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大学生自転車日本一周旅四十日目:鳥取駅から京都府福知山市を経由して兵庫県西脇市へ

本編

 この日は野宿だ。二日間ホテルでいい思いをしたわけだし。ルートとしては、鳥取を出発して日本海沿いに進んで兵庫県に入り、その後豊岡市、養父市、朝来市へと南下しようと思っていた。さらにその後、一旦京都府に入って福知山市を通過した後、もう一度兵庫県に戻って丹波市へ、行けたら西脇市までと考えていた。鳥取市から一日で姫路市まで下りるという選択肢もあるが、途中にあまり街が無く、ハプニングが起こった際に対処が出来ないので、遠回りにはなってしまうがこのようなルートを取ることにした。

 昨日の最後、段差にぶつかっちゃったせいでこの日は朝からパンクが不安だった。だが、駐輪場に行ってタイヤを触ってみても昨日の夜から空気は減っていないようだったから、何とかパンクは免れたのだろうと思った。ただ、福岡から出発するときはパンパンだったのに、時間の経過もあって少し抜け始めていたので、そろそろ空気を入れに行かなければとは思っていた。できればこの日のうちに。

 鳥取を出発して、砂丘に行くときに通った道を再度通る。まずは岩美町へ。タイヤの空気をずっと気にしながら漕いでいく。少し減り始めているような気がする。内心冷や汗。岩美町に入ってコンビニでいったん止まり、空気を確認してみる。間違いなく空気は朝一よりも減っている。ただし、この日は平日だったし、まだ完全にパンクはしておらずもう少しは持ちそうと思って、豊岡市までは何とか行けるだろうと考えた。

 しかし、岩美町から兵庫県に入って新温泉町へと進む途中、岩美町から山を登っているときに、前輪がギブアップしてしまった。立ち漕ぎで体重がかかってしまったのもあるのかもしれない。タイヤが徐々に潰れ始め、兵庫県に入る前にはパンク状態に。お疲れさまでした。昨日の夜まだ閉店までは時間があっただろうから、見せに行っとけば何も問題なかったかもしれないのに。

 山道を押しながら進む。幸いなことに一時間も漕げば自転車屋はある。しかも登り切ってしまえばあとは下り。この日も天気は良くて海がきれいだ。山陰は自然豊かで海に山に楽しめる。夕日もきれいだったし。

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 スリップに注意しつつ街中へと下りていく。幸運なことに通る予定だった道沿いに自転車屋があるらしい。時間も10時を回っていたから営業していても何らおかしくはない。期待を抱き、パンクしたタイヤを引きずり、自転車屋まで。店のドアは開いていた。だが、人はいない。中に自転車がたくさん置いてあるしチューブなどの修理用品もあるけど、誰もいない。何度もすいませんと声を出してみるも返事はない。またやられた。宮崎でも似たようなんあったぞ。個人商店はやってるかやってないか分からないから本当に賭けだ。福岡の築上町で二つとも閉まっていたことを思い出して、一気に心が曇り始める。今回もそのパターンかも。小さな町だからそうであってもおかしくない。もう一つの少し遠回りしたところにあるお店を信じる。

 少し商店街をさ迷いながらもなんとかその店へ到着。すると、今度は営業しているじゃないか。しかもスタッフさんは40~50代の比較的若い人。平日のこの時間に修理は珍しいはずだけど、気さくに対応してくださった。あー、何とかなった。救われた。次の町までは確か30㎞ほどあったから。最悪の状況にはならなくて本当に良かった。故障ばっかでやってられない。もう故障しないと誓ってほしいけど、全く安心できないや。

 修理が終わって、次は香美町を目指すことに。時間も押してしまったわけだし、そのための道を爆走していたんだけど、通行止めと迂回の標識が。自動車は自動車専用道に迂回してくれと書いてある。ということは、自転車はまさか、、、。国道9号線まで戻れだと?せっかく新温泉町の市街地から抜け出して山登りし始めたとこだったのに、新温泉町の市街地に戻らなきゃいけない。しかも、山を突っ切って養父市に行けと。その山が嫌だったからわざわざ遠回りして一回豊岡市まで行こうとしてたのに。ああ、観念観念。

