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結婚したら名前が変わるのがスタンダード?変わらない国の事情と反応

みなさん、「結婚したら名前が変わる」のが普通だと思っていませんか?世界には、結婚しても名前が変わらない国が存在します。その国の事情と反応、お伝えします。

モンゴル

ファーストネーム+お父さんの名前

モンゴルは、結婚しても名前が変わらない国です。モンゴルはファーストネームとお父さんの名前で、モンゴル語表記だと、「お父さんの名前」の「自分の名前」で、日本語の「の」にあたる言葉まで入って、一人の名前です。
ミドルネームはありません。名前を書く順序は日本語と同じで、後半の名前がファーストネームになります。
一例として、大相撲元横綱の白鵬のモンゴル語名を見てみましょう。モンゴル語はキリル文字で書きますので、キリル文字とアルファベットを用意しました。

白鵬のモンゴル語名(出典:Wikipedia)

平たく言えば、「ムンフバト(Munkhbat)さん家のダワージャルガル(Davaajargal)さん」ということになりますね。上のような「お父さんの名前+自分の名前」という名前が海外でも通用する名前です。パスポートにはアルフベット転写で記され、「〜の」は入らないことが多いようです。
モンゴル人はこれ以外に「一族の名前」みたいな名前を別に持っています。これは一族で同じなので、苗字に近いかもしれませんが、日常生活には使いません(国民登録カードには載っています)。

寛容な「名前の呼び方」

モンゴル人同士では、基本的にファーストネームで呼び合うことになりますが、ニックネームも使います。その辺りは自由みたいです。また、学校などで同じ名前の人がいる場合は、識別としてお父さんの名前の頭文字で呼ぶこともあります。「オ」とか「ツェ」とか「ベー」とか。なにそれ、って感じですが、それが普通みたいです。
困ったことに、どちらの名前も見た目上は名前(ファーストネーム)なので、これが英語になると、どっちがファーストネームかさっぱりわからない事態になります。英語だったらSmithさんは多分苗字かな…とか判断がつく時がありますが、モンゴル語の名前は、モンゴル人でも判断がつかない。だって片方はお父さんの名前(ファーストネーム)だから。そして、英語の場合はファーストネームを先に書くことも多いので、さらに混乱。モンゴル語の名前にも男性によくつける、女性によくつける名前があって、本人の性別と比べてどちらがファーストネームか区別がつくときもありますが、男女関係なくつけられる名前もあるし、全然わからないこともあります。これはもう確認するしかありません。
逆に、日本だと苗字で呼ぶことが多いので、お父さんの名前で呼ばれているモンゴル人も多いようです。日本語で書くときは、お父さんの名前→自分の名前の順で書くことが多いので、そうなってしまうようです。でも、それで普通に暮らしていて、「どうしてもファーストネームで呼んでほしい!」というわけでもないようです。その辺り、かなり寛容なのがモンゴル人の性格で、やっぱり遊牧民は心も広いんだなと思います。

利点と難しい点

利点は、結婚しても、離婚しても名前が変わりません。名前が変わることによる煩雑な手続きはないし、離婚のハードルが少し低いかもしれません。

難しい点は、兄弟が複数いる場合、お父さんが違うとすぐわかります。名前を見るだけで、「ここのお家、家庭事情が複雑なのかな?」と思ったりします。逆に、お母さんがいくら違っても、お父さんが同じならわかりません。
それから、母子家庭の場合、お母さんの名前がつきます。お母さんの名前が女性っぽい名前だと、「何かあったのかな?」と思います。いろいろ詮索してしまいます。

アイスランド

ファーストネーム+なんとかさんの息子さん

アイスランドの名前の付け方は、ファーストネーム(ミドルネームがあることも)と、「お父さんの名前+息子/娘」です。一例として、アイスランドの大統領と首相の名前で説明します。

アイスランド・グズニ大統領とカトリン首相の名前(出典:Wikipedia)

大統領のグズニさんは男性なので、お父さんの名前に「息子」を表すsonがつきます。首相のカトリンさんは女性なので、「娘」を表すdottirがつきます。ミドルネームもあるようですが、ここでは省略しています。

利点は「息子か娘」だとわかること

この名前の利点は、名前を見ると男性か女性かわかることです。学校などで、男女比を探るのに役に立ちます(逆に、それくらいしか役に立たないのでは?)。しかし、名前に男女を示すものがつくので、そこも難しい問題かもしれません。中性的な言葉はないようなので。
ちなみに、例外的に苗字がある家系もあるそうです。

インドネシア

名前の付け方が自由すぎる

名前について特に決まりがなく、好きな名前を好きなようにつけるようです。名前が一つしかない人もいれば、5つある(!)人もいます。
多い名前は、イスラム教に関連する名前。男性だとアフマドさんやムハンマドさんがたくさんいます。たくさんいすぎて、アフマドさん、ムハンマドさんと呼ばれている人には会ったことがありません。大体それ以外の名前で他の人と被っていない名前がニックネームになるみたいです。

そして、名前になるならなんでもいいでしょ?ということで、ルーツや関係のあるところから名前をつけたりするみたいです。知り合いはBTSが好きで、生まれた子どもにBTSのメンバーの名前をつけました。両親が日本好きで、日本語の名前をつけられた子どももいます。ある日本語の名前を持った人に聞いてみると、両親のどちらかが日本人というわけではなく、本当に「好きだからつけた」ということらしいです。その名前以外にいくつか名前がつけられるのも、自由度が増している理由かもしれません。一つは日本的な名前、もう一つはイスラム的な名前、あとはおじいさんからもらっとく?みたいに。

生まれ月に関係する名前も多いです。日本でいう「弥生ちゃん」とか「さつきちゃん」みたいな感じですかね?
また、名前の付け方も地域や宗教によって変わるので、これが全てではないようです。インドネシア、広い…

「名前が変わる」ことが不思議

これはインドネシア人の友人と話していた時のことですが、「結婚したら名前が変わる」というのが、頭ではわかるけど信じられない、という感じでした。私の周りの友人は結婚したら苗字を変えたこと、カードや銀行口座の手続きが大変なこと、自分の苗字が嫌いだったから逆に良かったという友人もいたと話すと、不思議そうな顔をしていました。
他にも、モンゴルの生徒の反応。ある時、同僚(日本人)が結婚して、苗字が変わりました。モンゴル人の生徒は「○○先生は、もう○○先生じゃないの?」と不思議そうに聞いてきました。「そうだね、△△先生になったよ」と新しい苗字を教えると、「△△先生…」と、何度も復唱していました。多分、先生の顔をイメージしていたのかもしれません。日本人からすると、「ああ、結婚して名前が変わったのね」「旧姓で呼んでもいいよね」ぐらいの気持ちですが、モンゴル人の生徒にとってはなかなかない経験だったと思います。
名前はその人を表すアイデンティティ。それが変わることが不思議なのかもしれません。特に、インドネシアには「苗字」にあたるものがないことも、その理由の一つかもしれません。

選べたらいいのになぁ

私が今まで住んだことがある国がことごとく「名前が変わらない」国で、私自身も名前が変わらないほうがいいなぁ、と思い始めています。変わったら変わったでどうにかなるんでしょうけど、変えない選択肢もあったらいいのにな、と思います。

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