでいた。昼間時間を潰し、たむろする大した趣味のない老人連中は、とっくのとうに帰宅し今頃はきっと、何の意味もない一日を終えようとしているのであろう。それはともかく、長谷部は珍しく浮かれていた。 「予習ってこういうことかよ。・・まあ悪くないけどな。」 100円を投入し15枚のメダルと交換している三谷に向かって長谷部はにやついている。そう、無事カジノに潜入できた時のためにメダルゲームでイメージトレーニン

          第9章 VSジャスコ(前編)

          第8章 交渉

           香西は時計を眺めていた。午後4時15分。約束の時間から15分、未だに『やつ』が現れる気配はない。来店客が訪れるたび、怯え、姿勢を正し、横目で観察する。しばらく経ち、それが違うと気がつく。こうやってもうどのくらい過ごしたのだろうか。香西は疲れていた。  昨晩のことだった。帰宅途中、電車から降り、携帯電話を確認しようと、歩きながら恐る恐るポケットに手を入れたその時、ちょうど着信が鳴り響いたのである。おかしい、連中の番号からかかってきた際はサイレントマナーになるように設定してい

          第8章 交渉

          第7章 招待状

           長谷部は大きなため息をついた。目的地に着いてしまったのである。相変わらずの大きさ、丁寧に手入れされた芝生、そしてレンガ造りの2階建て。ただ一つだけ昨日と違っているのは、愛車の白いクラウンが停められていなかったことだった。外出中なのだろうか。 「ほへー、思ってたよりも豪邸じゃん!」 三谷は興奮した様子で邸宅の隅から隅まで覗き込み、観察していた。事あるごとに、おお!だとか、 すげえ!だとかこぼしている。 「おい、チャイム鳴らしてみようぜ。俺かげから見てるからさ。」 三谷がせかし

          第7章 招待状

          第6章 課長の秘密

           雨に打たれ、濡れに濡れた二人は悲鳴を上げながら長谷部のアパートへと転がり込んだ。 「寒い寒い寒い。ひー。」 着ていたジャンパーを脱ぎすて、三谷は大げさに震えながら騒いでいる。彼は、かなりくたびれたジーパンにスタジャンを羽織るスタイルだったのだが、このジャンパーがもともとダボっとしていたこともあって、水を含むとかなり重そうに見える。長谷部は三谷にバスタオルを放り投げた。 「サンキュー。」 三谷は礼を言うとパンツ一丁になり、タオルで黒髪をガシガシと拭いていた。三谷先生に比べると

          第6章 課長の秘密

          第5章 三谷という男

           「おい・・長谷部、見てみろ。」 三谷は前を向いたまま、眩しさのあまり目をこすっている長谷部に声をかけた。 「駅・・?」 分岐した地下線路にポツンとたたずむ駅を見て、長谷部は首をかしげた。 「ああ、こりゃすげえぞ。」 三谷は興奮した様子で、光るホームへと走っていった。長谷部はそのあとをトボトボとついていく。 「よっと。早く来いよー。」 軽々とホームに登った三谷は、キョロキョロとあたりを見渡した。何かを探しているようだった。 「何探してんの?」 長谷部はホームによじ登ろうとしな

          第5章 三谷という男

          第4章 終点の向こう側

           激しい頭痛に襲われながら、長谷部は辺りを見渡した。シーンとした電車内。最初は真っ暗だと思っていたのだが、よく見るとぼんやり、座席や、つり革が確認できるような気がする。 「おいおい、どうなってんだよ・・・。」 長谷部は立ち上がり、携帯電話を取り出した。しかし、 「まじかよ・・。」 昼間仕事をサボってアプリゲームをしすぎたせいで、とっくに充電は切れていたのである。 仕方がないのでとりあえず、手探りで先頭車両を目指すことにした。しかしながら、どの車両にも人はいない。長谷部は座席に

          第4章 終点の向こう側

          第3章 学生時代

           ふと、気がつき、顔を上げると、長谷部は教室にいた。ここは、小学校・・? 教室の一番うしろに長谷部は立っていた。休み時間なのか、児童たちは走り回ったり、黒板に落書きをしたりして、騒がしかった。窓があいており、ベランダからの風が薄汚れた白いカーテンをなびかせている。その隙間から光が差し込んで、眩しい。 「おい、どうするよ今夜。いよいよだな。」 いきなり声をかけられビクッとする長谷部。振り返ると、そこには子供時代の岡が立っていた。 何も言わずに岡を眺めていると、小学生の彼は、興奮

          第3章 学生時代