 新温泉町に戻ってからはずっと南下していき、湯というところでコンビニ昼休憩。ここのローソンの外観はすごくいい。そして、ここら辺から本格的な山道が始まる。歩道はない。山道で歩道無しはもはや当たり前。テストにすら出ないレベルの基本事項。

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 ずーーーっと坂道が続き、最初は頑張っていたけど、途中でめちゃくちゃ長い坂を見せられ、絶望のまま押していった。ただし、8割9割はもう登り切ったはずだと信じる。これまでで一番長い距離を登った気もするし。直線を押していたら、その先には交通規制で止まらされている車の列が見えた。どうやらここはトンネルの手前らしい。しかも長い距離規制をかけているみたいで、止まらされている時間が結構長い。規制車列の先頭まで行く。自転車は安全のために基本最後に行かせられるのは分かっているが、出来るだけ手前に行って距離をつぶしておく算段。ついでに交通整理の人に長いんですかと聞いてみる。2キロぐらいあるよ、そう答えが返ってきた。さすがに2キロはビビる。その間反対車線はずっと自転車を待つわけだからね。早くても5~6分はかかる。

 こっちの車線の番が来た、長蛇の列がトンネルへ流れ込んでいく。後を追うようにスタート。上り坂での漕ぎだしは大変。体力はそんなに残っているわけではないからすぐバテそうになる。だけど迷惑はかけたくないと懸命に漕ぐ。トンネルに入ってからは登りは緩くなってほぼ平坦になり、せっかく交通規制のおかげで安全に行けるんだし急いだって急激にスピードは上がらないから、と気楽に進んでいった。トンネルは1,6㎞ほどの長いものだった。途中からは道が一気に下りになっていったので、気持ちよく下って行ってやった。

 よし、このまま一気に養父市まで行け!そう思ったのだが、そんなに山道は甘くはない。下ったと思えば高地で、小さな街を通過し、また登りが始まる。ほんとにこういうツンデレプレイはやめてほしいけど、山がちってこういうことだから文句言ってもしゃあない。地図を見た時点で分かっていた話。もう押さないと覚悟を決めて進んでいく(ちょっと押したけど)。

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 養父市の中心部までの距離が残り少しになった頃、道の駅を発見した。疲れたし一旦山登りも終わったから休憩を取る。道の駅ようか但馬の蔵。ここでは朝倉山椒ソフトと肉まんを購入。肉まんはうまいけど他の肉まんと何がどう違うのかはわからなかった。ただ、ソフトは良かった。決して安くはないけど、スーパーやコンビニのアイスとは比べ物にならないくらいボリューミー。山椒が味だけじゃなく食感のアクセントにもなっている。足湯もあって、思い出作りのためだけじゃなく山道で足が汚れまくっていたから入るべきだったけど、脱ぐのが面倒くさくて遠慮してしまった。あんまりゆっくりしていると夜遅くまで漕がなければいけなくなるしね。

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 さあ、養父市街へ行こう。そして、そう離れていなかったからそのまま朝来市街まで。15㎞ほどの道のり。道自体はこの日のこれまでと比べると屁みたいなもんで、朝来市内までは案外すんなりとたどり着いた。ここではコンビニではなくドラッグストアコスモスで飲み物を調達した。しかし、コスモスは酒や牛乳以外の普通のペットボトル飲料が一切冷やされてない。勝手に騙された気になりつつも、どうせバックに入れておくとぬるくなるから変わらないかと思ってあきらめた。無糖の㏄レモンも買ってみた。これはぬるいのも相まってまずかった。ジュースのおいしさは砂糖によるものだったんだと不必要な再確認をした。

 口に何とも嫌な感じを残して再スタート。次の目的地は京都府福知山市。途中田舎道で山だったけど、ここも養父に行くまでに比べると大したことはない。福知山のイオンで夜飯代わりにパンを貪り食う。自転車の空気を入れてもらうか非常に迷う。ただ、出雲で修理してもらって以来、山登りの主役である5のギアには6からは直接変えられず、一旦4を経由しなければならなくなっていた。これは調整をお願いしたいところ。だけど、空気は入ってますよって言われたときのあの気まずさが…。行くのはやめにしようかなと思いながら次の兵庫県丹波市に向かっていった。もう陽は落ちたといえるだろう頃で、強めのライトがないときつい。しかし、夜中に強いライトが充電切れすると詰むから、弱いライトでこそこそ進んでいた。そしたら急に段差が現れた。ポケモンの草むら歩いてたら急にポケモンとバトルが始まるみたいに。歩道って急に木を植えて見たりじゃりじゃりにしてみたり段差を作ってみたり、なんで?ってことしてることが多い。やめてくれい。結構強くぶつかってしまったが、どうやらパンクはしなかったらしい。ただし、空気が少し持っていかれた気がした。昨日の反省もあったので、じゃあもうあさひに行こうと決心。この段差が後押ししてくれた。

 あさひではギアの関係でチェーンも見てもらった。調整は有料と言われ、正直あまりお金は払いたくはないけど仕方がないと思って了承。見てもらったところ、チェーンが伸びきってしまって交換も検討したほうがいいレベルと言われた。まだ買って一か月半ぐらいなんですけど。どうやらギヤを基本的に6に固定して変えなかったのもよくなかったらしい。

 結局完全には直せなかったから無料でいいと言われ、空気もパンパンに入れてもらった。まじでありがとう、あの時のお兄さん。チェーンも完璧には治らなかったけど、出来るだけのことはしてもらえたおかげで結構改善されてた。無料でいろいろサービスをしてもらって、本当にありがとう。いざもう一度丹波へ。

 ここからはひたすら我慢。暗いから景色もクソもない。丹波に入るまでは山登り。入り口がめちゃくちゃ高速の入り口みたいで螺旋になっていたのでびっくりした。兵庫県との県境を越えたら下りになって、バイパスへ乗っかった。ここには歩道がしっかりとある。夜にこういう道は安心。だけど、市街地が近づくと危ない道へと様変わり。歩道はない、車通りは多い、横は雑草。特に山に沿って行くところはなかなかの道だった。それは西脇に近付いてもあまり変わらなかった。まるで自動車専用のようなトンネルに入ったりもした。不安すぎていったん迂回して道調べたほどよ。

 西脇まで残り10㎞を切って、休憩所みたいなところでトイレをすることに。ここは掃除がされていないのか、まじで臭い。さっき危ないなーと思いながら抜いたアジア系の女子二人にさっそうと抜き返されていった。めっちゃどうでもいい情報だけど、夜に自転車こいでる奴大体アジア系の外国人。

 西脇ではエコパークみたいな名前の道の駅で野宿をする予定だった。近くのマックスバリュで夜食でも買いに行く。店内に入ってみると、クッソ値引きされている。400円ぐらいの巻き寿司が100円以下とかざらにある。安すぎる。これじゃたらふく買ってもいつもより安くなるじゃん、と夜食にしては多めの量買い込んでいった。

 そして道の駅へ。だが、なかなかによさげなベンチが見つからない。しかも明らかにガラが悪い奴らが乗るバイクが止まっていて、やっと発見したベンチにその持ち主らしきやつらが座っている。こんなとこで安心な睡眠なんてとれっこない。やはり、道の駅は寝るべき場所ではない。違う公園に探すことに。時刻は21時を過ぎていたから気乗りはしないけど仕方がない。少し市街地から離れた、森の手前にある公園をぐるぐる回って、何とか寝ることが出来そうなベンチを見つけた。

 市街地から外れていると人が来ないから寝やすい。結果的に道の駅から寝床を変えておいて正解だったと思う。22時には公園のライトも消え、めっちゃいい環境になった。実際人も来ずにぐっすりと5時15分ぐらいまで眠っていられた。ちょうどベンチの真上にあった木から鳴る虫か鳥かの音や、山のほうから聞こえてくる動物の鳴き声が気にはなったけど、これまでの野宿と比べてみても快適さは相当高順位にランクイン。

 明日は神戸に行って友達の家に泊まる。明後日は京都の京田辺市の友達の家に泊まる。どちらも前半戦で行きたかったけど両方とも予定が合わなかったから、その分楽しみが高まっている。やっとこれまでの苦労が報われる。

ルート

 鳥取市から兵庫県の新温泉町まで国道178号線を通った(記憶は定かではない)が、途中で自動車専用道があり、山はトンネルではなく登って越えた。新温泉町から香美町へ行く道は自転車は通行止めとなっており、国道9号へ迂回した。国道9号線を走ってそのまま京都府福知山市まで行き、その後国道175号線で丹波市、西脇市と南下していった。


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